舟形多円錐図法から球の表面積を求める
― 舟形はsinカーブだった! ―
下図のような形で世界地図を描く方法を「舟形多円錐図法」というそうです。【102】
S:この船形の面積を求めることはできないのですか?
T:そういえば、昔、舟形を球に張り合わせて地球儀を作った覚えがあるよ。
S:もし、この船形の面積がわかれば、球の表面積を求めることができますね。
S:この船形の曲線はどんな曲線なの?
T:円の弧かな? とにかく求めてみましょう。
S:船形の縦の曲線は大円。北極の角度をαとすれば、球の中心の角度もα。
S:この船形がどれだけふくらんでいるのかは、弧Lの長さがどう変わっていくのかを調べれば良い。
S:Lは上に上がっていくと小円になるね。小円は大円に対して常に90度だ。
S:そうすると、小円の弧は直線ではありませんね。
T:もともとこの船形はふくらんでいるので、平面にすることはできません。だけど、角度αをある程度小さくすれば平面に近くなります。
S:Lの長さは左下図の平行な小円の弧の長さだから、まず小円の半径Yを求めます。
Y=√(r2−X2) (ピタゴラスの定理より)
L=2π√(r2−X2)×α/2π (角度はラジアン α/2π=a/360)
=√(r2−X2)×α
仮に、α=1とすると、
L=√(r2−X2)
T:これは、Xを変数としているので、大円の長さに変えないと駄目です。まず、r=1としましょう。
そうすると、L=√(1−X2)
(ここからは高校レベルです) 弧の長さは角度θで表されます。X=sinθだから、
L=√(1−X2)=√(1−sin2θ)
cos2θ=1-sin2θなので、L=cosθ
S:あれ?こんなに簡単になった。本当かな?
S:このθを拡大して、L=cos(θ/r)にすれば、半径rの舟形(右図)になります。
S:ということは、舟形多円錐図法はcos(sin)曲線だったということか。
T:では、ここから球の表面積を求めてみましょう。
S:この面積は求めることができるのですか?
T:cosカーブの面積は1とわかっています。
(∵∫cosθ・dθ[0≦θ≦π/2]=[sinθ][0≦θ≦π/2]=sinπ/2−sin0=1)
横にr倍拡大すれば、面積は1×r。下にもあるので、面積は2r。
弧の長さは2。円周は2πrだから、πr倍すると、2πr2が半球の面積となる。
S:ぴったりですね。cosカーブの船形は面積を正確に表しているようですね。
S:実際にcosカーブで半球を作ってみました。
前に作った三角形の時はすきすきだったけど、今度はしっかりと詰まっているようです。
T:サンソン図法という世界地図の描き方があって、これはcosカーブを使って、二つのcosカーブに囲まれた所の面積が半径1の球の表面積と同じになるように描いてあります。
S:前回三角形で表面積を求めようとして失敗したけれど、こうやって考えていくとけっこう奥が深いですね。
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