拡張という発想
面積公式の拡張の仕方
(1) 法則は拡張されて進化する
S:このサイトは本を読んで書いているんですか?
T:そういう場合もあるけど、思いついたアイディアがうまくいった時に、つい書きたくなるんだ。でも、ほとんどゴミのようなものかもしれない。
S:どういう時にアイディアを思いつくのですか?
T:自分でもわからないけど、一つだけ言えることがあるよ。それは、「これは拡張できるんじゃないか」という直感なんだ。
S:拡張って拡げることでしょう。数学の拡張ってどういうことなんですか?
T:ある法則があって、その条件を拡げた時に法則がどう変わるかということを拡張という。科学の法則というのは、全て拡張になっている。例えば、相対性理論はニュートン力学を拡張したもので、より広い世界にも当てはまるように法則を拡張したものだ。
S:拡張ってどうやってやるのですか?
T:ボクが拡張を最初に意識したのは面積の公式なんだ。ボクはこれをよく授業開きで行なった。
(2) 授業開き 「面積から式の計算へ」
(授業びらきは楽しいものでなくてはいけない。規律ややるべきことを最初に出して、子どもたちは夢や希望を持つことができるだろうか。面白そうだな、こうやってやればいいのかという考える方法を示すこと。そして、その中に授業のやり方や規律が自然な形で含まれていれば最高である。)
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【ねらい】
(1)問題に取り組む理由と考える方法を知ること
(2)公式(法則)を見つけること、公式(法則)を使うこと
(3)説明と納得は学び合いの中でこそ行なわれること
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(数学の問題をどうしても解かなくてはならないという必然性はない。そこで問題を解かねばならない状況を作り出す。)
【発問】
T:もし、君たちに小学生3年生の弟がいて、「長方形の面積はどうして縦×横なの」と聞いてきた。どう説明をするか?
【説明】…(説明する時はたとえを使う)
T:説明をする時は、うまい方法がある。それは、
「たとえば」を使う方法だ。例えば、縦が2pで、横が3pとすると?
S:図に描けるよ。…(図にするとイメージが浮かぶ)
S:面積は2×3=6。つまり、1cuの正方形が6個あるから。
T:1cuの正方形が何個あるのか出すためには、縦×横を計算すればいいということだね。
S:3個の正方形が2列あるから3×2で計算できる。これなら弟も納得するな。
T:「さすがは兄(姉)ちゃんよくわかったよ。」そう言われるとうれしいだろ。ところが、弟はさらに聞いてきた。長方形は分かったけど、平行四辺形も同じ様に計算するの?
S:えーと。縦×横でいいのじゃないかな。
T:本当にいいの。この長方形をこうやって平行四辺形につぶしていくと?
S:あれ、面積がなくなる。わかった。縦でなく高さだ。
T:じゃあ、その理由を説明してよ。
S:この三角形の部分を切り取って、こっちに移動させると長方形になり、横は変らないし縦は高さということです。
T:うまい。すでにわかっている長方形をちゃんと利用している。これなら弟は納得するね。でも、弟はさらに聞いた。何を聞いたと思う?
S:今度は三角形か台形でしょう。
T:すばらしい。科学者も君のように、平行四辺形から三角形や台形に拡げていくことをやっているんだ。これを拡張といって科学の基本なんだよ。
先に三角形から考えてみようか。三角形の面積の出し方はどうなっているの。
S:底辺×高さ÷2です。
T:なぜそうなるのか説明できる?
S:この三角形をひっくり返してくっつければ、平行四辺形になる。底辺×高さで面積が出て、2倍したから2で割れば三角形の面積が出る。
T:弟は感心してさらに聞いてきた。台形の面積はどうやって出すの?
S:(上底+下底)×高さ÷2だったかな。
T:こういう公式になるわけを説明してみて。
S:同じように台形をひっくり返して合せると平行四辺形ができます。底辺は上底と下底を合せたもので、2倍したから2で割ります。
T:長方形から平行四辺形、そして三角形ときてさらに台形へと、公式(法則)を見つけていけたね。すでにわかっている事を使えば新しいことも説明できるということもわかったね。
ところで、この最後に出てきた台形の公式で長方形の面積を求めることができるだろうか。
S:上底と下底が同じだから使える。あっ、それで2で割るのか。
T:三角形にもあてはめることができるかな?
