証明と仮説
図形の証明は仮説を見つけること
「解き方よりも問題自体を大切にすること」で考えてきたことを例によって図で位置づける。
もちろん回り道へ。
単に「与えられた問題」ではなく、様々なコトから「私の問題」となる過程が偶然にあるということだ。
そして、「解決」で終わりではなく、そこからさらに「新しい問題」が生成される。
そういうことだったのかと腹に落ちた。
今日(1月20日)ついにこんなニュースが出た。
AIが数学オリンピックの難問証明 ひらめき獲得 数学者「ついに」:朝日新聞デジタル (asahi.com)
(この中にあるnatureの記事を翻訳した方がわかり易い)<用語の解説>
AlphaGeometry=DD+ARの記号演繹エンジン+GPT4の仕組み
ARは代数規則、幾何学的規則。角度とか比率とか距離の追跡とか・・・
DDは演繹規則、つまり演繹的データベース。
多分証明はAIでもできると思っていたけど、予想をはるかに超える。→【シュミレーションによる証明のしかた 】
AlphaGeometryはどうやって解いたのだろうか。
そのためにはこの問題を私自身が解いてみなければ。
それに、この問題を上の様に実際に図にして動かしてみると何だか不思議に思える。どうしてこんなに単純なのに一点で交わるんだろう?
IMO2004の第一問を毎日考えているけどなかなか証明できない。
こういう図形の証明問題に取り組むことは、三昧(禅定)と同じことだと感じる。
最初に問題自体を自分のものにする。それは出口と入口をはっきりさせること。
問題が目の前に無くても頭に浮かぶようになったらようやく考えることができる。(実はこれだけで5日かかった)
次にいろいろな仮説が浮かんでくる。それをしらみつぶしに確かめる。
この場合、今までの形があって、それに当てはめることをしている。(例えば補助線を引いて円周角を捜すとか)
でも、だいたい1時間ぐらい考えるとぼーっとしてくるので次の日に回す。
8日たって、問題がここまで変化してきた。が、まだ解けない。
循環論法に陥っている。で、どこに本質があるのか。どこを動かすと何が分かるか。
点を動かしていると何となく見えてくるものがある。(この点はGeoGebraのおかげ)
1月31日の朝方、やっと証明ができた。(降ってきたような感じ)
唯識の成所作智(前五識で働く。対象と一体になって働きかけていく智慧)と
妙観察智(第六識で働く。観察対象の本質を見定める智慧)の通りにやってみた。
瞬時ではなく11日かかったけど。
下図は25番目の図で、本質でない所をどんどん消していったもの。
いつも証明が終わってみると実に単純なことだったと感じるけど、ここまで来るのにずいぶんと回り道をした。
いや回り道をしなければ分からなかった。
ついでに「証明すること」は上の図式のどこに当てはまるのか調べてみたい。
モデルというのは「ユークリッド幾何学の枠組み」である。
どうやら「証明する」とは現象の多様なつながりの中から「本質(より多くのことを示せる仮説)」を見出すこと。
そのためには現象を動かしてみること。動かすと「本質」が見えてくる。
つまり仮説を持ち、それが「本質」をついているのか確かめること。
この「説明仮説」を定式化したのがパースで、次のようになる。
@驚くべき事実Cが観察される
Aしかし、もしHが真であれば、Cは当然の事柄である
Bよって、Hが真であると考えるべき理由がある
このHが仮説であり、これを見つけるのが難しいのだ。
例えば、私は最初補助線や補助円を沢山描いていたのでかえって「本質」がわかりにくくなっていた。
ここで必要だったのはたった一つの補助円(仮説H)だった。
この補助円にたどり着いた時、全てが結びついた。
下のナビゲーションをたどれば自分で証明をたどることができる。
「証明は論理ではなく仮説」については次のページで。
『科学における「正しい事実」は、人間がある対象を思い通りに動かすことができる「技術」と表裏一体のものとして発明される』
70を過ぎた老人でもGeoGebraを使えば何とか証明できることが証明できた。
数学オリンピックではこの問題を数時間で解かなければいけない。
私には到底無理だけど若い人ならできるかもしれない。
でも、11日かかったけどだんだん本質が見えてくる楽しさを味わえた。
問題はこれをアルファ・ジオメトリーがどうやって証明したかだ。
私はいろいろ試行錯誤したけど、統計的にもっと近道ができるのなら、と思ってしまう。
これを調べるのは大変だな・・・。
でも、この問題を証明しようと思ったのはアルファ・ジオメトリーが証明したというからだけど・・・。
それにしてもAlphaGeometryは証明ができた時、うれしいと感じるのだろうか。