四角形を分割して正方形にする
― デュードニーの「カンタベリー・パズル」の拡張 ―
「正三角形を4つの断片に分け、裏返すことなく組み合わせて正方形を作れ」
デュードニーが考えた「カンタベリー・パズル」です。
実際に作ってみると、どうしても見せたくなります。
T:この正三角形と正方形ではどちらが面積が大きい?
S:正三角形の方が大きい。
T:見ていてよ。(正三角形を正方形に変形する)
S:同じだ。
S:正方形の方が小さく見える。なぜだろう?
S:どういう切り方だとこうなるの?
S:どんな三角形でも正方形になるの?
S:他の形でも正方形にできるの?
T:みんな良い質問ですね。では、これらの問題を一緒に考えてみましょう。
(1)四角形を長方形にする
T:その前に、「四角形を分割して長方形」にしてみよう。これは前に、四角形の面積を求める時に考えたよ。
S:各辺の中点を求めて、それを結ぶ。
S:長方形だから直角が必要だよ。
S:それなら、垂線を引けば良い。
T:そうだね。向かい合う辺の中点どうし(EG)を結ぶ。次に、他の中点から中線に垂線を引くんだ。そうして、はとめ返しで裏返すと長方形になる。
⇒【GCWinのシュミレーション】
⇒【GeoGeburaのシュミレーション『四角形を長方形にする』】
【四角形のしきつめ】
S:へー。なぜだろう?
S:四角形の内角の和が360度になること、それから、中点連結定理を使って、辺の長さが等しくなることを示せば簡単にわかるよ。
S:この方法は三角形や平行四辺形や台形の面積の公式も含んでいますね。
T:江戸時代の検地の絵を見ると、田んぼの面積は中線とHIを測って求めている。
ところで、これを見ていると、三角形の場合もできることに気がつかない?
S:そうか!この一辺が0になった時が三角形だから、三角形も長方形にできる。
S:これこそE'D'を結べば、中点連結の定理ですぐに証明できる。
S:でも、デュードニーのパズルは長方形でなく、正方形だよ。
T:実は四角形を三角形にする方法がもう一つあるんだけど・・・
(2)三角形を正方形にする
T:三角形は四角形と考えることができるよ。
S:そうか、△ABCのACの間にDを取れば三角形も四角形とみなせる!
S:同じように中点を結べば、確かに長方形になりますね。
S:しかも、このDは動かすことができるから、長方形の辺の長さを自在に変えることができる。
S:ということは、三角形の面積の√を求めて、その長さをEGに取れば正方形になる。
T:つまり、三角形を正方形にすることができる。
(3)長方形から正方形の一辺を求める
S:この場合、長方形から正方形の一辺を求めるにはどうしたらいいのですか?
T:AB×ACの面積から√(AB×AC)を求めるということだから、右のような半径(AB+AC)÷2の円を作る。
この場合、FはAB+BEの中点。そうして交点Gを見つけて直角三角形を作ると、次の比が出て来る。
AB:BG=BG:BE つまり、BG2=AB×BE BG=√(AB×BE)
S:この長さをGDに取り、GI=CFとなるようにIをとれば、「三角形を四分割して正方形にすることができる」わけだ。
⇒【GeoGeburaのシュミレーション『三角形を正方形に』】
S:「カンタベリーパズル」はこの三角形が正三角形の特別の場合ということですね。
S:そうなると四角形も正方形にできるのではないですか?
T:どうやってやるの?
(4)二つの正方形を一つの正方形にする
S:まず、四角形ABCDを三角形に分割して(3)の方法で正方形を二つ作る。
S:確か、二つの正方形を合体させて一つの正方形にしたことがある。
S:ピタゴラスの定理だ!⇒【ピタゴラスの定理】【ピタゴラスパズル】
S:この二つの正方形は一つの正方形になる。
やってみよう。・・・
S:できた!
S:でもこれだと、15分割になるね。
S:もっと少ない分割でできないものかな。
S:さっき、長方形を正方形にしたよね。これは分割でやれるんじゃない?
(5)長方形を分割して正方形にする
S:例えば、たてAC、よこABの長方形を分割して正方形にするには、(3)のターレスの定理を使って、正方形の一辺の長さを求める。
S:次に長方形をDGで斜めに分けて、右上の三角形をとり、AGDCを斜めにスライドさせて、三角形を下にあてはめると正方形になる。
S:長方形は3分割で正方形にできるんだ。
S:そうすると、四角形⇒長方形⇒正方形と変形できるということだ。
・・・できた!
⇒【GeoGeburaのシュミレーション『四角形を正方形に』】
S:これだと、8分割で正方形にできる。
T:今の所、これが一番少ない分割です。でももしかしたら、もっと少ない分割で四角形を正方形にできるのかもしれませんよ。
S:最後に、三角形の方が広く見えるのはなぜなんですか?
T:人間の感じる広さというのは、面積ではなく拡がりだからじゃないかな。
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