ミケルの定理と内接楕円のdiscover
抽象の中にではなく具体の中にこそ本質がある
1.はじめに
T:この作図をたどってみて。複雑そうに見えるけど意外な性質が隠されているんだ。
S:ナビゲーションをクリックするんだね。・・・中心が楕円の焦点か。なるほど面白い。
「ミケルの6円定理の作図」
S:ミケルの定理って?
T:4つの円を隣どうし交わるように描いた時、その交点が円周上にあると対の交点も円周上にあるというきれいな定理だよ。円周角の定理を知っていれば証明も簡単。
「ミケルの定理」
S:本当だ。向かい合う角の和が180度になるから円周上にあるんだね。
S:円CEFIのもう一つの交点は円Nの円周上に並ぶ。でも、この定理は4円までだよ。あと二つは?
T:良いところに気が付いたね。まず4円で作図してから今度は「ミケルの定理の逆」を使って作図するんだ。
S:そうか今度はA円とN円が先に作図してあって、円3個と円Iでミケルの逆が使えるわけか。
(最初の図に戻って)
S:楕円の焦点は、最初の円の中心Aともう一つの交点が作る円の中心Nなんだね。
S:BをAB1の上に持っていくと、円Nは収束する。
S:これどういうこと?
T:よし、それを調べてみよう。
S:どうやって調べたらいいの?
T:いい質問だね。思いついたアイディアを実験するんだ。
S:どうやって実験するの?
T:GeoGebraを使うんだ。いろいろなアイディアをGeoGebraで作図して確かめる。
S:作図すると発見できるの?
T:予想したのがダメだったり予想通りだったり。だめでもそこに大事なことがあったり、時々発見がある。それが実に楽しい。
2.ディスカバー…覆いを外すと見えてくるもの
S:発見ってたまたまできるの?
T:そもそもわからないことばかりでしょう。だから探っていくと気がついたことは全て(私にとって)新発見。
「発見」って英語でなんというか知っている?
S:discoverだったよ。確かカバーを外すこと。覆いを外す=発見する。
T:小さな「発見」の積み重ねが謎を解いていく。
S:謎を覆っているカバーが取り払らわれていくんだね。
S:ところで、六角形の向かい合う頂点を結ぶと一点で交わるというのは?
T:まず、四角形からやってみよう。
外接四角形の性質とは、「円に外接する四角形ABCDの接点をEFGHとすれば、AC,BD,FH,EGは一点に会する.」
⇒【この証明】
T:これを6角形にしてみよう。今度は対角線が一点で交わる。
S:これ自体が不思議だね。
S:でもこれらの図は円だよ。楕円だと違うんじゃない?
T:この図を斜めに投影してみると、円は楕円になるけど直線は直線で長さは変わるけど点や線の関係は変わらない。
S:円で成り立つことは影を映してみると楕円でも成り立つということだね。
S:最初の図で中心が一点で交わっているから、逆に楕円に外接していると考えたんだね。
S:そうすると楕円が作図できるということか。この楕円はどうやって作図したの?
T:この性質を使ったんだ。
S:六角形を五角形にしたんだね。接点さえわかれば後は焦点から楕円が作図できるんだ。作図って面白いね。
T:次の図でMを動かしてみて。
S:Mは焦点と接点を結んだ線上にあるね。
S:最初の作図の問いの答え「BをAB1の上に持っていくと、円Nは収束する」は大事なことなんだな。
S:接点と焦点を結んだ線は重要なポイントだな。
3.ミケルの6円定理の証明の試み
S:今度はどうして中心が焦点になるかだ。
T:ここからは逆を考えてみよう。実はこの上の図も逆に作図してあるんだ。
S:逆って楕円を先に作図してから外接する6角形を作図するの?
T:そう。だけど6角形ではなく4角形。その方が単純だから。
S:その頂点がミケルの定理を満たしているかを調べるんだね。
S:この図で円Lが焦点Aと一致しないときは、ミケルの定理は成り立っていない。
S:外接四角形の頂点で小円を作図したときは、焦点Aに中心がないとダメなんだ。
S:そうか。反例が見つかれば、中心が焦点でないとだめだということだ。
T:ちょっとここで楕円の振り返りをしてみよう。
S:楕円の二つの焦点から周までの距離は一定ということは知っているよ。
T:これまでの作図の中でこんな性質も見つかったんだ。
S:楕円は接線で対称だったね。⇒【円錐曲線の対称性について】
S:楕円の外接四角形で焦点と接点を結んだ線はどういう働きをしているの?
T:それはこの図で証明してみましょう。ナビゲーションを押してください。最後まで行ったら、各頂点から円を作図してみてください。円Aは実線にしてね。
それから点Lを動かすと円Bの大きさが変化します。
・・・
S:ぴったり合った。ミケルの定理の逆だ。
S:もう一つの交点もAが中心の円になる。
T:ちょっと複雑だけど、楕円の性質から見事に焦点と接点との関係が示されている。
S:まとめるよ。
@楕円の外接四角形を作図する。
A焦点Aを中心とする円は、Aと接点を結んだ線上の点で、外接四角形の頂点との距離が等しくなる。
B各頂点についても同様のことが言える。
Cこの小円のもう一つの交点はミケルの定理により同一円周上にある。
D同じことが焦点Bについてもいえるので、もう一つの円の中心はBとなる。
Eさらに、AEとBEは対称で、AEの上に交点Qがくる。
Fよって楕円の性質により、二つの円の半径の和は楕円の焦点からの距離の和と等しくなる。
S:焦点を中心とする二つの円の交点が楕円周上にあることもわかり、すっきりした。
T:私もこの図で蔽っていた霧が晴れて周りの景色がはっきりと見えるように感じたよ。
S:これは逆だから直接は証明していないけど、そうなる性質の理由を述べているんだね。
抽象の中にではなく具体の中にこそ本質がある。「空即是色」
⇒GeoGebra【ミケルの定理と楕円に外接する多角形の作図】
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