円錐台の体積の公式
S:はじめまして。いつもホームページ読ませていただいてます。
さて、円錐の体積で教えてほしいことがあります。
円錐を底面からhの高さで底面と水平にスパッと切った時の体積なのですが、真横からみると台形になる。この立体の底面(大きい円)の面積をa、上面(小さい円)の面積をb、とした場合、この立体の体積は (a+b)÷2×h でよいのでしょうか。
aとbが限りなく同じ大きさに近ずくと、それは「円柱」になるので、その体積は底面X高さで正しいと思います。
しかしながら、逆に上面bを限りなく上へあげると、上面の面積は限りなく0に近づき、その立体は円錐になります。
円錐の体積は a × h × (3分の1)ですから、2分の1ではありません。
前半の台形を立体にした体積の式を適応すると、円錐の時上面は点になり、面積は0だから (a+0)÷2
× h となり、底面積×高さ× 2分の1 になります。
どこがまちがっているのでしょうか。わからなくなってしまいました。 すいませんが教えてください。どうぞよろしくお願いいたします。
T:Yさん、こんにちは。とても面白い問題を考えましたね。円錐台の体積の公式なんて考えたことがありませんでした。
さっそく計算してみました。
ずばり、あなたの仮説である、(a+b)×h÷2 は、あなたが指摘しておられるように、矛盾があります。
(でも、こういう仮説を持ったことがすばらしいし、その矛盾に気がついたことは、もっとすばらしいです。)
正しい公式は (a+b+√ab)×h÷3 です。
円錐台の体積の求め方は、底面積aの円錐の体積−底面積bの円錐の体積です。
単純に(a+b)の半分の円柱にするのでは、円錐の性質上おかしなことが出てくるからです。
まず、切りとった円錐の高さlを求めます。
l:√b=(l+h):√a なので、
l=h√b÷(√a−√b)となります。
次にさっきの円錐台の体積を求めてみます。
大きい円錐の高さは、l+h=h√a÷(√a−√b)となり、
円錐台の体積=底面積aの円錐の体積−底面積bの円錐の体積に当てはめると、
V=a×h√a÷(3×(√a−√b))−b×h√b÷(3×(√a−√b))
=h(a√a−b√b)÷(3(√a−√b))
=h(√a×√a×√a−√b×√b×√b)÷(3(√a−√b))
=h(√a×√a+√ab+√b×√b)÷3
=(a+b+√ab)×h÷3
となります。
この公式なら、aとbを同じにしても、bを0にしても矛盾は出ません。
でも、√abが出てくるところが面白いですね。
シンプソンの公式
この式を見ていると、aとbはわかりますが、√abが何を示しているのか気になります。
そこで、a+2√ab+b=√a^2+2√ab+√b^2=(√a+√b)^2と考えると、
(a+b+√ab)=(a+b+(√a+√b)^2)÷2となり、
V=(a+b+√ab)×h÷3=((a+b+(√a+√b)^2)÷2)×h÷3
=(a+b+(√a+√b)^2)×h÷6となります。
一方、c=(√a+√b)^2)÷4は円錐台の高さの中央における断面積です。
(∵上底と下底の半径の長さの比は√a:√bなので、中央の円の半径の長さは(√a+√b)/2となり、面積はその二乗になるから。)
そうすると、先ほどの式は、
V=(a+b+(√a+√b)^2)×h÷6
=(a+b+4c)×h÷6 となります。
これが、「シンプソンの公式」です。(積分で出てきます。)
h=立体の高さ、a=立体の下の底面積、b=立体の上の底面積、c=高さの中央における断面積という実に簡単な式です。
この式に当てはめれば、円柱や円錐の体積はおろか、球の体積でも、平面図形の面積でも求めることができる万能の公式です。実際に当てはめてみてください。(新しい公式はそれまでの公式を含む。)
S:この公式は円錐台から作ったのだから円柱や角錐、円柱に当てはまるのはわかるけど、どうして球の体積も求まるのですか。
T:不思議ですねぇ。そういえば、半球だって求まりますね。
S:あれ?この公式は面積の公式にも当てはまるよ。
S:本当だ。aやbを底辺にすれば、三角形や台形の面積も求まる。
S:どうしてだろう?
シンプソンは18C.のイギリスの人で、独学で数学を学習し、後に大学の教授になった人です。この公式は、一次、二次、三次関数については正確な値がでます。4次以上についてはわかりません。球の断面の面積は二次関数になるので当てはまりますが、円の断線は無理関数になるので当てはまりません。参考【円錐の体積はなぜ円柱の1/3なのか】
参考文献 「授業を楽しくする数学の話」片野善一郎著・明治図書