空間充填立体

正四面体からオクテット・トラス構造へ

1,中点連結の定理と空間の相似比

三角形を2倍に拡大すると面積は4倍になります。図で示すと一目瞭然です。
真ん中の三角形は「中点連結の定理」で合同だということが示せます。
つまり、相似比は1:2だったら、面積比は12:22=1:4となることは、この図が示しています。
では、立体だったらどうでしょうか。

2,四面体で同じようにできるのか

正四面体で考えてみましょう。正四面体の各辺を2倍にします。
同じ大きさの正四面体を何個か作ります。それを並べてみます。体積比は13:23=1:8ですから、8個の正四面体が入るはずです。
8個の正四面体を平面のように並べることができるのでしょうか。
まず、4つの四面体は並べることができます。

3,正四面体を並べてみよう

正四面体を写真のように3個並べます。真ん中に4個目も入りますが、その上に正四面体のせようとするとまくいきません。正四面体を隙間無く充填することはできないのです。
そこで、真ん中の正四面体を取り、代わりにどんな立体が入るのか考えてみましょう。
・・・
そうです。ずばり、正八面体です。(写真右)

S:立体では中点連結の定理は成り立たないのですね。
S:空間を同じ立体で埋め尽くすということはできないのかな。
T:いや、できます。その前に、この正四面体と正八面体の構造をもっと調べてみましょう。面白いことがいっぱい出てきますよ。

4,トラス構造

T:鉄骨で橋を造るときに、ゆがまない構造としてトラス構造というのがあります。
S:知っているよ。三角形を組み合わせて橋を作るのでしょう。
T:四角形は形が崩れますが、三角形は形が崩れないので丈夫なのです。
S:でも、私のいつも渡る橋は四角形も入っていますよ。
T:そうなんです。平面だと三角形をどんどん拡げることができるけど、トラス構造を空間に拡げるとどうなるか。

5,正四面体からオクテット・トラス構造へ

T:ここに、磁石と同じ長さの棒の組み合わせパズル(MAGNETIC CONSTRUCTION TOY)があるから、トラス構造でどんどん三角形を作っていってみて。
S:あれ?どうしても正方形ができる。
S:つまり、正四面体だけではできないということか。
S:ここは正八面体になる。
T:こうやって作ってみて初めて、私は正四面体と正八面体になることに気がつきました。これをオクテット・トラス構造というのだそうです。この構造が最も丈夫な構造であることを発見した人は、バックミンスター・フラーです。
S:この構造のことを知ると、これから橋や建物の内部構造の見方が違ってきますね。

6,ハニカム構造とパネル構造

T:板と板の間に何かを入れて、丈夫なパネルを作ろうとする時に思い浮かぶのがハニカム構造です。これは、蜂の巣のように正六角形を並べたものです。蜂の巣のように丈夫です。軽くて、強くて、防音にも優れています。
S:新幹線の先端や床、飛行機の翼、スキーの板などに使われていると聞いたことがある。
T:ところが、この構造は、垂直な圧力には強いけれど横からの力には弱いので、もっと丈夫なパネルができないかという研究があります。それが、このオクテット・トラス構造を使ったパネルです。写真のように正四面体を並べたパネルを上下合体させると、真ん中に正八面体の隙間ができます。この構造は横からの圧力に対しても強くなります。
S:確かに、横の動きに強そう。でも、作るのが大変そう。
T:それを、簡単に作る方法を考えて特許をとった研究があるんです。

7,四面体で空間充填できる形

T:ところで、体積の相似比が3乗になることをどう説明しますか?
S:合同な立方体を使って並べると縦×横×高さで説明できる。
T:錐の場合も同じように3乗になることを説明する時にはどうしたらいいでしょうか。
S:正四面体を使えば同じようにできないの?
T:3でやったように正四面体ではできません。今まで私は、円錐を使って水を入れて、ちょうど8倍になるということで説明してきました。ところが、水ではなかなかピッタリ8倍にはならないのです。
S:四角錐を三等分した模型を見たことがある。
T:どんな三角柱でも三等分して3つの四面体にできます。でも、これは等体積ですが、合同ではありません。

