気象庁のデータを使って気候変動を探る

エクセルを使ってのデータ分析法

爺:今度高鷲の歴史の本を書くんだけど、高鷲町の気候についても書かなくてはいけないんだ。
 それで高鷲の気候を調べようとしたけど、そのデータが少ないことに気がついた。
 村史には昭和30年の高鷲中学校の気象観測部の記録が書いてあるだけ。
 どこかにデータが無いか探したけどわからない。こういう時はどうしたらいいの?
孫:そういう時はネットで検索するんだけど、大抵は気象庁にデータがあると思うよ。

気象庁|過去の気象データ・ダウンロード (jma.go.jp)

爺:月別の気温のデータが1979年からあるよ。すごいね。
 えーっと岐阜県・郡上市・高鷲町・・・あれ、長滝のデータしかない。ひるがのは降水量のみだ。気温がわからないよ。
孫:長滝はいつも天気予報で積雪がTXにも出ているから有名だね。高鷲は測定するところが無いのか。でも六厩にはあるよ。
爺:とりあえず長滝の年間の平均気温を求めてグラフにしてみよう。で、どうやったら良いの?
孫:まず年間の平均気温を求めなくては。このデータをエクセルに取り込むんだ。
爺:気象庁のサイトの指示通りにダウンロードして・・・。
 エクセルデータができたよ。→・高鷲の気温と降水量 (長滝・六厩との比較から)
孫:データをよく見てみよう。その年の月別の平均気温と今までの月別平均気温と最高気温と最低気温のデータがあるね。
爺:どっちも平均気温なのにどう違うんじゃ?
孫:後の方の平均気温は今までのデータの月別の平均だよ。これは既に求めてあるよ。
爺:そもそも月の平均も一日毎の平均だからややこしくなるんだな。さて、この年ごとの平均気温を別のシートにコピーして今度は年を横軸にとる。
 グラフはエクセルが自動的に作ってくれるね。便利じゃなあ。

孫:上がり下がりがあるけど、全体としては上がっているような気がする。
爺:確かエクセルには近似曲線というのがあったはず。描かせて見よう。→点線。
孫:曲線ではなくて直線だね。よく見ると1980年から2020年の40年で1℃上がっている!
爺:1℃上がるってすごいことではないの。こんな身近なところの気温がこんなに上がっているなんて・・・。
孫:この近似曲線ってどうやって描いているの?
爺:これは任せて。昔やったことがあるんだ。
 確かデータを散布図にしてその散布図の一つ一つの値の二乗の和が最小になるような直線を見つけるんだ。
 →【回帰直線…最小二乗法】相関係数や主成分分析も見て。
孫:この面倒な計算をエクセルでさっとやってくれるということだね。でも、これはあくまで最小になる直線を求めているだけだね。もしかしたら直線ではないかも。
爺:そうだね。全体の傾向がつかめるというぐらいだけど、でもこんなにはっきりと傾向が出るとは思っていなかったよ。
孫:これはせいぜい50年程度の傾向かもしれないからもっと長いスパンを調べてみないと・・・。
爺:ところで、このデータだけでは肝心の高鷲の気温がわからない。
孫:六厩の記録もダウンロードして比較してみよう。
 六厩の近似曲線の傾きは長滝よりも大きい。今度は30年で1℃上がっているよ。
爺:この二つの地点を並べてみよう。

孫:両地点の気温の変化がよく似ている。ほとんど平行だ。そうか、近くにあるから関連があるのは当然だよね。
 とすると、高鷲の気温はこの間にある。地理的にも南北で標高もこの間にあるから。
爺:いいぞ、いいぞ!その調子、
孫:そこで、それぞれの標高がわかるので、温度差を標高差で割ってみると、例の1mあたり、0.006~0.007となっている。
爺:「温度差と標高差が比例している」と仮定するんだな。でも、年度によって違っているけど。
孫:この年によって異なる係数と「大鷲」と「ひるがの」の標高差をかければ予測値が出る。

