関数を探る 「表アイテム」
1、「表アイテム」を考案した動機・・・関数を探る道具は、表とグラフと式
関数を探る道具は、「表」と「グラフ」と「式」ですが、中でも表が一番基本です。集めたデータを表として整理し、そこからグラフや式を求めるからです。
ところで、表のχにはだいたい整数の値を入れます。それに対して、yにはいろいろな値が入ります。でも、その計算がけっこうめんどくさいのです。
例えば、y=(2/3)χなど、分数の値の時には少数にするのか迷ってしまいます。これを何とか工夫できないでしょうか。
さらに、一次関数・二次関数などを学習すると、知識が増えるだけで、本質が何なのかわからなくなります。これらは比例の変形としてとらえたほうが活用ができます。つまり、比例をしっかりとモデル化し、それをベースにして一般化するのです。(y=aχ+bによる一般化ではありません。)どうも私たちは比例関係しか認識できないと思われるからです。
ということで、ここでは、関数を表だけで考えるアイテム「表アイテム」を考えてみました。アイテムといっても、次の写真にあるような厚紙で作った簡単な表です。
2、一次関数はずらす・・・工夫のポイント(1)
y=2χの表は次の様に作ります。
x:0 1 2 3 4 5 …
y:0 2 4 6 8 10…
ところで、これはどういう関係ですか?
χが2倍3倍になると、yも2倍3倍になるから、正比例です。
じゃあ、このyを左にずらすとどうなるのでしょうか?
表は次の様になります。これはどんな関係でしょうか?
x: 0 1 2 3 4 5 …
y:0 2 4 6 8 10…
2x ←0 2 4 6 8 10…
+2+2+2 ・・・
正比例ではないですね。でも、2ずつ増えている。
yから2引けば正比例になります。つまり、比例にいつも2が加わっているから、y=2χ+2。
比例してはいませんが、正比例をずらしただけだけです。だから、正比例にとてもよく似ています。式で表すと一次式なので一次関数といい、y=aχ+bで表されます。aを傾き、bを切片といいます。
もっとずらして、χ=0のときy=4,6…にすれば、y=2χ+4やy=2χ+6になるのですね。
では、y=2χ+1は、この表で表すことはできるのですか?
χ=0のとき、y=1だから、こうなるのかな。
x: 0 1 2 3 4 5 …
y:0 2 4 6 8 10…
うーん、いまいちピンと来ない。yに1がないのがいけないですよ。
yには自然数を入れた方がいい。
そうすると、こんどはχを拡大しなければ。
3、拡大する・・・工夫のポイント(2)
x: 0 1 2 3 4 5 …
y:0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11…
これでOK! もっとずらせば、切片が3でも5でもOK。しかも、右へずらせば切片がマイナスになります。
これなら他の比例も表せそう。
やってみましょう。用意する表は次の6つぐらいで十分です。
0 1 2 3 4 5 6 7 8 91011121314151617181920212223242526272829303132 (1χ)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 (2χ)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (3χ)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9(4χ)
0 1 2 3 4 5 6 7 (5χ)
0 1 2 3 4 5 6(6χ)
順番に拡大されていることがわかりますね。
さあ、実際にこれを使ってみましょう。
4、比例を表だけで表してみよう
x:0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 (2χ)
y:0 1 2 3 4 5 6 7 8 91011121314151617181920212223242526272829303132 (1χ)
これはどんな関係?
(1) yは2ずつ増える。
(2) 0と1の間には0.5、1と2の間には1.5が入る。
(3) χを2倍するとyになる。→式 y=2χ
(4) χの目盛は2倍に拡大されている。
(5) χが2倍3倍になると、yも2倍3倍になる。→これを比例といいます。
今度は、χを3倍に引き伸ばします。この関係はどうなるでしょう。
x:0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (3χ)
y:0 1 2 3 4 5 6 7 8 91011121314151617181920212223242526272829303132 (1χ)
y=3χですね。もちろん、相似(引き伸ばしたの)だからχとyは比例しています。
では、このχとyの表を入れ替えるとどうなるのでしょう。
x:0 1 2 3 4 5 6 7 8 9101112131415161718192021222324252627282930 (1χ)
y:0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (3χ)
yを3倍に拡大したのだから、3y=χ。つまり、y=1/3χになります。χ=1のとき、y=1/3です。
χが1/3に縮小したのと同じですね。もちろん、逆の表が比例しているのだから、この表も比例していますね。
では、χ=1のとき、yはいくつでしょう?
比例だから、1の1/3になります。
ということは、χが1/3になれば、yも1/3になるということですね。
さらに、y=4χはχを4倍に、y=5χは5倍に拡大すればいいんだ。
5、分数の傾きもこの表で表すことはできるか
では分数はどうだろうか? y=(3/2)χはどうしたらいい?
2y=3χだから、χを3倍に拡大して、yを2倍に拡大すればどうでしょう。
x:0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (3χ)
y:0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 (2χ)
これ、ピッタリじゃないですか。
ということは、係数が5/3や4/5の表も作ることができますね。
ところで、この表を見ていると何か気がつきませんか?
例えば、8/12を約分してみましょう。
8/12=4/6=2/3
これは、この表そのものでしょう。
2/3=4/6=6/9=8/12=10/15・・・ですね。
写真の様にタイルを使うと、同じということがわかります。
そして、分母と分子は比例しています。
さて、この表のyを左へ1つずらしたらどうなるでしょうか?
x: 0 1 2 3 4 5 6
y:0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
この関係を式で表すとどうなるでしょうか?
さらに、右へずらすとどうなるでしょうか?
6、比例のモデル
比例は表で考えるとすぐにわかります。この表を拡張したものが、今まで考えてきた「表アイテム」ということはわかりますね。
例をあげます。
(1)分数の約分(前の章)
(2)速さ・・・時速60km 1時間で60km、2時間では?
時間(時間):0 1 2 3 4
距離(km):0 60 120 180 240
(3)1mで10gの針金 2mでは?
長さ(m):0 1 2 3 4 5
重さ(g):0 10 20 30 40 50
(4)かけわり図・・・かけ算そのものが比例 一皿に4個のみかん
皿の数 :0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
みかんの個数:0 4 8 12 16 20 24 28 32 36
この比例を拡張すると、対数目盛りへたどりつきます。さらに二次関数もベキ関数も比例という視点で統一してとらえることができます。。