フーリエ展開の学び方

具体的に・現象として・つかむ

1、フーリエ展開を知りたいと思う動機

S:テーラー展開で関数を級数に表したのですが、「展開するということ」をどうして考えたのだろうか?
S:ベキ級数にすると微分や積分が簡単にできるからじゃない。
S:確かに簡単だけど、でも無限級数だから・・・。無限か・・・この現象もよく考えると面白いね。

⇒≪ジオジェブラ・ブック≫ ベキ級数からオイラーの公式まで

S:展開というと中学校では因数分解の逆なんだけど、式だけでなく関数も展開できるというところが面白いんだね。
S:ところで、フーリエ展開という理論があると聞いたけど、これも同じなのかな。
S:三角関数の級数でどんな関数でも表わせるらしい。
S:そんなはずはないよ。だって三角関数は周期があるよ。だからy=xを表すことは無理だよ。
S:どんな関数でも三角関数で表わせるなんて面白そうじゃない。

S:でもさ、そういう理論って、たいてい定義とか定理とか証明とか、抽象的でわかりにくいんだよね。
S:私なんかイメージが沸かずにすぐにあきらめちゃう。
S:頭のいい人はそういう抽象的なこともわかっちゃうんでしょうね。
S:僕らでも学べる方法はあるのかな。
S:学んでも使えないとだめでしょう。
S:そういえばあなたはいつも「理屈はいいから公式ややり方だけ教えてくれれば良い」と言っていたね。
S:応用をするためには、具体的な例が必要だよね。それを使えばいいんじゃない。
S:具体的な現象に当てはめて考えるんだね。それならやれそう。

2、フーリエ展開とは何か

S:まず、フーリエ級数を実際に作ってみる。すると、現象として実感できる。
T:それはいい考えだ。フーリエも方形のグラフになる三角関数の級数を見つけて、もしかしたら・・・と考えたらしい。
 では例えば、cos(χ)/1+cos(2χ)/4+cos(3χ)/9+・・・+cos(kχ)/k2 を作ってみよう。
S:なぜ、()の中がだんだん増えていくんですか?
T:いい質問だね。それもこの図で考えてみよう。
S:この[Sequence]というコマンドを使うと、級数が簡単にできるんですね。
S:和も[Sum]でOKだ。



S:緑のグラフを足したのがオレンジのグラフなんですね。どんどん足していくとグラフが決まってくるような。
S:不思議だな。でも、やっぱり周期関数だよ。
S:2χ,3χ・・・となっていくと、周期が短くなっていく。
S:周期が短くなっていうということが大事なんじゃないかな。

S:この和のグラフはなんだか二次関数のような。
T:上にある[二次関数]をチェックしてみよう。このグラフの二次関数にとても近くなる。
S:でも、周期があるよね。
S:ということはその周期の範囲でどんな関数でも表すことができるということか。

S:ところでちょうどy=χ2となるフーリエ級数はできないんだろうか?
S:そうだよね。ぴったりy=x2になればかっこいいな。
S:つまり、三角関数の級数の和から関数を求めたけど、逆に、関数から級数を求めることはできるのかということだね。

3、逆を考える

T:それ素晴らしい。フーリエもそう考えた。「関数からフーリエ級数を作るにはどうしたら良いのか?」と。
S:逆を考えるって大事なんだ。でも、そう簡単にはいかない。
S:この場合、マクローリン展開のアイディアを使えば?
S:マクローリン展開は「ある関数がベキ級数で表されるとすれば」と仮定したよね。
S:そうか。「三角関数の級数で表されるとしたら」と仮定する。
T:いい方向ですね。これを最初に考えたのは大変だったと思うけど、現在では今までの知見があるからそれを利用できる。
 でも、その時に自分が納得できるような「問い」を持つことが大事。

