アポロニウスの問題は奥が深い

認識の「のぼりおり」と証明のはたらき

なぜこの現象がおきるのか…原理から説明する「おりる」

次の図で、Cの極線を引いていろいろ作図をしていると、不思議な現象が見つかってくる。
すると、それはどういう原理から起こってくるのか調べたくなる。
試しに、Pの極線上に一点を置き、そこから円の極線(左から4つ目のアイコンの中にある接線の次)を作図してみよう。 その点を動かすと極線は変化するけど不動点が見つかる。 それがPの極線の極。

          ≪円の極と極線の性質≫

ずっと以前【「極と極線」入門 】からこの現象が不思議だった。
というのは、どれが原理なのか、何を定義とすればよいのか、迷ってわからなかったからだ。
今回、いろいろ「さかのぼって(原理を探る=証明する)」いるうちに、 「ラ・イールの定理」というのが最も原理的ではないかと感じた。
それで、ここから極線を定義して、今度は「おり(説明し)」てみる。
もし、それですっきり説明できたらこれが原理と認めることができるはず。
これが【ユークリッドの方法】なのだと思う。
ただし、原論は「おりる(説明)」ことしか述べていない。そこには「のぼる」過程があったはずなのに。
     
このレポートでは、おりる(説明)だけでなく、のぼる(アブダクション)ことも書いてみたいと思う。

まず、極線を定義してみる。
下図において、「Bから円Oへの接線の接点を結んだ線」が極線であるが、これを定義にすると行き詰ってしまう。 ここでは、Bの極線を「BOと垂直で、OE・OB=r2となる線」(r=半径)と定義する。
この定義は、相似な直角三角形から直ぐに導くことができる。 そして、極線の性質は全て直角三角形の相似から導き出される。 試しに、「ラ・イールの定理」を証明してみる。

ラ・イールの定理  「Bの極線上の点Aの極線はBを通る」

まずAOへBから垂線BDを引く。このBDがAの極線となることを示す。
ナビゲーションを戻してから、証明をたどってみよう。

       ≪「ラ・イールの定理」の証明≫


上図のように「Cの極線上の点Aの極線は必ずBを通る」ことが証明できた。
この定義の良い所は、三角形の相似が使えること。
この定理から極と極線に関するいろいろな性質が生み出される。
でも、定義を別のモノにすると、堂々巡りになってしまう。
だから、何を定義とし定理とするのかで証明ができるかできないかが分かれる。
つまり、さかのぼったことが正しいかは、おりてみて始めて確かめられる。

定理にはその逆がある。逆は常に正しいとは限らない。では「ラ・イールの定理の逆」を証明してみよう。
Bから円と交わる直線を引く。その交点の接線の交点はBの極線上にある。
〔証明〕Bから円に直線BDを引く。その線に対してOから垂線を引く。 2つの三角形が相似なのでOE・OB=r2が言える。 その垂線とBの極線の交点はBDの極となる。 つまり、ADと円の交点の接線はこの極で交わる。

次に、前の図の「FHとGIの交点がCの極線上にあること」を証明してみよう。
まず、下図のように順に作図してみる。この作図の順番が大切なので、ナビゲーションを戻してたどってみよう。

        ≪「円に内接する四角形の性質」の証明≫


互に極と極線となる所がポイント。CA上の点の極線がGを通ることも直ぐにわかる。
そして、極と極線の概念を用いると簡単に証明できるようになる。

アポロニウスの問題

ところで、なぜこの極と極線を探ってみようと考えたのかというと、 発端はアポロニウスの問題。
 →【アポロニウスの問題の作図
平面において与えられた3つの円に接する円を描け」という問題。
これは双曲線や楕円を用いると円の中心がわかり、簡単に求まる。
ところが、別の解き方(ジェルゴンヌの方法)があり、それは極線や根軸を用いる。
その方法で実際に作図ができるし、GeoGebraで動かしてみると確かだけど、 なぜそうなるのかはわからない。
ちなみに「極と極線」の概念は、このジュエルゴンヌさんが見出したという。

          ≪アポロニウスの問題≫

原理を探る旅「のぼり」

この図を作図しているうちに、「なぜこうなるのだろうか」と原理を探ってみたくなった。
方法(How)がわかると、なぜ(Why)そうなるのか調べたくなるからだ。
三円の接線を作図していて気がついたのが、三円の接線の3つの交点が一直線上に並んでいること。 調べると「モンジュの定理」という。

        ≪モンジュの定理≫


これは簡単に証明できそうだが意外と難しい。 何とか直観的に証明できないだろうかと、 いろいろ調べていて、空間で考えるとわかり易いということがわかった。
→〔証明〕【モンジュ(文殊)の定理と和算のわかり方

