金冠日食を見た!

月の影の大きさと日食の時間

生まれて始めて金冠日食を見た。
幸いに朝から晴れていて、手製のメガネを使って観測した。
と言っても、郡上ではわずかに下が欠けていて完全ではなかったが、写真のように「木もれ日」の影がきれいな三日月型をしていた。【動画Quick Timeで見えます
最大食の時に、辺りを見ると薄暗くなり厳粛な気持ちがした。
もう二度と見る機会は訪れないだろう。

昨年の月食に引き続き、今回の日食を「影」ということから考察してみたい。

1、地球の影の大きさ

まず、地球と月との距離38万kmで、太陽視直径から月の影の大きさを求めてみよう。
皆既日食は、赤と黒の直線の交点Pよりも左側、金冠日食は右側に地球がある。  図1↓

月の大きさ(直径)約3500km。上の図を正面から見ると、右下の図になる。

太陽の視直径は0.5度でほぼ月と同じなのだが、今回は太陽の方が大きく見えるので金冠になる。
天文台のデータから金冠帯の大きさが約240kmだから、影全体の大きさは、
上の図から、太陽光線を平行とすると、
3500+240+3500=7240kmと予想される。
(皆既の場合は求め方が異なる。)

2、日食の時間

食の中心を通る静岡市のデータをみると、

   [食の開始] [金環食の始め] [金環食の終わり] [食の終わり]
時刻 6:17:44   7:29:48     7:34:40       8:59:11
        1時間12分   4分52秒    1時間24分

これを見て、疑問が出て来た。
地球から見た時、食の開始から金環食の始めが丁度、月の見かけの大きさに当たる。
(1)だから、月食の時の考察したように、1時間になるはずなのに12分多いのはなぜか?
(2)食の開始から金環食の始めまでと、金環食の終わりから食の終わりまでの時間が違うのはなぜか?
(12分と24分の違いはどこから出てくるのか)

この疑問は解決することができるのだろうか。
例によって、数値は全て大雑把に計算する。
まず、日食と月食の違いは何だろう。
月食の場合は月の公転のみを考えるだけでよかった。
ところが、日食は地球の自転を計算の中に入れなければならない。
なぜなら、私たちも月の影と一緒に移動するからだ。
影の移動の様子

3、影の移動速度

この問題を解くためには、影の移動速度を考えなくてはならない。
月の公転の時間から1時間で月の大きさ分を動くと考えたが、念のために、月の公転の速さを調べてみると、
(38万km×2×π/(27.3日×24時間)=3642km)、時速3600km。
(これは、月の大きさ3500kmとそんなに違わない。)
この速度で月が移動しているのだから、影も同じ速さと考えられる。
(地球までの距離で影の速度を計算してみたが、ほとんど無視できる。太陽光線は平行だと考えても大丈夫だ。)
ところで、影は西から東へと移動する。鹿児島が一番早かった。
そして、時間は3500km÷3600km/時だから、ほぼ1時間になるはずである。
でも、結果は1時間12分。なぜだろう?

影も西から東へ移動しているけど、地球の表面も西から東へと移動している(自転)。
そうすると、影の速さは相対的に遅くなるはず。

4、地球の自転速度

地球の自転速度は、6400km(=地球の半径)×2×π/24時間=1675km/時なので、ほぼ時速1700kmである。
次に、金冠帯の長さをかかった時間で割ると、速度が出るので求めてみる。
240km÷5分=分速48km=時速2880kmとなるから、影の相対速度の目安とする。

始め、3600−1700=1900km/時と考えたが、これでは違いすぎる。
なぜだろうか?
右下図
そうだ、地球は曲がっている。これは表面の動く早さであって、影の速さは地球を平面と考えた場合だから、こちらも平面に変換しなければならない。
そう考えたら、(2)の理由もわかってきた。
でも、計算値が合うかどうか。

地球は1時間に15°回転するから、朝の6時ごろを15°とすると、7時は30°、8時は45°になる。
昼の水平線(図の赤線)にあわせると
6400−cos15×6400=218km
6400−cos30×6400=858km
6400−cos45×6400=1875km

これらは1時間毎の距離なので、平均の速さと考えると、
15°から30°までの速度は時速640km(=858−218)
30°から45°までの速度は時速1017km(=1875−858)

したがって相対速度は
3600−640=2960km/時
3600−1017=2583km/時

5、食の開始から金環食の始めまでと、金環食の終わりから食の終わりまでの時間が違う理由

この相対速度からかかった時間を求めてみると、
3500÷2960=1.18時間=1時間11分・・・(実際は12分)
3500÷2583=1.36時間=1時間21分・・・(実際は24分)

この値は実際の値とほぼ一致する。
さらに、金冠帯の速さ2880km/時とも大きくは矛盾しない。

金網の影」と「地球の影」と「月の影」が見事に結びついたことにも感動している。

日食と月食のシュミレーション(GeoGebura)」


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