S:合同で縦にも横にも上にも拡げて行ける合同な四面体ってあるのかな。
T:実は、そういう四面体があるのです。この展開図を見てください。
《2:√3:√3》の三角形で作る四面体です。(展開図→)
S:作ってみよう。(展開図の画像)・・・この面は垂直になっていますね。

8,《2:√3:√3四面体》のすごい所

S:並べてみよう。・・・確かにすきまなく積みあげることができる。
S:ちゃんと8個で2倍の三角錐ができた。


(1)三角錐の体積の相似比が1:8であることがすぐにわかる
(2)ずれないパネルができる
(3)これから、別の空間充填立体を作ることができる

(1)について
 自分を拡大しても自分自身で組み立てることができる図形です。こういう図形はまだあります。自己相似といってもいいかな。
 辺だけで構造を作ってみると、二種類の長さの棒が必要。オクテット・トラス構造と比べると、写真のようにひし形の平面ができている。この平面を底面とする四角柱でできている構造と言ってもよい。ひし形に対角線が入っているから三角錐になる。そして、中点を結んでできる立体が全て合同になる。
(2)について
 先ほどのパネル構造をこの三角錐で作ると、三角錐ではなくこの二つの三角錐を合体させた四角錐にして両側から押さえることができます。
(3)について
 テトラの飲み物パックが簡単にでき空間を充填できる。しかし体積はあまり大きくないのが残念。

 この三角錐を2つ合わせると四角錐になる。4つ合わせると右写真のような八面体になる。さらにこの八面体を6個合わせるとひし形十二面体となる。これらは全て自己拡大立体で、空間充填立体である。

T:ここで、空間図形に関しての重要な定理をおさらいしておこう。

9,オイラーの定理

   『どんな多面体においても、面−辺+頂点=2 となる。

《証明》
平面に辺と点と面を作ってみると、
面−辺+点=1
立体はあと一つ面があることになるから、
面−辺+頂点=2 となる。

10,デカルトの定理

   『多面体のトンガリ度の和は720度である。

《定義》
 多面体のある頂点に集まる角の和は360度よりも必ず小さい。あと何度で360度になるのかがトンガリ度である。
《証明》
 まず、多面体の面を分割して、全て三角形にする。
オイラーの定理が成り立っているので、面−辺+頂点=2
ここで、辺の数を面の数で表すと、面は全て三角形なので、辺=(3/2)×面
これらの三角形の角度の合計は、180×面
頂点×360−180×面=トンガリ度の和
オイラーの定理から、頂点=2+辺−面 だから、
トンガリ度の和=360×(2+辺−面)−180×面   辺=(3/2)×面 なので、
         =360×(2+(3/2)×面−面)−180×面
         =720
これは、多角形における外角の定理「多角形の外角の和は360度である。」の拡張になっている。

11,空間充填立体

ここで、空間充填立体をいくつか紹介します。
(1) (2) (3)
(4) (5) (6)
(7) (8) (9)

○立方体も空間充填図形だよ。正多面体で空間充填できるのは立方体だけ。(1)
○角切り八面体(準正多面体である) (2)(3)
S:この立体で部屋を造ったら、ユニットにして簡単に拡張工事ができるね。
S:六角形の方を床にすれば、けっこう広そう。
S:それに、どれだけでも拡げていくことができる。

○2:√3:√3四面体 (4)
○ひし形十二面体 (8)(9) 2:√3:√3四面体4個でできる八面体を6個合わせてできる。立方体にこの八面体の半分を6個貼り付けるとひし形十二面体になる。
○平行十二面体 (5)〜(7)

空間充填立体の分類
・合同な面でできている立体→2:√3:√3四面体、これが4個でできる八面体、ひし形十二面体、正六面体、ひし形十二面体2種(→写真)
・準正多面体→角切り八面体のみ
・正多面体→正六面体のみ
・平行多面体→平行十二面体、その他多数ある。

参考文献 遠山啓著「3次元の世界」ほるぷ出版 数学の広場4

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