「二次方程式の解の公式」でディベート

 ちょうど二次方程式をやっています。ところがこの頃困っている事があるのです。

 それは、夏休み中に塾で解の公式を覚えた子が、それ以外のやり方を受けつけないのです。最初に出したアル・クワリズミの問題も解の公式を使って解く始末です。完全平方のやり方は「どうしてそんなめんどくさい方法でやらなければならないのか。」というし、完全平方も何が何だかわからないと最初から受けつけません。

 そういった子がクラスに4,5人いるようなのです。仕方がないので、解の公式でやっても否定せずに「今やっているのは、解の公式を導き出す為だからね。」と言っています。でも、解の公式を単なる受験のために覚えるだけのものにしたくはありません。現実はそうなってしまっているのですが、人類の文化としての解の公式もつかんでほしいのです。

 今までも始めから公式を使う子はいたのですが、その子たちは学習を進めていくと、「塾ではわからなかったけど、解の公式をどうやって作ったのかわかった。」と言っていました。今回の子たちは、始めから公式しか受けつけないのです。

 そこで、次のような作戦を考えました。題して

「解の公式VS田んぼシェーマ(完全平方)どっちがいい?」

 今ちょうどTTをやっているので、その先生との論争から導入です。F先生が解の公式派、私が完全平方派です。

F :二次方程式なんて解の公式さえ覚えておけば良いのではないですか。
上村:そう言えばそうだよね。解の公式さえ覚えておけば良いわけだから、
   めんどくさい事やわからん授業をしなくてもすむから時間もかけずにすみますねぇ。
F :みなさんもそう思いませんか?
S1:じゃ何のために今までわからん授業をやってきたんだよ。
S2:公式のわけだって大事だよ。
上村:始めから公式があったわけじゃないもんね。
F :入試では公式さえ覚えておけば良いんじゃありませんか?
上村:そうですかねぇ。調べて見んと・・・。
F :ぼくなんか、公式を忘れていましたよ。使ったことなんかないですよ。
S :えーっ! じゃ、何のために二次方程式をやるんですか?
上村:これは面白い。これをディベートでやりませんか。
S :ディベートって小学校でやったやつ? やっても良いよ。
上村:では、グループを作るよ。・・・
(クラスの六つの班を3つに分け、賛成派、反対派、審判に立候補して決定。)
上村:さっそく

調査しよう。・・・

(解の公式派)

解の公式や二次方程式が実際にどこで使われているのか調べる。
高校入試問題を調べる。
コンピューターへのプログラムの仕方を調べる。
先生方、家族にインタビュー(解の公式を覚えているか、公式で充分か?)

(完全平方派)

先生方、家族にインタビュー(二次方程式は、解の公式を覚えておけば良いと思いますか?なぜ?)
二次方程式の歴史の調査
高校生に調査(解の公式なんかすぐに忘れる)

ディベートの論点の予想(立論する)

(解の公式派)

簡単、便利、早い、余分な事に悩まなくて良い、計算機でやれる、入試はこれで充分
コンピュータは二次方程式を解けるから、計算は機械に任せる。

(完全平方派)

計算機でやれるから頭を使っている事にならない。覚えたのはすぐに忘れる。
公式を考え出すことが大切。違った問題が出たら困る。

調査は主に先生方に対してのインタビュー
4つ切りの画用紙にまとめる

ディベート

解の公式派の立論

反対派の立論

まとめ

 討論では、いろいろな意見が出てあっという間の一時間でした。その中で、普段の授業ではほとんど寝ているH君は賛成派で大活躍。彼は「僕みたいに頭の悪い子にとっては、解の公式を覚えるぐらいだったらできる。だから公式の方が良い。」と力説しました。この意見に対して反対派は反論できず、公式派の勝利に大きく貢献したのです。彼はその後も意欲的に授業で発言をしています。
 二次方程式がどういうところで役立っているのかは、子ども達の調査にはありませんでした。

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