【エドガー=アラン=ポー】
『黄金虫』
19世紀のアメリカの小説家で、推理小説の父と言われた人がいる。名前は、エドガー・アラン・ポーという。通称ポー。日本でも彼を尊敬して、ペンネームにそっくり使った人がいる。誰かわかるかい。
・・江戸川乱歩だ。
名探禎明智小五郎。知ってますね。ところで、ポーのことですが、彼は40才で亡くなっている。若くして死んだんですね。その彼の作品に『黄金虫』という小説がある。これから紹介しよう。
『キャプテンキッド
の暗号を解こう。』
これは何だと思いますか。
“53‡‡†305))6*;4826)4‡・)4‡);806*;48†8Π60))85;1‡(;:‡*8†83(88)5*†;46(;88*96*?;8)*‡(;485);5*†2:
*‡(;4956*2(5*−4)8Π8*;4069285);)6†8)4‡‡;1(‡9;48
081;8:8‡1;48†85;4)485†
528806*81(‡9;48;(88;4(‡?34;48)4‡;161;:188;‡?;”
・・式。
・・暗号だよ。
これは、黄金色のかぶと虫と一緒に発見された羊皮紙に書かれていた暗号で、髑髏とヤギの絵が描いてあることから、有名なキャプテンキッドの宝の場所を隠した場所を示したものだということがわかる。これを解いて宝の有りかを見つけよう。
・・何かヒントはないの。
本文を読んでみよう。「・・・」
『キャプテン=キッドと言えば海賊』
キャプテンキッドは、どこの国の人ですか。
・・イギリスかな。
ということは、この暗号は英語で書かれている。5とか3が、英語のアルファベットの1文字に対応している。出てきている文字を整頓してみよう。
・・8が33個、;が26個、4が19個使われています。
・・ということは、英語で一番使われる文字を見つければいいわけですね。
『英語で一番使われる文字は?』
その通り。さて、今日は英語の教科書を持ってきていますね。これで調べたいと思いますが、どんな文字が沢山出てくると思いますか。
・・A、S、E、T、I、O、R、ぐらい。
では、教科書のページを決めて、班ごとに出てくる回数を調べよう。
・・どの班もEが一番多いよ。
・・2番目はTだ。
・・ということは、8はEだね。
・・;はTということ。
いや、各班の結果を見ても、Tが2番目に多いとは限らない。ポーの文には、彼が調べた結果がでている。それによると、一番多いのはE、次はA、O、I、D、H、N…という順になっている。
ところが、同じテーマで書いてある、イギリスのSF作家コナン・ドイルの書いた、シャーロック=ホームズの『踊る人形』では、一番多いのはE、次はT、A、O、I、N、S…の順になっている。
・・なぜ違うんだろう。
・・アメリカ英語とイギリス英語の違いじゃないかな。
いずれにしても、8は確実にEといえる。では、8をEに直してみよう。
・・Eがバラバラに散らばっているだけで、まだ分からない。
『英語で一番使われる単語は?』
そこでだ、今度は英語で一番使われる単語をさがそう。
・・Iでしょう。
・・冠詞のAでは。
・・He?。
・・Theだ。
教科書を、調べてみて下さい。文章に1回は、Theが出てくるでしょう。では、この暗号の中でtheに当たるのは、どれでしょうか。
・・Eが入っているから、Eの前が同じ文字の場合は。
・・;4Eが、6回出てくる。
・・ということは、;がTで、4はHか。
さあ、これで3つの文字が分かりました。当てはめてみてください。
・・何か読めそうで読めないな。
『THIRTEEN』
ちなみにtheの次は名詞だよ。
・・(自信がなさげに)[ ;48;(88;4(‡?34 ]=thet○eeth…はthe
tree じゃないでしょうか。
みんな聞いて。thetという単語はないから、the で区切る。そうすると次のt○eeはなんだろう?
・・treeだ。他のところもrが当てはまるか調べてみよう。…よさそうだよ。
・・そうか。そうやって当てはめていけばいいのか。 (をrに置き換えればいいのですね。
・・解った。これ [ ;46(;88*96*]は、thirteenじゃない。th○rtee○ に当てはまる。
どうやらそんな感じだ。もし正しいとすると、IとRとNが解ったことになる。
・・するとこれは、andかな。
・・north 北だ。
・・throughという単語もあったよ。
どんどん見つかりますね。先生はこれを、2、3日かけても、全文解読することはできなかった。ところが小寺君は、英語の先生の協力も得ながら、たった1日で見事、全文を解読してしまった。
・・よし。僕もやってみよう。
・・僕は、英語はもう沢山だ。
《参考文献》
英語の単語でよく使われるものの出てくる割合について、『ジップの法則』というものが知られている。これは、1位がTHE、2位がOF、3位がANDでその頻度は、順位に逆比例するというもの。この分布はフラクタル分布になっているという。
『フラクタルって何だろう』高安秀樹+高安美佐子著
「ジップの法則」については、『対数グラフとスモールワールド』のページへ