この3本の赤線は3円の極線と見なしても良い。
例えば、ZPを極線とすると、中心からZPへの垂線とZの極線の交点が極となる。
これは後から重要なポイントになる。

さて、3円の図≪アポロニウスの問題≫をいくら見てもわからない。そういう時はできるだけ単純にしてみる。
つまり、3円を2円にしてみる。3者の関係よりも2者の関係の方が単純になるから。
そうやって発見したのが、次の図の大きさが異なる円でも接線の長さが等しくなること。
つまり、EQ=FTであること。
これは簡単に証明できた。(といっても3日かかったけど)

       ≪「二つの円の接線の性質」と証明≫

2円に接する接点を見つける

この上図の最後を見ると、接点の間(QとT)の中心が大事ではないか。
下の中点と上の中点を結んだものを根軸という。Bを通る線が根軸で、二つの接点の中点を通っている。
今度は根軸について調べてみよう。

次のページ→【根軸の性質

根軸は接点間の中点なので、大小2円の接点までの距離が等しいことが予測できる。
この2つの円の接点までの距離が等しいことが、アポロニウスの問題を解くポイントの様だ。
ここで気になるのが、根軸がわかれば2円に接する円がどうして作図できるのかということ。

二円の極線と根心の関係

つまり、接点までの距離が等しいということは、接点は中心を結ぶと接線と垂直になり、 もう一つの垂線と交わった点は等距離となり、接する円が描ける。
次の図を見てみよう。
2つの接点から交点Dが見つかり、MV=MEなのでDV=DEとなり、Dは接円の中心いうことがわかる。

      ≪2円に接する円の作図≫


(ちなみに、双曲線アイコンで大小2円の中心とDをクリックすると、接する円の中心の通り道がわかる)
ここで気になるのが、根軸上の点からどうやったら接点がわかるのかということ。
それは、いろいろ確かめてみると見えてくる。
根軸上の点Mから2円への接線を引くと、接点までの長さが等しくなる。
つまり、根軸上の点を中心にした接点までの円が描くことができる。
この円は常にある定点を通る。上図でいうとKとL。
逆に言うと、Kを通る円を描けば接点がわかるということだ。
それを証明してみよう。

下図「根軸から二つの円への接線の長さと極Gへの長さが等しい」ことの証明。
これが証明できれば、根軸にある中心からGを通る円を描けば接点が自動的に求まる。
この証明にはかなり時間がかかった。(一か月ほど)
ポイントはやはり極と極線だった。でも、それに気がつくにはいろいろな試行錯誤があった。
「2円の根軸の問題」が証明できた!

   ≪根軸上の点を中心とする円が極Gを通れば、円との交点は接点となる≫


このように証明を書くと簡単だけど、この証明に至るまでにいろいろ試行錯誤していた。 最後に思いついたのが極と極線だった。
その試行(思考)の過程。このシートはスクローリングすることができる。

証明とは何か

ここで、証明とは何かを考えてみる。
いろいろ探っていくと、「もしかしたらこれが言えるのではないか」という現象(仮説)が見つかる。
でも、それはあくまで仮説であって、証明されなければ確実とは言えない。
証明されてはじめて定理となり、それを使うことができるのだ。
そして、証明すること自体にアブダクション(仮説設定)が必要であり、そこにも「のぼりおり」がある。
その仮説の証明は科学の実験と同じであり、証明された仮説は定理(原理)となる。
上図の場合は、Hからの極線が定点Gを通ることに気がついたことがきっかけだった。

新しい定理の証明は実験と同じ

原理から現象を説明する(くだり)

原理を見つけたら、次はその原理から現象を説明すること。
それは、レトリックを用いなければならない。
レトリックとは、説明する順番(アイディア)決め、それらを論理的に説明すること。 つまり「おりる」こと。

証明とわかるコト

これまでの事から、根軸上の点を中心とし極Gを通る円によって接点を見つけることができた。 さらに、この中心Nと極Gの関係を探ってみる。
問題は2円に接する円との接点を見つけることだった。 これまでの知見を用いると、 「根軸を使って、接線までの距離が等しい点を見つける」ことができ、 それを用いて2円に接する円を作図することができる。
理由は、前の≪2円に接する円の作図≫の最後の図で、Mを動かしてみると、 根軸上の点を中心とする円の交点は、 中心と結ぶと二等辺三角形ができ、その頂点を中心とする円を描くことができる。 MとGの作る円を用いると、2円に接する円を作図することができるから。
でも、これだけでは3円には対応できない。根軸の中心点の位置が定まらないのだ。

さらに調べてみよう。下図で、同じ円の接点どうし(VとV1,EとD)を結んでみると、 その交点が根軸上にあることに気がつく(青い線の交点)。

       ≪根軸円の性質≫


これは逆(根軸からの線によって接点がわかる)も言えるのではないか。 そして、どういう線だったら成り立つのだろうか?。
そこで、この図のMを動かしてみる。 この結んだ線に不動点があることがわかる。 これは極ではないか?。 この極の極線は何か?

