金網の影の逆転現象について
― 太陽の影 ―
1、金網の影が光る?
夕日で金網の影が足元のコンクリートにできています。
この影を見ていて、不思議なことに気がつきました。
金網の影が光っているのです。
金網の影なら暗くなっているはずなのに、金網の形に光っているのです。
金網の近くを見ると、確かに影になっています。
ところが3mぐらい離れた所では、影の部分と光の部分が逆転したように見えます。
この「影の逆転現象」はなぜ起こったのでしょうか。
(1)最初に考えたのは、回折の影響。
(2)次に考えたのは、太陽の視直径の影響。
(1)は金網の大きさで起こるとは思えません。
(2)の可能性の方がありそうです。
2、ラケットで実験
実験してみました。
針金と同じ様なスリットを用意して確かめました。
遠くになると影が太くなります。
これは(2)の方を補強しています。
もっと簡単に再現するにはどうしたら良いのだろうかと考えているうちに、
針金→ネットと結びつき、ラケットのネットで代用できることに気がつきました。
使うのはバトミントンのラケットです。簡単に動かすことができます。
やってみると、金網と同じ様に影の逆転現象ができました。
ラケットの網の幅はほぼ1cmです。
30cmぐらいの近さだと、網の影がはっきりと写ります。
少しずつ遠ざけます。ラケットの大きさは変わりません。
でも、網の影が太くなります。
1mぐらいに遠ざけると、
明るい所が狭くなって丁度網のようになるのです。
確かに、金網で、光っている金網の影と勘違いした現象が起きているのです。
これをどう説明したらいいのでしょうか。
3、現象の図解
もし太陽が点光源なら影はぼんやりしません。
影がぼんやりするのは、太陽に視直径(0.53度)があるからです。
これを図で表わしてみましょう。
でも、この図は間違っています。
と言うのは、太陽光線は平行だからです。
この図だとすぐ近くに太陽があることになります。
平行で、視直径を入れることを図でどう表現するのか悩みました。
そこで、太陽の光線は平行にしました。
そこに太陽の視直径を加えます。
これで、相似を使って、影の幅を求めます。
角度だけに注目すればいいことに気がつきます。
ラケットのガットの幅は0.8mm
ガット間の幅は9〜9.5mm
ラケットから画面までの距離をxmm
薄い影の幅をymmとします。
tan(0.53°)=0.0092ですから、
y=0.8+0.0092x
4、計算値と確かめ
影が大きくなって影でないところが1mmぐらいになる所は、
yが、ガットの幅9.25mmよりも1mm小さい値のところです。
8.25=0.8+0.0092x
x=809.7mm≒81cm
計算によると、
81cmの所で、光っている所が、1mmほどになり逆転現象が起こることが予想されます。
実際に81cmの所にラケットを持ってくると、確かに影の逆転現象が起きています。
5、応用
(1)スリットによる太陽の像
紙に小さな穴を開けます。0.5〜2mmの穴です。
これで太陽の光を通すとどんな光の像が写るのでしょうか。
穴の大きさは関係なく光の像の大きさは一定です。ただ、明るさが違います。
この光の像の大きさは太陽の視直径になるようです。
(2)日食の時の木の葉からもれる太陽の像
このことから、日食の時に木の葉の間からもれる太陽の像は三日月形に写るということがわかります。
距離と太陽の光の像の大きさの関係は次の表になります。
木から地面までの距離 1m 5m 54cm
光の像の大きさ 9.2mm 46mm 5mm
(3)太陽の見かけの大きさと五円玉の穴
5円玉を指で持って腕を伸ばして(腕の長さ54cm)その穴から月(太陽は眩し過ぎます)を見ると、月が穴と重なるのです。穴の大きさは5mmです。
これを見ると、太陽の見かけの大きさは案外小さいようにも思えます。
参考【108、月から地球を見るとどれくらいの大きさに見えるか?・・・太陽の見かけの大きさ】
発展【130、月食から月と地球の大きさを求める ・・・月食の3.5時間は地球の大きさを示している】
協力者 郡南中学校卓球部3年生
このアイディアは日食の考察に利用できます。
⇒【136、金冠日食を見た! ・・・月の巨大な影(月の大きさ)と日食の時間の関係 (2012.5)】
木漏れ日の写真もあります。
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