円錐の体積が円柱の1/3なのはなぜなのか
― シンプソンの万能公式 ―
中一の男の子が尋ねてきた。
S:先生は数学の先生だったよね。『円錐の体積が円柱の1/3なのはなぜなの?』
1、三角形と錐体を比べる
T:こういう時は、よく知っているものと比べながら考えるとわかるよ。錐体は何かと似ていない?
S:三角形だ。
T:そうだね。「三角形と四角形」は「錐体と柱」に似ている。
例えば、三角形は高さが同じなら頂点を変えても、赤い幅が変わらないし、全体の面積も変わらない。
錐体も同じで、高さが同じなら頂点を変えても、青い部分の形も面積も変わらないし、全体の体積も変わらない。 【ガバリエリの原理】
S:つまり、錐体は底面積が同じで高さが同じなら体積は同じになるということですね。
2、錐体は底面積が2倍になると体積も2倍になる
T:三角形は底辺が2倍になると面積も2倍になるね。では、錐体は底面積が2倍になったら、体積はどうなる?
S:底面積を2倍にした錐体を頂点から底面積が半分になるように切断します。切断した錐体の体積は同じなので、底面積が2倍になれば体積は2倍になります。
3、錐体の高さを2倍にすると、体積は?
T:では、錐体の高さを2倍にすると、体積はどうなる?
S:2倍かな?
T:そうです。錐体を2倍に拡大します。相似な2倍の錐体の体積は8倍。底面積は4倍。だから、元の底面積の錐体の体積は、8÷4で2倍になります。
つまり、錐体の体積は底面積と高さに比例するわけだから、錐体の体積=底面積×高さ×kです。(kは定数)
これは、錐体の形によって体積が変わるのではなく、底面積と高さによっていることを示しているね。
4、円錐は三角錐の塊
T:さて、円錐は三角錐に分解できます。ということは、三角錐がどうなっているのか調べればいい。ところで、どんな三角柱も3つの同体積の三角錐に分解できます。
S:つまり、k=1/3ということですね。
T:高さが同じ三角錐は底面積を合計できるから、円錐の体積は円柱の1/3となる。
S:それはわかったけど、どうして1/2でなくて1/3になるのかがわからない。
5、1/2でなくて、1/3になる理由
T:1/3の意味か。これは難しい質問だ。例えば、
三角形の面積=四角×1/2
三角錐体の体積=四角柱×1/3 ではだめ?
S:どうして1/2ではないの?
T:積分の法則を使うと、
∫xdx=1/2x2 (1/2x2)'=x
∫x2dx=1/3x3 (1/3x3)'=x2 となるから。
S:難しすぎて、意味がわからない。
T:うーん。では究極の万能公式を出そう!
6、シンプソンの公式 (面積も体積も出せる万能公式)
T:a=底面の面積 b=上面の面積 c=aとbの真中の面積 h=高さ とすると、
SorV=(a+b+4c)/6×h
という公式がある。この公式は、台の体積はおろか、三角形の面積まで求めることができる。
例えば、台形、半球を求めてみよう。
台形の面積=(a+b+4(a+b)/2)/6×h=(a+b)/2×h
半球の体積=(πr2+3/4πr2×4)/6×r=2/3πr3
S:本当だ。すごい。
T:さて、この公式を使うと、
三角形の面積の場合は、b=0で、c=a/2だから、
S=(a+4a/2)/6×h=(1/2)・ah
錐体の体積の場合は、b=0で、c=a/4 (2乗に比例する)だから、
V=(a+4a/4)/6×h=(1/3)・ah
そうすると、4次元錐体の体積は、b=0で、c=a/8 (3乗に比例する)だから、
Q=(a+4a/8)/6×h=(1/4)・ah
となるはず。
S:へー。あれ、さっきの半球の体積は、底面が円で高さrの円錐の2倍ですよ。
半球の体積=(a+4×3/4a)/6×h=(2/3)・ah
円錐×2=半球 円錐×3=円柱 ということですか。
T:つまり、cがaに対して何倍になっているのかで、1/2か、1/3か、2/3かが決まるということです。
S:そうすると、cがaの1/4になる形の面積は、正方形の1/3ですね。
T:そうです。それはどんな形でしょう?
S:高さが1/2の時、幅が1/4になるのだから、二次関数のような気がする。
x 0 0.25 0.5 0.75 1
y 0 0.0625 0.25 0.5625 1 だから、グラフを反転させればOKだ。y=x2の面積は正方形の1/3なんだ。
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