植物が黄金角になる理由

植物ホルモンと黄金比

0、植物はなぜ黄金角を知っているのか

もう14、5年くらい前だろうか。「生き物たちのエレガントな数学」にも書いたが、 植物は黄金角(137.5度)で葉を出現させていくことを確かめることができた。 しかし、植物は分度器を持っていない。いったいどうやってこの角度をもとめているのだろうか。
いろいろ探ってみたが、
「植物がどうやって黄金角で葉を出していくのか?」 は、わからなかった。
本には誰か解いてほしいと書いておいたが、先日ネットを見ていたら、 植物ホルモンの分布によって自然に黄金比が出てきて、 だから黄金角になるということが説明してあった。 生きている間に、この問題の解答に出会えるとは思っていなかった。

そのサイトは、大阪大学の近藤滋先生の「生命科学の明日はどっちだ」
【第14回:全ての植物をフィボナッチの呪いから救い出す】

このサイトに、オーキシン(植物ホルモン)のことが書いてあった。

そして、近藤先生の仮説は
(1) ひとつ前の原基の阻害効果が一定の比率で減衰する(ただし四個以上古いものは無視)
(2) 原基の回転角度は常に一定

(1)は納得。オーキシンの濃度が指数関数になれば、黄金比は自然に出てくる。
ただ、この(2)が気になる。
これは、黄金比を求めるための仮説だ。
でも、二番目の葉原基は180度の所に出現するのが自然である。
そこで、いろいろシュミーレーションをしてみた。

私の仮説は
(1)オーキシンの濃度によって、黄金比で葉原基が出現する
(2)そのまま回数を重ねると、自然に黄金角になる

(1)は、指数関数が自然に黄金比になるにはどういう仕組みであればよいか。
回転角度が一定を仮定しなくても黄金比が出てこないか。
さらに、自然に黄金角が出てくるようになるためには・・・

ということで、(2)になることをエクセルで確かめた。
しかし、実際に(2)を証明するには一週間以上かかった。
証明は困難だったが、今日、8月5日に一般項を見つけ出し、極限を求めることができた。

(2)を数学の言葉で表すと、

漸化式
0=1,F1=p,F2=2(1−p)
n=Fn-3・p+Fn-2・(1−p)
の一般項を見つけ、その極限が0.763932023・・・
になることを証明するという課題である。

漸化式を求めた時点で、それをどう解くかだけだったが、 特性方程式が虚根になったので戸惑っていたが、 計算してみると、大丈夫だった。

植物の葉原基の出現は、自然に黄金角になることがわかった。
15年来の問題がやっと解決できた。


さて、順番に説明していこう。

1、葉原基は順番はオーキシンの濃度によって出現する

この原基の形成には植物ホルモン(オーキシン)が一定濃度以上必要。
このオーキシンはすべての原基が生産しているが、古い原基はオーキシンを吸収するので、古い原基を中心にオーキシンの濃度が下がり、濃度勾配ができる。
このオーキシンは、正確に限定された領域である限られた時間だけ転写を起こすしくみを持っている。もちろん空間的にも正確である。

このオーキシン濃度は時間に対して指数関数的に減少する。
例えば、一定時間のオーキシンの効果は1/γに減少すると考えると、次に時間にはその1/γと考えられる。したがって、これを表にすると、

時間:0  1    2     3     4    ・・・
効果:1 1/γ 1/γ 1/γ 1/γ  ・・・

となる。
葉原基はオーキシンの濃度が一定でないと出現しないが、それは、重ならないように最も遠い所に出現させるためである。
表のように最初の葉原基Pからの濃度効果を1とすると、効果は原基の発生の時間に対して指数関数的に減衰する。その減衰率を1/γとする。
ここで、葉原基の出現の場所を円モデルで表す。それは茎頂部が先端であり、成長にしたがって先端が半球の円錐のになるからである。
から次の葉原基Pは、濃度が丁度同じ点であるので、円の反対側である。PのPの点での濃度を1とする。
次の原基PはPの1:1/γの位置である。さらに、次のPはP=1の1/γ:1/γの位置である。

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 ※「なぜ1:1/γの位置なのか?」
考えてみると、このことは自明ではない。
したがって、以下の論の仮定が全て間違っていることになる。
再考をしたい。
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このとき、1/γ+1/γ=1なので、γの値が求まる。
γ=(1+√5)/2 よって、1/γ=0.618・・・
不思議だが、指数の比になっている時点でγの値が決まる。
以下最も新しい2点を1/γ:1/γ=0.618:0.38で新しい原基の発現を定めていく。
古い原基は大きく成長し、この円環よりも遠ざかるので、影響は無くなる。

