円周の外接正多角形と内接正多角形について

ジオジェブラで実験する

名古屋の林邦英さんから手紙が届き、面白いことを教えていただきました。
「アルキメデスさんは
内接正多角形の周と外接正多角形の周の長さを使って円周の長さを求める方法を示しました。
正96角形の周の長さを使い、
  3・10/71≒3.1408…<π<3・1/7≒3.1428…
を求めました。     ⇒【円周の求め方
内接・外接の各辺の半分と円弧の長さを調べました。
内接―円弧―外接の間の長さを調べると、
約1:2であることがわかります。」
確かめてみましょう。アルキメデスの例で言うと、
  3.1415-3.1408=0.0007:3.1428-3.1415=0.0013
言えそうです。林さんは「円周率に関する簡単な実験」と言っています。
面白そうなので私もジオジェブラで実験をすることにしてみました。
まず図を作ってみました。この時、点Cを動かして角度を小さくすることができます。
さらに、Bも動かして半径を変えることができます。この図は拡大できます。
そして、この間の長さを求めて比を出します。CをBに近づけると、確かにこの比が1:2に近づいていきます。


なぜでしょうか。
最初、式を使って証明しようと試みましたが、うまくいきません。
そこで、グラフに表してみました。(↓下図)
点線の円の半径を1として三角関数を用いて表すと(右図)、この比がとても簡単になります。
間の比は、x-sinx:tanx-x=(x-sinx)/(tanx-x) となります。
グラフでは、Bを0に近づけるとy=2に近づいてきます。


x=0で y=2と見えます。

このようなことにどうやって気がつくのでしょうか。
なお、この図から
0<sinx<x<tanx から 1>sinx/x>cosx  (∵sinx=tanx・cosx>x・cosx)
1>sinx/x>cosxから、lim[x→0](sinx/x)=1 ということがわかります。

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この後、林さんと手紙を交わしました。
林さんは、「1:2になるということから、三角関数を級数展開するという発想が出てきた」と主張されていました。
確かに、ここには三角関数の級数展開の芽が含まれています。

その級数展開を使うと、なぜ1:2になるのかがわかります。
 sinχ=χ−χ3/3!+χ5/5!−χ7/7!+・・・ 【sinχの級数展開のし方
 tanχ=χ+χ3/3+2χ5/15+17χ7/315+・・・
(x-sinx)/(tanx-x)を求めると、
 (tanχ−χ) = χ3/3+2χ5/15+17χ7/315+・・・
 ―――――   ――――――――――――――――――
 (χ−sinχ) = χ3/3!−χ5/5!+χ7/7!−・・・
χ3 で約分すると、
 (tanχ−χ)/(χ−sinχ)=(1/3+2χ2/15+17χ4/315+・・・)/(1/3!−χ2/5!+χ4/7!−・・・)
 lim[x→0](tanχ−χ)/(χ−sinχ)=(1/3)×(3・2/1)=2

とてもすっきりしました。
このことは、「χ→0ならGK(円弧)がsinxとtanxの間の1:2の所にある」ということを示しています。
つまり、(2sinx+tanx)÷3≒円弧ということです。

ところが、林さんはこれで終わりません。
このsinとtanの関係をさらに追求するのです。
それは、sinx=S、tanx=Tとおいて、(S+T)÷2や(3S+T)÷4の値を調べることでした。
上記の(2S+T)÷3が、だんだん円弧に近づいてゆくのなら、半分の(S+T)÷2はどうなるのだろう。
(3S+T)÷4はどうなるのだろうかと。この類推は誰も思いつかない発想です。
結論だけを書くと、
χを0に近づけると、(S+T)÷2⇒2tan(x/2)。 そして、(3S+T)÷4⇒2sin(x/2) となる
林さんはこのことを10桁の小数を見て気づいたのですが、(αを1.5,1,0.5 にして、数値を比べてみましょう)
ここでは図で表してみます。


数値を見ると微妙な違いですが、グラフを拡大してみると確かに違います。
これはとても面白い!
なぜこのような現象が起こるのでしょうか。とても不思議です。

そこで、林さんの手紙を解読するために、半角の三角関数についての図を作成してみました。
まず、元の角度での差CLと半角になった場合の差DOの比を調べます。
これは級数を使うと、1:8ときれいに出ます。(左上の式)
林さんによると、証明のポイントは、χ→0の時、C'H=2D'K と B'C':C'C=1:2 であることを利用すること。


これまたすっきりしました。
(3S+T)÷4⇒2sin(x/2) の方も同様に証明できます。

円周率にもまだまだ不思議なことが隠されているのですね。
そういえば、アルキメデスの方法だと円周率はなかなか近づきませんが、この(2S+T)÷3を使うとぐっと近づきます。
⇒【円周率の求め方

なお、図を印刷したい場合は、右上の三本線のアイコンをクリックすると印刷プレビューが出ます。
アルキメデスの積尽法

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