爺:この予想値はかなり近い値だと感じるな。

孫:とすると、この方法を使えば「大鷲」と「ひるがの」の一日の平均気温も推定できる。

長滝
430m
六厩
1015m
大鷲
534m
ひるがの
885m
(B2-C2)/585
1月 -0.2 -5.1 -1.1 -4.0 0.0084
2月 0.3 -4.6 -0.6 -3.5 0.0084
3月 3.8 -0.8 3.0 0.2 0.0079
4月 9.8 5.2 9.0 6.2 0.0079
5月 15.3 11.3 14.6 12.2 0.0068
6月 19.3 15.8 18.7 16.6 0.0060
7月 22.9 19.9 22.4 20.6 0.0051
8月 24 20.6 23.4 21.4 0.0058
9月 20 16.4 19.4 17.2 0.0062
10月 14 9.8 13.3 10.7 0.0072
11月 7.9 3.6 7.1 4.6 0.0074
12月 2.4 -2 1.6 -1.0 0.0075

これをグラフにすると、

孫:最高気温と最低気温も組み込んだらもっとわかり易くなるんじゃないかな。

爺:確かにこちらの方が実感と合っているね。高鷲も知りたいね。

爺:なるほど、こちらの方が現実に近いような気がするね。
孫:気象庁のデータとエクセルを用いての探求はなかなか面白いね。冒険しているみたいだ。
爺:まだやってみたいことがあるけど、目が見えなくなってきた。しばらく休憩しよう。

・・・

爺:今年の夏は特に暑いような気がするんだけど、それはデータから言えるんだろうか?
孫:今年の長滝と六厩(むまい)の気温から、この40年間の変化とどう対比させたらいいのかということだね。
 一日の気温は変化するので平均を取っている。これは年間平均も同様だ。あくまで平均なんだ。だから今年の気温もこの年間平均に入っている。

爺:「昔と比べると最近は暑くなっている」という感覚をデータとして表せるのだろうかという課題を出すよ。
孫:まず「今年の月気温と平年の月気温」の平均を比べてみたらどうだろう。
爺:そういえば今年の3月は暖かかった。
孫:8月のデータがそろうと暑いのが良くわかると思う。
 ただ、この年平均には今年の値も入っているし、あくまで今年だけの値だ。  

爺:8月が終わったので気象庁の記録が出た。予想通りだ。
孫:最高気温の平均が30度を超えている。今年の暑かったのが目に見えるようになった。

孫:「温室効果ガスを多く排出し続けると世界の平均気温は産業革命前と比べて2021〜40年の間に1.5度以上上昇する可能性が非常に高く、排出量を低く抑えても1.5度を超える可能性がある」と言われているけど・・・。
爺:こうやって体感すると、平均気温1℃上がるということがどれだけすごいことかわかる気がするね。
孫:今度は降水量もグラフ化してみよう。グラフにしないとどうもわかりにくいからね。  

高鷲の気温と降水量?(長滝・六厩との比較から)

孫:毎年の月変化を見ていくのが一番体感できるな。
 気象庁のデータの中にひるがのの降水量の記録がある。これと長滝を比べてみよう。

孫:これを見るとひるがのの方が多いけど相関があることがわかる。
 念のために年間雨量を計算してみる。

孫:相関はあるけどひるがのの方が雨量が300〜500o多い。
 ひるがのは、年間3000oを越えているばかりか、4000oを越えている年が5年もある。
爺:そういえば高鷲は雨が多いような気がする。(冬の降雪量が多いことも原因の一つか)
 ではどれくらい多いの?他と比べてみて。

年降水量(平年値)ランキング - 気温と雨量の統計

孫:合計や平均を取ってみると3300oは越えているのでトップテンに入っている。
 ひるがのは全国でも雨量の多い所だとわかる。
 岐阜市とくらべてみたけど圧倒的に多い。尾鷲といい勝負だ。


爺:けんちゃん、こんな表現(デザイン)も見つけたよ。
 高鷲の気象の特徴を比較するのにとてもわかり易いと思うんだ。
  →【鷲見郷は山奥で僻地なんですか?】

孫:これだと高鷲の気候の特徴がとてもよくわかるね。
 さらに国立国会図書館デジタルコレクションに大正3年から昭和13年までの岐阜県気象年報がのっているよ。
爺:やってみたいことが次から次へと出てくるね。

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