S:上底がないからだめじゃない。
S:上底を0と考えればそのまま使えるよ。
T:三角形の公式で台形の面積を一度に求めることはできないけれど、台形の公式で三角形の面積は求めることができる。
このように発見した公式(法則)は応用範囲も広くなっていく。
こういうように拡げていくことを「拡張」と言い、私たちの世界はこうやって広がっていく。
S:台形の公式ってすごい公式なんだな。
S:万能公式だよ。
S:円にも当てはめることができるのかな。
(3) 円と四角形の面積
T:やってみよう。円をどう切ったら平行四辺形になるのだろう?
S:半分の半分の・・・どんどん細かくして交互に並べていくと長方形になるよ。⇒【円の面積】
S:面積は底辺×高さ=円周÷2×半径。
S:円周は直径×円周率だから、直径×円周率÷2×半径。さらに、直径÷2は半径だから、半径×半径×πだ。
S:すごい!
T:円の面積は求めることができた。では、普通の四角形の面積を求める公式はあるのだろうか。
S:今までやったようにこの四角形を二つ合体させると。…(前にやったことを使う)
S:平行四辺形ではないけど、二辺は平行だ。
S:そうすると、これを平行四辺形にするためには・・・。わかった!
ここに線を引けば、平行四辺形になる。
S:中点を結ぶんだろ。確かに元の四角形と面積は変わらないね。
S:底辺は中点を結べばOK。高さはこの中線に垂直な線だ。
S:つまり、中線の長さ×高さ
S:もしかしたら、この公式は台形も三角形も円も求めることができるのかな。
S:台形は、中線の長さ×高さで求まる。
S:三角形も中線の長さ×高さでOK。
S:円の中線というのは真ん中の円だよ。
真ん中の円周×半径=直径÷2×π×半径=半径×半径×πで当てはまる。
T:これを使えば、道路の面積も簡単に求めることができるんだよ。
S:そうか。センターラインの長さ×幅で求まる。
S:「中線×高さ」というのが万能公式なんだね。
(4) わかるということ
T:こうやって考えていくと、説明をしながら自分が納得していくだろう。つまり、人に説明をしながら自分も納得し、より深く理解できるようになるんだ。
みんなと学習する意味はここにある。疑問を出す人、説明をする人、拡張する人、まとめる人がいて世界が広がってくる。
S:わかることはこういうことなのか。
T:いや、ここで満足してはダメだ。次は面積公式を体積公式に拡張してみよう。
S:体積も面積も求めることができる公式ですか?
S:中線に対して中面を考えたらどうだろう。
T:そういう発想はとても良い!「もしかしたら同じようになるのでは?」と考える仕方をアナロジーと言う。
⇒【円錐台の体積】⇒【シンプソンの公式】⇒【(a+b+4c)×h÷6=面積、体積】】⇒
・・・これを台でなくてもあてはまるように拡張してみよう!
「四角形の面積=中線の長さ×高さ」の応用⇒三角形を正方形にするために
⇒【デュードニーの三角形】⇒
T:実は、高校まで私にとって数学は理解をするものであって、発見をしたり新しいものを創りだしていくことなど、夢のまた夢であった。でも、この「拡張する」という方法に気がついてからは、発見したり、創造することが容易になり、発見する喜びを味わうことができた。拡張の方向は無限にあり、誰でもできるからだ。
(5) 拡張って何だろう
(1)拡張は進化のようなもの
(2)拡張はそれまでの世界を含み、さらにより広い世界に拡げる
(3)アナロジーから拡張の方向が生まれる
例えば、
【ハイゼンベルクの不確定性原理を破った! 小澤の不等式を実験実証】
これは、ハイゼンベルグの原理の拡張である。
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