フーコーの振り子の理解の仕方

「フーコーの正弦則」を導くために

1,フーコーの振り子

孫:科学館でフーコーの振り子を見たよ。



爺:ああ、大きな振り子が吊り下げられているやつだね。
孫:あれって大きいから振り子の向きが変わらないだよね。でも地球は動いているから地面の方が変わるということでしょう。
爺:例えば?
孫:北極にこの振り子を持っていくと、振り子の揺れる向きは変わらないのに、地面が回転するから振り子の向きが変化しているように見える。
爺:北極までこの振り子を持っていくなんてさすがだね。
孫:それから今度は赤道に持っていくと、振り子の向きを北にすると、今度はいつも北を向いていて振り子は変化しない。
爺:フーコーさんはこの振り子で地球が自転していることを証明したんだね。
孫:で、疑問が出てきたんだ。北極だったら24時間で振り子は一回転するし、赤道だったら回転しない。
 だったらその間の緯度だったらどうなるのだろうか?と
爺:もっと詳しく説明してみて。
孫:北極というのは北緯90度でしょう。そこだと「24時間で一回転」。赤道は北緯0度。そこだと「変化0」。
 突然変わるわけではないだろうから、少しずつ変化しているに違いないと思うわけ。
 だから、例えば日本だと一回転するのに何時間かかるのだろう?
爺:そういえばどうしてだろう?
孫:では、どのように変化するのだろうか、爺がいつもやっているようにシュミレーションしてみよう。

2,フーコーの振り子のシュミレーション1

 まず緯度を設定する。次に北の方に接線を引く。この接線を振り子の方向と考えよう。
 次に同緯度の円を描いて、そこに点を作る。この点が地球の回転に合わせて動く。

孫:最初の向きが変わらないから・・・。あれ?  だんだん上向きになっていく。
 振り子は水平になるはずだから、上向きを地球の中心に射影しよう。

 この図では反対側に来た時に角度が元にもどってしまう。
 北極だとちゃんと一回転したのに。
 なぜだろう?
 しかも地球の反対側に来た時から角度がだんだん少なくなる。地球の自転は一定なのにおかしい。
 これはどう考えたらいいのだろう?

爺:この角度の変化が実際の角度に合っていないんだね。
孫:この角度は小さいと水平だけど、大きくすると水平に成らない。直接角度を測るのおかしいと思う。
 地面に対して射影をしたけど、元の角度の方が近いような気がする。
爺:そういえば「フーコーの正弦則」というのがあったね。振り子の回転周期が求まる式があるよ。
  T=24/sin(緯度
孫:この式とも会わないよ。何かおかしい。

3、円錐をかぶせる

爺:ウィキペディアを見たら、円錐をかぶせるとわかり易いと書いてあったよ。
孫:そうか。これだと北極への地平線のイメージがしやすいね。そして地球の回転もイメージできる。

孫:まず、円錐をかぶせた時の緯度と円錐の頂点の角度を求めなくてはいけない。
 地球に接する円錐は接点が緯度の時、頂角の半分=緯度となる。へー、これすごいね。
 これで緯度や経度だけでなく地平線までイメージできる。

 ついでにこの円錐の側面の扇形の角度も求めてみよう。
 扇形の半径はEF。円周=2πEF。底面の円の円周はEJ。円周=弧=2πEJ。
 ところで、EJ=sin(緯度)×EFだから、比は1:sin(緯度)になる。
 とすると角度は、1:sin(緯度)=2π:弧の角度
 弧の角度=2πsin(緯度)
爺:これもきれいだね。しかも「フーコーの正弦則」と関係がありそう。

4,「フーコーの正弦則」を導く

孫:あれ、この円錐の頂点と振り子の方向のなす角度は平行線の錯角だよ。
爺:だからこういう円錐を考えたんだね。
孫:とすると、これからは振り子の方向と北の方向とのなす角度を円錐の頂点と弧のなす角度に置き換えることができるわけだ。
 地上に立って考えると変化の角度はとても小さい。だからこうやって無造作に角度を大きくすると違ってくるんだ。
 今まで北の方向と振り子方向の角度で考えていたので、かえってわからなくなっていたんだ。
 その上、元の方向を地面に射影したけど、それでは大きくずれてくる。
爺:すごいぞ。爺にもだんだんわかってきた。

孫:地球は弧にそって動いている。だから、小さな弧EFで考えなければいけない。
 小さな弧EFで考えると角度の変化と扇形の∠EKFは同じと見なしていい。(図のように平行線の軌跡はやはり円を描く)
 そして、この微小な角度の変化の積み重ねが振り子の変化だから、振り子の変わる角度の積み重ねはこの円錐の扇形の角と等しくなる。
 つまり微分(小さな変化)と積分(その積み重ね)で考えなくてはならないのだ。
爺:なるほど。振り子の向きと北との小さな角度の積み重ねは、直接の角度ではなく円錐の扇形の角度になってくるというわけだね。

孫:それを北極での様に実際の角度で表そうと考えた所が間違いだった。
 振り子の角度の方を見ると積算がわからなくなるけど、円錐の弧のなす角度で考えると積算が見えてくる。
 そして地球が一回転すると、振り子の角度の積算は円錐の扇形の角度になる。
 つまり、地球が一回転するたびに振り子は扇形の中心角を回転することと同じなる。(つまり360°ではない)
 しかもこの扇形の角速度(振り子の角速度)は地球の自転と同様に一定になっている。

 そして、24時間で扇形の角度を変化するのだから、360度だと何時間かかるか比例で求まる。
   1:sin(α)=x:24h
   x=24h/sin(緯度)

爺:これは「フーコーの正弦則」を導いたことになるよ。

孫:やっと求めることができた。
 この問題は実に難しかった。まだ完全に理解していないかもしれない。

爺:こうやっていろいろ試しているとおかしいことに気がつくだろ。
 そこで図を修正する。つまり考え方(思い込み)を修正する。
 さらに図を描くだけではなく、こうやって文章を書くと気づきが出てくる。
孫:こうやって少しずつ理解が深まってくるんだね。


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