%I18 【はまぐりの数学】
r=f(θ) とする。
中心からはまぐりの殻までのベクトルrを考える。
オウム貝やはまぐりは、成長しても自分自身と相似形になるから、これまでにやったように中心とのなす角が、常に同じである。
成長する方向のベクトルをとする。
等角であることから
(aは一定、 となる。)
よって、f'(θ)=af(θ)
この方程式を微分方程式と言う。この方程式の解は
f'(θ)=f(θ)となるf(θ)は
f(θ)=eθ だから、定数kをつけて
f(θ)=keaθ となる。
・・高校へ行ったら習うの。
こういう曲線を成長曲線という。
成長というと、都市もまた成長している。子どもの頃、日本の主都だった奈良や京都、鎌倉は碁盤の目状の都市計画で作ってあるのに、江戸はなぜ碁盤の目状ではないのかと疑問に思った事がある。みんなにも聞こう。なぜ、江戸は碁盤の目になっていないの。
・・土地が、狭かったから。
・・関東平野だから広いよ。
・・丸くなっているからじゃないの。丸の方が長方形より楽だ。
丸は近い。まず、最初になにを作ったの。
・・江戸城。
最初は、その江戸城を中心にして、徳川家の旗本だけの小さい城下町だった。もちろん、長方形に碁盤目状に作ってある。ところが、参勤交代などで、大名の家臣などの武士が増えていく。まず、譜代大名をその周りに住まわせる。
・・長方形を大きくしたの?
いや、江戸城の周りを回るように住まわせていったのだ。
・・それで丸いのか。
いや、そんなに単純ではない。まだ、外様大名がいる。その大名屋敷を、江戸城を中心にして、かたつむりのように「の」の字の形に、配置していったのだ。
(リンク【大江戸の町づくり】)
・・町人はどうしたの。
いい所に気がついた。武士は食うだけ。その武士を養う為に、膨大な数の生産者が必要となる。そういった職人や商人が住む所を、かたつむりが大きくなるように、配置していったのだ。さらに、かたつむりの殻に当たる物を、最初は堀、次に隅田川、江戸湾、そして神田用水という様に造り、はみ出さないようにしていった。こうしておけば、どれだけ人口が増えようが、町はどれだけでも大きくできる。
・・江戸時代に、江戸の人口はどれだけだったんですか。
当時、世界最大の都市さ。ロンドンやパリも及ばないくらいの都市だったんだ。人口が100万人を越えていた。そうなったのは、このかたつむりの都市計画のおかげといっても良い。
・・徳川家康って頭がいいんだなあ。
参考文献 『江戸の町 上下』内藤昌著・草思社
『蜂が飛ぶ曲線』
蜂は花を見つけるとどう飛んで行くのか知っていますか。
・・真っ直ぐ飛んで行きます。
これが、真っ直ぐではないんだな。実は、らせんを描きながら飛んで行きます。蜂の目は複眼なので、目の中である位置に花を捕えたら、その位置を動かさないように飛んで行く。つまり、自分と花の角度を変えないように飛んで行くのです。
・・それで、花にたどり着けるんですか。
らせんには、中心があります。花が中心だから、渦を巻いて必ず花に到着することになります。花を目で捕えた時、複眼の中心からの角度が大きいと、巻貝の様ならせんになるし、中心から離れていないと、はまぐりの様ならせんになるのです。
・・蜂には、人間の様に真ん前がないんだね。
【99、飛んで火にいる夏の虫・・・虫が火に向かって飛んでいく理由】
『相似形』
貝や角や牙や植物が成長する時に、どういうように成長するんだったかな。
・・自分と相似になるように、大きくなります。
生き物にとって、相似というのは重要な意味を持っている。相似であるというのは大切なことに違いない。
・・合同よりも相似の方が大事ですね。
最近、フラクタルな図形とかが評判になっている。このフラクタルというのは、どれだけ拡大しても、相似になっているというような図形をいいます。自分自身と相似になっているのです。
・・貝のらせんはフラクタルなんですね。
『成長に現れるeのなぞ』
y=exのグラフ
パイって何ですか。
・・おっぱい。アップルパイ。
違うよ。円周率のπのことです。πは円周を直径で割った値で、どこまでも割切れないけれど、数学では色いろな所にでてくる大事な数です。数学には、もう一つ大事な数があって、それがさっき出てきたeです。eのことを自然対数の底といいます。
↑(これは元金1円、利率100%、期間1年に利息を無限回元金に組み入れる複利計算の元利合計の値。)
連続複利法というのがある。元金A、利率X,期間tとして、各瞬間に利息を元金に繰入れる複利計算の元利合計はAextで与えられる。
利率をXとする時、利率の繰入を頻繁におこなったものが ex。
一方、成長は、その時の自分を元金にして利息を出すようなもの。だから、成長の式はこの連続複利法の式にぴったり合う。
その成長割合は、あらゆる瞬間において、成長している量の大きさに比例する。