以下同様にPは、PとPを1/γ:1/γに分ける位置になる。

2、円弧の長さの極限は黄金角になる

新しい原基が古い原基とさらに古い原基の比=0.618:0.382
の比で出現するとすれば、弧の長さは次の表になる。

弧    :P  P   P   P   P
―――――――――――――――――――――――――――――
弧の長さ: 1   0.618  0.764  0.854  0.673

1/γ=pとすると、PはPとPのp:p=p:(1−p)の比の点になる。
こうやって求めたPの点から弧の長さPn+1を計算してみる。

=1
=p
=(1−p)+(1−p)=2(1−p)
=P×p+P×(1−p)=3p−1
=P×p+P×(1−p)=5−7p
・・・
n+1=の値はどうなるのだろうか?

エクセルでシュミレーションしてみた。
すると、Pn+1=0.7639・・・=2(1−p)に近づいていく。
これは、角度に直すと、180×0.7639…=137.507…となり、黄金角になる。
とすれば、Lim[n→∞]n+1==2(1−p)になることを証明すればよい。

n−2=Pn−3n−2×p , Pn−2n+1=Pn−2n−1×(1−p)
n−2+Pn−2n+1=Pn+1
なので
n+1=Pn−3n−2×p+Pn−2n−1×(1−p)

ここでPn+1=Fとすると、
F=Fn−3・p+Fn−2・(1−p)
また初期条件は、F=1 F=p F=2(1−p)

試しに次の値を計算してみると、
=p+p(1−p)=p+p−p=2p−(1−p)=3p−1
=5−7p

3、漸化式を解いて一般項を求める

Fn+3=F・p+Fn+1・(1−p)
これを変形して
Fn+3−Fn+1=−p(Fn+1−F
ここで、(Fn+1−F)=A、 Fn+3−Fn+1=Bとおく。

=−p・A=2p−1
=−p・A
=−p・A

=p−1
=−3p+2
=B−A=5p−3
=B−A
・・・
n+2=−p・A−An+1
よって、
n+2+p・A+An+1=0
特性方程式をつくると、
χ+χ+p=0  この解をαとβとすると α+β=−1 , αβ=p

n+2−αAn+1=β(An+1−αA
n+2−βAn+1=α(An+1−βA

ここで、さらに、An+1−αA=C、An+1−βA=Dとおく。
=A−αA=−3p+2−αp+α
n+1=β(−3p+2−αp+α)
同様に
n+1=α(−3p+2−βp+β)

  An+1−αA=β(−3p+2−αp+α)
−)An+1−βA=α(−3p+2−βp+β)
―――――――――――――――――――――――――――
   (β−α)A=β(−3p+2−αp+α)−α(−3p+2−βp+β)
=(β(−3p+2−αp+α)−α(−3p+2−βp+β))/(βーα)

一方
  A=F−F
  A=F−F
  A=F−F
   ・・・
+)An−1=F−Fn−1
――――――――――――――――――
   狽`=F−F=F−1
   F=狽`+1

lim[n→∞][n→∞]+1

[n→∞]
   =煤iβ(−3p+2−αp+α)−α(−3p+2−βp+β))/(β−α)
   =1/(β−α)煤iβ(−3p+2−αp+α))−煤iα(−3p+2−βp+β))
   =1/(β−α)・((−3p+2−αp+α)・1/(1−β)−(−3p+2−βp+β)・1/(1−α))
        (1−β)(1−α)=1−(α+β)+αβ だから、
   =1/(β−α)・((−3p+2−αp+α)・(1−α)/(2+p)−(−3p+2−βp+β)・(1−β)/(2+p))
   =1/((β−α)(2+p))・((−3p+2)(β−α)−(p−1)(α−α)+(p−1)(β−β))
   =1/((β−α)(2+p))・((−3p+2)(β−α)−(p−1)(2α+p)+(p−1)(2β+p))
   =1/((β−α)(2+p))・((−3p+2)(β−α)−2(p−1)(α−β))
   =1/((β−α)(2+p))・(β−α)(−3p+2+2p−2)
   =−p/(2+p)

lim[n→∞][n→∞]+1=1−p/(2+p)=2/(2+p)=0.763932023・・・

ということで、Fが=0.763932023・・・に収束するので、中心角は黄金角になる。
これで、植物は自然に黄金角になることが解明できた。
まさに「フィボナッチの呪い」から解放され、ホッとしている。

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