「極と極線」入門

― 定義を広げる 接線から極線へ ―

1,接線から極線へ

T:この楕円に接線を引きます。まずPを動かしてみましょう。
S:動かしていても何も見えてきません。
S:でも、二つの接点の間に何か関係がありそうな気がする。接点を結んでみよう。
T:この線を引くと見えてくるモノがありますね。この線をPの極線といいます。
S:どうして極線というのですか?
T:Pを極と言います。その極の作る線だから極線です。
S:Pが外にある時は接線が引けるけど、図の中に入ると接線は無くなるから極線も無いのでしょうか?
T:それが今日の学習の大事な課題です。そのポイントは「定義を広げること」です。つまり、Pが楕円の内部に入った時も極線を定義できないかということです。



S:Pは直線上に置いてある。もう一つ別の点Hから接線を引くと・・・
S:弦(極線)の交点は動かないよ。この点Kの意味は何だろう?
S:もしかしたら、このKの極線がこの直線なのかな。
S:逆に考えると、Kを通る弦の接線の交点はこの直線上にある。

S:「Pを通る弦」ってどういう意味ですか?
T:Pを通る弦は無数にあります。Qを動かすと弦QRが動きます。そして、QとRの接線を作図すると・・・不思議な現象が出てくるのです。
S:あれ、二つの接線の交点Sは極線の上にありますよ。どうしてだろう?
T:不思議ですね。証明してみましょう。
poncelet.png(75167 byte) ただ楕円では難しいので円でやります。この楕円の焦点を近づけて円にしてみましょう。ピッタリでなくてもいいですよ。 そして円の中心OからPQに垂線を引きます。 その垂線と極線DEとの交点をS'とします。OPとDEとの交点をT、OS'とPQとの交点をT'とします。
S:このS'とSが一致すればいいんだ。
S:∠T=∠T'=∠Rだから円が描ける。
T:すると・・・
S:△OT'P∽△OTS'だ。相似比を求めるとOP:OT'=OS':OT。
S:つまり、OP・OT=OT'・OS'=r2=OQ2。ということは、OT':OQ=OQ:OS'。
S:よって△OQT'∽△OS'Qだから(一角と比が相等)、∠OQS'=∠OT'Q=∠R。
S:つまりQS'はQの接線だから、SとS′は一致する。
T:この定理の逆をポンスレの定理と言います。
円Oに関するPの極線をABとするとき、AB上の一点P'の極線はPを通る」とても大事な定理です。
⇒【ポンスレの定理

S:円だと接線の性質からから直角になるのでPを通るんだ。でも円では成り立つことはわかったけど、これは楕円ですよ。
T:円で成り立った図をスライドにして斜めの壁に映します。どんな図になるでしょうか?
S:形は変わるけど直線は直線になる。位置関係は変わらないな。そして円は楕円になります。
S:つまり楕円でも成り立つわけだ。Sの極線はPを通る。

2,極線をどう定義するか

T:さて、今度はGを動かして、Pを楕円の中に入れてみよう。
S:接線は消えますね。でも、弦は引くことができるし、QとRの接線は引けます。
S:Dを動かすと、この接線の交点の軌跡は直線を描く。でもこの直線をどうやって作図したらいいの?
T:Pの極線の作図の仕方は上のアイコンの4番目(垂線)をクリックして6番目(極線)を選び、Pをクリックしてから楕円をクリックすれば作図できます。
S:なんだ簡単に作図できるんじゃない。どうして早く教えてくれなかったの。
S:これで楕円の中に極がある時の極線が定義できる。「極Pから楕円に弦を引いて、QとRの接線の交点の作る線が極線。

T:さっきKの極線がFGになるんじゃないかと言っていたけど、その通りなんですね。
S:今までの事から「極が外部にあれば接点を結んだ線」。「内部にあればPを通る弦の接線の交点の作る線」。
S:それに、ポンスレの定理により、「極線上の点の極線は元の極を通る」=「極の弦の作る接線は極線を作る」。

3,極線の性質

T:今度は極線の性質を調べてみましょう。大事な性質の一つに内分・外分の関係があります。
S:この図でEG:GF=ED:DFということですね。
T:この関係は次の式で表すと便利です。$\frac{EG}{GF}$・$\frac{FD}{DE}$=1
S:極と極線は図形を内分と外分に分けるんですね。



T:この図のJの意味については【三角形の極と極線への誘い】へ

4,極線の面白さ

T:放物線でも極線を考えることができます。Fが焦点でCDは準線です。
S:準線というのは焦点の極線なんですね。
S:準線上の点からの接線は直角じゃない?
・・・



S:直角三角形の斜辺が準線で二等分されていますね。

GeoGebraでさらに深く調べてみましょう。
円の極と極線
円に外接する多角形の極と極線
極と極線が示す円と三角形・四角形・六角形の対称性


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