言い換えると、如何なる瞬間でも変化率は、常にその瞬間の量の値と同じになる分数で表わされる。
これは、大きくなればなるほど、一層速く拡大する。
例えば、人口の増加率が一定だとすると、人口増加のグラフはy=aerx(rは増加率)となり、この青いグラフのように急激に増加する。
これが人口爆発だ。
参考文献 『数学ゲームI』ガードナー著、『コペルニクスからニュートンまで』遠山啓著)
『フィボナッチ数列と植物』
1202年、イタリアのピサの町に住むフィボナッチは次の様な問題を考えた。
「オス、メス1つがいの親うさぎが、毎月1つがいの子うさぎを生む。子うさぎは1ヵ月すると親になり、2ヵ月目から毎月、子うさぎを生み続けるものとする。1ヵ月目には、生れたばかりの1つがいの子うさぎが居るものとすると、うさぎはどの様に増えていくのだろうか。」
・・答え。うさぎのつがいの増え方は、1月ごとに
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,…
となります。
・・まえの2つの数を足していけばいいんだ。1+1=2,1+2=3,2+3=5,・・・
数をある規則のもとに順に並べたものを、数列といいます。上の様な数列をフィボナッチ数列といいます。式で書くと、Fn=Fn-1+Fn-2 となります。
ところで、植物の葉のつき方にも法則があります。このフボナッチ数列が、枝に生える葉のつき方と関係があるのです。
図(「分数多角形で植物の葉を調べる」ページへ)
葉のつき方や、ひまわりの種や松かさやパイナップルの菱形の鱗のようなものを見ていると、らせんとフィボナッチ数列がでてきます。なぜこんな数列や、らせんが出てくるのかを考えてみました。結局植物の成長はらせんなのです。そのらせんを、整数にするとフィボナッチ数列になるのではないでしょうか。
フィボナッチ数列も、前の数を足して成長しています。そして、兎の増え方から作った数列であるので、やっぱり成長に関係しています。
ところで、角度が90度ごとに、フィボナッチ数列が出てくるようならせんが有ります。このらせんの角度は何度かを調べてみました。107.034度
このことから等角らせんにもフィボナッチ数列が表れることが分ります。
『フィボナッチ数列の極限』
ところで、このフィボナッチ数列の隣り合う項の比は、1.618・・・の黄金分割にどんどん近づいていきます。
たとえば、
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,・・・
・・・=1.618・・・=
証明
フィボナッチ数の定義:Fn=Fn-1+Fn-2 をFn-1で割る
Fn/Fn-1=Fn-1/Fn-1+Fn-2/Fn-1…(1)となり
Fn/Fn-1でnを大きくしていったときにとる値をχとすると
Fn-2/Fn-1もχとなるから,(1)は
χ=1+1/χ となる。両辺にχをかけて
χ×χ=χ+1…(2)
χ2−χ−1=0を解くと,
χ>0だから … となる。
また,フィボナッチ数列の一般項は
となります。
証明は「フィボナッチ数列(Fn+1=Fn+Fn-1)を黄金分割(χ2−χ−1=0)から作る」に
『黄金分割を人は何故美しいと思うのか』
この長方形とこちらの長方形ではどちらが美しいと思いますか。
(正方形に近いのから、平たいのまで6種の長方形を見せて、集計したもの。)
・・黄金分割の長方形:B版画用紙=17:8
こちらの方の長方形を黄金比といい、昔から美しいとされていた。本当に美しいと感じるのか試してみたが、このクラスは多かったね。この黄金比は1:0.68なんだが、この比がいろんな所にでてくる。たとえば、正5角形の同じ頂点を通らない2本の対角線は互に他を黄金分割する。
そして、このらせんにもこの比がでてくる。さっきやったフィボナッチ数にもこの比がでてきます。
そこで問題。
昔から、人類はこの比を、美しいものと感じてきたのはなぜか。
私の説は、生物の成長の曲線を何百万年もの間、見てきた人類にとって、その極限である黄金比は、自然なものとして美しく感じるのではないかということなんです。
今まで学んできたように、植物や動物の成長の曲線であるらせんの中に、整数比として出てくるのがフィボナッチ数列であり、その極限が黄金比だということになります。すると、黄金比は植物の枝や葉の中にあったり、貝の中にあったり、渦の中にあったりすることになります。それを長年見慣れている人類が、自然な形として、美しいと感じるのはもっともなことではないでしょうか。
参考文献 『黄金分割』柳亮著、『カーブ』ロックウッド著、『かたちのオディッセイ』中村雄二郎著、『ライフ・サイエンスライブラリー 数学の話』デビット・バーガミン著、
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