コマはなぜ倒れないのか?
「植木鉢用の皿にボールペンの軸をつけたコマです。コマの重心がほぼ軸の先端(支点)にあり,重力による力のモーメントを受けないので軸が鉛直でなくても歳差運動することなく安定して回り続けます。(確か〈マクスウェルの独楽〉という名前で呼ばれてたはず)重力の影響を受けないので,力のモーメントと角運動量の変化の関係がよく分かります。」
このニュースを読んで、さっそくこのコマを作ってみました。作って回してみると、確かに歳差運動をすることがなく常に一定の方向を指しながら回っています。実に不思議な気がします。土台を動かしても、向きは変わりません。簡単なジャイロスコープです。



(上の絵をクリックするとそれぞれの動画が出ます。このコマはおもりをつけて重心を調節してあります。この調節が難しい。)
『重心が軸の先端よりも下にあるコマ』
このコマで遊びながら考えたのは、重心が軸の先端よりも下にある場合はどうなるのかということです。ちょうどやじろべえみたいなコマなので、きっと起き上がるコマができると思って作ってみました。
すると、このコマも斜めにまわすとやはり歳差運動をするではありませんか。重心が上にある普通のコマとどう違うんだと考え、普通のコマも作って比べてみました。(動画)
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ジャイロスコープ
たがいに垂直な軸の周りを回転できる3つの輪形の支持台で独楽(こま)のようにまわる回転子をささえ、回転子の回転軸が、3次元のどの方向にも自由にうごくような装置。回転儀ともいう。
ジャイロスコープには、
(1)回転軸が空間で一定方向をたもつ(回転体の慣性)
(2)回転軸に直角な力をくわえると、回転軸は力の方向と垂直な方向にふれる(歳差運動)
(3)歳差運動の妨害に対しては反作用を生じない
という3つの性質がある。
回転体の慣性
回転体の慣性は、ニュートンの運動の第一法則から明らかである。この第一法則によれば、物体が力をうけない場合は、静止していた物体はいつまでも静止し、うごいている物体は等速直線運動をつづけようとする。したがってジャイロの回転子は、1度回転をはじめると、同じ回転面と、ほぼ同じ回転軸で空間の中で回転しつづけようとする。
歳差運動
回転軸に方向をかえようとする外力がはたらくと、外力の方向に対して垂直の方向に軸がふれる。このふれは、回転体の角運動量と、外力をあわせてできた力によっておきる。これを歳差運動という。
歳差運動の身近な例としては、自転車の車輪をまわすあそびがある。輪を回転させて軸の向きを変えようとする場合、その方向におせばよいと思いがちだが、加えた力に対して垂直に回転軸のふれがおきるわけだから、まげたいと思う反対方向にたおせば、輪軸は方向をかえることになる。
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これを読んでもさっぱりわかりませんでした。ところが、この3種類のコマを回してみると、上コマと下コマは対称であることがわかります。今までコマの運動が分かりにくかったのは非対称であったからです。そして、重力や起き上がる力を受けなければ、マクスウェルのコマのように慣性の法則で同じ方向でいつまでも回り続けようとすることが分かりました。回転体(コマ)の慣性の法則はイメージとしてつかみにくいのですが、こうやって実験してみると、よく分かります
さて、次に重心が上にあるコマ(上コマ)は、どうして倒れないのかと前から不思議に思っていたことを考えてみました。慣性の法則があっても、重力で下に引かれているわけですから倒れてもよさそうなものです。ところが倒れないのは、歳差運動をすることで倒れる向きを常に変えているからなのだろうと思いました。 『では、その歳差運動はなぜ起こるのか?』 重心が下にあるコマ(下コマ)と上コマを比べてみると、歳差運動はまったく逆になります。つまり、まったく逆の力が働いていることになります。上コマは軸を下に倒そうとする力です。では、下コマは?
そうすると、こちら側(A)へ倒れることになります。これが連続的に起こり、右回りの歳差運動になります。Aの気持ちになれば、自分の方へ倒れながらだと向きを向きを変えるのが少なくてすむといっても良いのかもしれません。