連立方程式の解き方から行列の意味へ

− 表現することの意味 −

1、連立一次方程式と行列式

行列式というのは、連立方程式の解き方の計算をつきつめた形式です。 連立方程式の解法(MathJax)

\[ \begin{eqnarray} \begin{cases} a_1x + b_1y = c_1 & \\ a_2x + b_2y = c_2 & \end{cases} \end{eqnarray} \]

この二元の連立方程式を解くとき、係数をそろえて引き算すると未知数が一つ消えます。

\[  a_1b_2x+b_1b_2y=c_1b_2 \qquad   a_1a_2x+b_1a_2y=c_1a_2 \] \[ -)\, a_2b_1x+b_1b_2y=c_2b_1 \qquad -)\, a_2a_1x+b_2a_1y=c_2a_1 \] \[ (a_1b_2-a_2b_1)x=c_1b_2-c_2b_1 \qquad (a_2b_1-a_1b_2)y=c_1a_2-c_2a_1 \] \[ x=\frac{c_1b_2-c_2b_1}{a_1b_2-a_2b_1} \qquad y=\frac{c_2a_1-c_1a_2}{a_1b_2-a_2b_1} \quad(符号を入れ変えて) \]

この計算はもっと未知数の数を増やすと項も増えていくので、式を書くことが大変になります。
この時、分母と分子を表す記号として、

\[ ad-bc= \begin{vmatrix} a & b \\ c & d \end{vmatrix} \]

と約束すれば、覚えるのに都合が良く、式を簡潔に表すことができます。
つまり先ほどの式はこの様に表すことができるのです。

\[ x=\frac{c_1b_2-c_2b_1}{a_1b_2-a_2b_1} =\frac{ \begin{vmatrix} c_1 & b_1 \\ c_2 & b_2 \end{vmatrix} }{ \begin{vmatrix} a_1 & b_1 \\ a_2 & b_2 \end{vmatrix}} \qquad y=\frac{a_1c_2-a_2c_1}{a_1b_2-a_2b_1} =\frac{ \begin{vmatrix} a_1 & c_1 \\ a_2 & c_2 \end{vmatrix} }{ \begin{vmatrix} a_1 & b_1 \\ a_2 & b_2 \end{vmatrix}} \]

と表すと、文字の数が増えても同じように表せて便利でもあります。
さて、この結果を見ると、χとyそれぞれ違う係数をかけて引いたのに分母が同じ式になっている事に気がつきます。
ということは、次のように表現できるのです。
ここで、行列()とは行と列を順番にかけ合わせ加えるという約束の計算形式です。


こうすると連立方程式が一次方程式のようにあつかえるのです。

同じことが三元一次連立方程式でも言えるのでしょうか?
この行列式を使って三元一次連立方程式の解を行列式で表すことを考えてみましょう。 \begin{eqnarray} \begin{cases} a_1x + b_1y + c_1z = d_1 & \\ a_2x + b_2y + c_2z = d_2 & \\ a_3x + b_3y + c_3z = d_3 & \end{cases} \end{eqnarray} この計算は係数だけの問題だから、形式的に計算することにします。
大事なのは係数のみ
 a  b  c
 a  b  c
 a  b  c
このyとzの係数をそろえるためにはxの係数は必要ありません。
 b  c ・・・(1)
 b  c ・・・(2)
 b  c ・・・(3)
(1)と(2)から
 +b  +c ・・・(1)
 −b  −c ・・・(2)
(2)と(3)から
 +b  +c ・・・(2)
 −b  −c ・・・(3)
(3)と(1)から
 +b  +c ・・・(3)
 −b  −c ・・・(1)
まとめると、
 +b  +c ・・・(1)
 −b  −c ・・・(2)
 +b  +c ・・・(2)
 −b  −c ・・・(3)
 +b  +c ・・・(3)
 −b  −c ・・・(1)
右の項(zの係数)も消去するためには、(1)(2)にcを、()(3)にcを、(3)(1)にcをそれぞれかけます。
すると、同じペアができてzの係数も0になります。
 +b  +c ・・・(1)     (1) +b  +c
 −b  −c ・・・(2)     (1) −b  −c
 +b  +c ・・・(2)  ⇒  (2) +b  +c
 −b  −c ・・・(3)     (2) −b  −c
 +b  +c ・・・(3)     (3) +b  +c
 −b  −c ・・・(1)     (3) −b  −c
つまり、(1)にbと−b、(2)にbと−b、 (3)にbと−bをそれぞれかけるとyとzが同時に消去できます。
しかもこれらのかけ合わせる文字は行列式で表わされることがわかります。
このように形式的に計算することですっきりすると同時に、部分ではだめだが全体を見ると統一的な法則が見えてきます。
これは行列式を用いて次のように表わせるのです。

2、3元連立方程式を一発で解く方法

一発でyとzを消す方法がこれ。
「表に数字を入れて連立方程式を変えてみましょう。自動的に計算してくれます。」



消える理由は前に説明したが、それを行列式を用いてまとめたものがこれ。つまり、三元の行列式も見事に成り立つことがわかります。


3、連立方程式から行列へ

形式というのは表現であり、連立方程式はとてもきれいな対称性を持っているので、このように計算することができます。
さらに、この形式をもっと広げると、 AX=C のように、行列を用いて一次(形)式で表現することができます。
とすると、X=C/A となり、連立一次方程式を「一次方程式」として捉えることができ、とてもすっきりするのです。

行列については、変換というはたらきと、数としてのはたらきの両方があります。・・・

この続きは、ジオジェブラ・ブック【行列の意味】


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