 ある関数f(x)が、f(χ)=a0+a1cos(χ)+b1sin(χ) +a2cos(2χ)+b2sin(2χ)+・・・と表されるとしよう。

 こう表すと、これらの係数「kやbkをどう求めたらいいのか?」という問題になる。
S:なぜこういう級数になると思ったのかな?
T:実はこれが大事なことだったんだ。だけど、それはうまく言えない。 とりあえずいろいろな級数で確かめてみるとこの式が出てくることが実感できるとしておこう。      ⇒ジオジェブラ【フーリエの冒険(いろいろなフーリエ級数)

S:マクローリン展開の時は微分してその係数だけにするために0を代入したよ。
S:同じことができないかな。sinとcosは微分すると互いに逆だから・・・
S:でも他の係数が消えないね。
T:まず、a0を求めてみよう。どうしたらいい?
S:さっきの関数のグラフで考えてみよう。a0は0だ。つまり、真ん中にある・・・あれ、
 三角関数の和で出来ている関数は、必ず面積が0になるんじゃないかな。だって、面積もそれぞれの和でしょう。
S:そうだよね。三角関数はχ軸と交わるところで対称だから周期の範囲では面積は0だ。
S:ということは、この関数の右側を積分してやると、sinやcosの部分は全部0になるということだから、 f(x)の積分で出てくる値はa0だけということだ。
 さっきのグラフだとa0=0だけど、y=χ2に当てはめると、
∫f(χ)dχ=∫a0dχ+∫a1cos(χ)dχ+∫b1sin(χ)dχ+ ∫a2cos(2χ)dχ+∫b2sin(2χ)dχ+・・・
∫f(χ)dχ=∫a0dχ=a0∫dχ=a0[χ](−π≦χ≦πの定積分)=a02π

だから、a0=∫f(χ)dχ÷2π=∫χ2dχ÷2π=[χ3/3](−π≦χ≦π)÷2π=2π3/3÷2π=π2/3

S:この面積が0となることは利用できるんじゃない。
S:そうか。これを使えば、他の係数も求められるよ。
S:でも、面積を求めると全て0になるんだから駄目だよ。
S:だから面積が0にならない工夫をすればいいんだ。



S:この上の図のように二乗すればいいんだ。三角関数の二乗の面積はπだ。
S:具体的にやってみよう。a1を求めるにはどうしたら良いの?
S:cos(x)をかけるとa1cos(x)2となる。
S:でも、そうすると、他のsin(x)やcos(2x)にも影響がでるよ。
S:大丈夫。上のスライダーを動かしてみて。sin(x)cos(x)やcos(2x)cos(x)は面積が0になってしまう。

4、予測をするために具体的に考える

S:まとめてよ。
S:a1を求めるためには、f(x)にcos(x)をかけて周期の範囲で積分をする。
 そうすると、cos(x)の分の面積が出る。
S:それを2πで割ってやるとa1が求まる。
S:いや、これもちゃんと積分をしなくっちゃ。
 右側の面積は、 1∫cos(χ)2dχ=a1[χ/2+sin(2χ)/4](−π〜π)だから、a1πだ。
S:a0は2πで割ったけど、a1はπで割るんだね。anも同じかな。

S:でも積分をしたりとてもめんどくさそう。
T:この時威力を発揮するのがジオジェブラ。積分を簡単に求めてくれる。


S:ぴったりy=χ2になりますね。

5、法則を見つけ応用する

S:ところで、前から疑問だったけど、元の式はsinとcosが入っていたのにcosだけの式になっている。sin(nx)の係数はなぜ0になるの?
S:上のグラフで[sin(nx)]をチェックしてみて。
 χ2にsin(nx)をかけても、左右対称だから面積は0だよ。
S:そうか、sinは原点で点対称だからx軸よりも上と下の面積が同じになる。
S:この場合は、y=χ2がy軸と対称だから言えるけど、そうでなかったら、sinの係数bnも計算しなくちゃならないんだ。

T:こうやっていろいろ試していると、問いが出てくる。その問いを考えていると、法則が見つかる。こうやって見つけた法則は必ず応用ができる。
S:じゃあ、このフーリエ展開はどういうところで応用できるの?

全体の流れ⇒ジオジェブラ【フーリエの冒険


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