%7 【本の話】
『計算機もブラックボックスだ』
この計算機もブラックボックスの一つです。たとえば、2を入力します。そして、×と=を押すと、4になります。さて、このキーはどんな働きをしているのか当ててみてください。
・・2倍する働き。
もしそうなら、3を入力すると?
・・6になる。あれ! 9だ。
では、4を入力すると?
・・16です。
この×=はどういう働きをしているの。
・・2回かける働き。
・・2乗する働き。
・・平方する働き。
・・正方形の1辺から面積を出す働き。
・・Y=χ×χ
次は、√というキーを調べます。このキーの働きを知っているかい。
・・知りません。
たとえば、4を入力して√を押すと出力は2になる。どういう働きをしている。
・・2で割る。
じゃ、9を入力すると、4.5ということ? はい、√を押すと、残念でした。3です。
・・?
25を入力すると?
・・5だ。
その通り。ところでどうやって計算したの。
・・解らない。
・・2乗して25になる数を求めました。
では、この√の働きは。
・・2乗(平方)の反対の働き。
・・2回かけて16になる数を出力する働き。
・・正方形の面積から1辺を出す働き。
この√の働きを平方根を求める働きといい、√のことをルートといいます。
では、2を入力して√を押すとどんな数が出力されますか。
・・えーと、1と2の間の数。
・・1.414213562だって。
・・2乗しても2にならないよ。1.999999998になっている。どうして?
(2を入力して、√を押す。
1.414213562と出てくるので、そのまま×=を押す。
すると、1.999999998と出てくる。)
いい質問だなあ。どうしてなのか、考えてみよう。
・・ちょっと、小さかったんじゃないの。
では、1.414213563を2乗してみよう。
・・2.000000001になったよ。これでは大きすぎるんだ。
・・という事は、1.414213562・とまだ続くんだ。
どこまで続くの?
・・無限に続きます。
理由は言えますか。
・・もし、どこかで終わるとすると1か2か3か4か5か6か7か8か9のどれかのはず。これは2乗すると2にならなくてはいけないけど、1を2乗しても1、2を2乗しても4、3を2乗しても9、4を2乗しても6、5を2乗しても5、6を2乗しても6、7を2乗しても9、8を2乗しても4、9を2乗しても1は必ず残る。
だから、2乗しても2には決してならない。そうすると、
どこかで終わるということはないから、無限に続く少数になります。
・・すごい。
これを、2の平方根といい、少数で表わすと正確には表わせないので、√2で表わします。こういう数を無理数といいます。
・・3の平方根は√3なんですね。
『√2がこんな所にある。』
・・√2って、何の役に立つんですか。
よくぞ聞いてくれました。ここに取りい出しましたる更紙には、√2がある。
・・見えませんよ。
では、これを半分に切ってみよう。どうですか、√2が見えましたか。
・・いっこうに。
では、1枚残して、もう一枚を半分にしてください。
また1枚残して、さらに半分にしてください。どんどんやっていくと、何か気がつきませんか。
・・みんな形が同じです。
どこから解りましたか。
・・並べると、相似です。
ここに、√2が隠されているのです。では、はっきりとしてみましょう。まず、この1番大きな長方形の縦の長さを1とします。横の長さはいくらになるでしょう。
まだわからないから、Xとおきます。相似だから比の値が同じということから、1:X=X/2:1という比の式ができます。この式を解いてみて下さい。
・・X=±√2になります。
・・つまり、横の長さは縦の長さの√2倍だったのか。
√2倍ならば、半分にしても必ず元の形と相似形になるのです。
・・それでは、本も√2倍になっているのかな。
『A判とB判』
本の大きさには、AとBの二つの系列があります。A列は、面積1u、縦横の長さの比1:√2のA列0番を基本とし、順次のその長辺を半分にしていったもので、1番から12番まであります。B列は、面積1.5u、縦横の比を1:√2の0番を基本として、やはり1番から12番まであります。自分の持っている本を調べてみて下さい。
・・ワークは、B5判です。
・・教科書は、A5判です。
・・文庫判は、A6判です。
この教科書とワークの間には、面白い関係があります。
・・相似以外にですか。
そう。この二つの本に長さが同じ所があるのです。
・・わかった。教科書の対角線の長さと、ワークの縦の長さが等しい。
では、教科書の横の長さを1とすると、縦の長さは?
・・√2です。
ピタゴラスの定理を使って、教科書の対角線の長さを出してみましょう。
・・1×1+√2×√2=3。したがって、√3です。
つまり、ワークの縦の長さは√3ということです。すると、
ワークと教科書の長さの比は?
・・√3:√2です。
面積の比は?