そこで、次の図でもう少し深めてみる。
この図ではCを通る極線ICを先に引く。この極線の極はVとICの極だ。
極線上の交差している点を極とする極線が、HFやEDであることがわかる。

       ≪根軸と極の関係≫


次の図のRやSの極線は、Bを通り、MとPの接線の交点を通る。 このことは極と極線の性質からわかる。 EやCを動かしても交点R,Sは必ずBの極線上にある。 一見不思議に感じるけど、極と極線の関係から直ぐに導くことができる。 下図でRとSの極線を作図してみよう。 そしてMとFの接線が根軸上で交わることを確かめよう。 さらに、PとCの接線との関係も調べてみよう。

           ≪2円の極と極線の関係≫


ということは、 今度は極線からRとSを求め、RとSから根軸上の点を見つけることができるはず。

次の図で確かめてみよう。
DFとENはCの極線。AとPはUVの極。 AとPから根心に直線を引いた時、それはUとVの極線となる。 これが3円の極線に当たる。 試しにFを動かしてみよう。
これは逆を作図してみると良い。 原理は極と極線の性質から導ける。 下図は極Fを動かしてみると、接点HIの接線の交点が根軸円となり、接する円を作図することができる。

      ≪二円の根軸と極と極線の関係≫


これで2円を3円に拡張することができる。

ところで、この様な面倒なことになぜ飽きずに取り組めるのかというと、次から次へと新しいことが見つかるからだ。 その現象をなぜだろうかと探っていると、また新しい現象が見つかる。 それが何とも言えず楽しい。例えば、2つの円の大きさが異なるので、対称性が無いのだろうと思っていたら、ちゃんと対称になっていることが段々わかってくる。

極を通り根軸の一点で交わる直線の円との交点は接線となる。

次の図で、まとめてみよう。
根軸のはたらきと極線のはたらきを総合すると、極線から2円に接する円を作図することができる。
始めに極線を作図してから、極を求める。 その二つの極が根軸上の一点と交わる時、円との交点の接線の動きを探ってみよう。
ナビゲーションをたどって、AとRを動かしてみよう。

     ≪2円の根軸と極と極線の関係≫


というわけで、極線と極との関係から接点を見つけることができる。
3円の場合の作図の仕方は・・・。下図のナビゲーションを動かすと体感できる。
       ≪3円の場合≫

外側の接点に接する円も作図してみよう。

3円に接する円の作図の仕方

@各円のPWを極線とする極を求める。
 (求め方:各円の中心からPWへの垂線とPW上の点の極線との交点が極線PWの各円の極)
Aこの極線PWの各円の極と根心Gを結ぶ。
Bその線と円との交点が3つの円に接する円の接点となる。
C接点と中心を結んだ線の交点が3円に接する円の中心となる。
Dなお、接点は6個できるが、3個ずつの接点で円を作図する。
極線PW上の緑点から各円への極線を作図し、根心Gを通るようにする。
その時、極線と円の交点が3円に接する円の接点となる。
正確に作図しようとすれば、PWを極線とするそれぞれの円の極と根心と結べばよい。

      ≪作図の方法≫


この様に、3つの根軸は1点で交わる。これも証明しないと気持ち悪いけど、直観的にそうなるはずだと確信できる。
つまり、2円の場合は根軸で交われば良かったけど、3円だとこの根心だけとなる。

というわけで、次の図が最終バージョン。
3円に接する円は、極線が4本あり、それぞれ2個の円ができるので、全部で8個ある。 中心の位置や半径をいろいろ変えてみよう。

    アポロニウスの問題の完成形

解明するのに4ヵ月。書くのに一か月かかったけど楽しかった。
これはまさにネガティブ・ケイパビリティのトレーニングだ。
もう一つ気がついたことがある。
それは論理的思考について。
証明そのものは論理だが、その証明に至る思考過程は「論理(思考)」過程ではないということだ。 「証明する道筋」と「その証明法を見つける道筋」は異なっている。
だから、証明を教えても証明できるようにはならないのだ。
でも、自分でいろいろやってみて証明できなかった時に、証明を見たら「そう考えるのか」とわかる。 そのことが証明法を見つけるアブダクションにつながる。

GeoGebraのシート【アポロニウスの問題(根心と外相似軸)


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