・・二乗して、3:2です。
・・ワークの方が1.5倍ということか。
所で、製本屋はなぜ、縦:横を1:√2にしたのでしょう。
・・半分にしても形が同じなら、紙を切った時に無駄なく使えるからだと思います。
『新書判と黄金比』
・・先生この本は1:√2とは違いますよ。
これは新書判ですね。新書判は違う考え方で、創ってあります。ところで、ここに長方形が6種類あります。どの長方形が、一番美しいと思いますか。
・・黄金分割の長方形:B判画用紙=17:8
この一番多かった長方形が、新書判と相似な長方形なのです。この新書判は、この長方形の縦を1辺とする正方形を作った時、残りの長方形と元の長方形とが相似になるように作ってあるのです。
・・なんだかややっこしいな。
・・縦を1とし、横をXとする。
・・正方形を作ると、残りの長方形の縦はX−1で、横は1。
・・相似だから、1:X=X−1:1
・・方程式にすると、X(X−1)=1
・・つまり、X×X−X=1
・・解の公式を使って、X=(1±√5)/2
・・正の方は、1.61803395…
面白いことに、1÷1.61803395…=0.61803395…
となる。つまり少数部分はまったく同じなんだ。
・・だって、図で1を引いた残りが0.618…だから当然じゃない。
あっ!そうか。なるほど。ところでこの比は、黄金分割といって、昔から美しい比ということが知られている。
・・ほんとに美しいのかな。
さっき、本当に美しいと感じるのか試してみたが、このクラスは多かったね。
この黄金比は1:0.68(1:1.68でもよい)なんだが、この比がいろんな所にでてくる。この比は名刺やパルテノン神殿、モンドリアンの絵、その他の様々な絵の中にある。夏休みの研究で、絵の中の黄金分割の例を調べてきた、永井さんという生徒がいたよ。正5角形の同じ頂点を通らない2本の対角線も、互に他を黄金分割する。
・・そんなに沢山使われているのか。
参考文献 『黄金分割』柳亮著、美術出版社
『三角定規だってだてに作ってない』
直角二等辺三角形の方は、正方形の半分。もう一つの方は正三角形の半分。従って、60度と30度になる事はすぐ解るだろう。
この二つの三角形の高さが、同じである事は案外知られていない。それを計算してみよう。この2つの直角三角形は、正方形の対角線と正三角形の高さが同じになるように作ってある。
・・知らなかった。
・・本当にそうなの。
直角2等辺三角形の高さを1とすると、正三角形の高さは2になるので、斜辺を底辺とする直角三角形の高さは、1となる。
これを発見したのは藤井君という子で、2つの三角定規を並べていて気がついたという。
・・三角定規もちゃんと考えて作ってあるんですね。
どんな物でも、それなりのわけがあって、作られているもんだ。
『ドラドラエモン』
名付けて、ドラドラエモン。
(ドラエモンの絵を出して黒板に貼る。)
・・ワー、かわいい。
(さらに、半分に縮小した物を貼る。どんどん半分を貼る。)
・・(笑い声)まだあるの?
このことは、前に本の大きさのところでやったけど、半分にしても形は変らない。コピーを使うと、これも簡単にできる。所で半分にするには、縮尺をどれだけにすればいいの?
・・1:√2だから、1÷1.4142=0.7071。
・・0.71倍にすればいいです。
では、この一番大きいドラドラエモンの横の長さを1とすると、次のドラドラエモンの横の長さは√2分の1。さらに次のは?
・・半分だ。
一つおきにとると、
・・1、(1/2)、(1/4)、(1/8)、(1/16)。
・・半分の半分の半分の・・・
これを全部足した、1+(1/2)+(1/4)+(1/8)+(1/16)・・・の答えは?
・・この並べ方を見ると、2だ。
昔から、チリも積れば山となるというけれど、これを無限に足していっても、山にはならずに2となるわけだ。
・・アキレスと亀の話と同じだね。
では、応用。
0.9+0.09+0.009+0.0009+0.00009・・・=いくつになるか
・・0.9999999・・・
これはどういう数。どんどん増えていくの。ある数になるの。
・・どんどん増える。
どこまでも増えるの。
・・いや、1よりは大きくならない。 0.99999・・・<1だから。
違うのだ。実は、0.999999・・・・・=1なんだ。
・・そんなはずはない。証拠を見せて。
たとえば、5つのりんごを5人でわけると一人何個か。その答は1。しかし、もう一つ答がある。それは、
0.99999999999999…
5 )5
0
5 0
4 5
50
45
50
だから、1=0.9999999999・・・
・・おかしいよ。何故、わざわざ9で割るの。1で割切れるじゃない。
りんごにもいろいろあって、青いのや赤いの、酸っぱいのや甘いの、単純には割切れない。こっちの方がいいとか、おいしそうだとか色々文句がでるだろう。つまり、一人に一個というように簡単には分けられない。だから、限りなく0.999999・・・なのだ。
・・納得できないなあ。
じゃ、証拠の第2弾。0.999999・・・を10倍すると?
・・9.999999・・・です。
9.999999・・・−0.999999・・・=
・・9です。
10倍して引いたら9になる数は?
・・10а−а=9だから、えーとа=1だ。あれ?
・・ごまかされているよ。
しかたがない。証拠の第3弾。三分の一はいくつ。
・・0.3333333・・・です。
0.33333333・・・×3は
・・0.9999999・・・です。
3分の1の3倍は。
・・あれ、1だ。0.9999・・・は本当に1なんかなあ。
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