sの求め方

「階差0項数列」を使って、数列の一般項を簡単に求める方法

 林邦英様
 お手紙ありがとうございました。今まで、狽2や狽3を苦心して求めていたのですが、こんな簡単な方法があるとは知りませんでした。ただ、私は理解するのが遅くて、わかるまで一週間も かかってしまいました。でも、とても面白いテーマで十分に楽しむことができました。私なりにまとめてみたことをお知らせします。
(ここで紹介する方法は、名古屋の林邦英さんから教えていただきました。林さんは郵便局に勤めながら数学をやってみえる方です。)

1,狽sの求め方は?

婆(k=0→n)=S1(n)=0+1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+…+n=n(n+1)/2=n2/2+n/2
2(k=0→n)=S2(n)=02+12+22+32+42+52+62+72+82+…+n2=1/3n3+1/2n2+1/6n
3(k=0→n)=S3(n)=03+13+23+33+43+53+63+73+83+…+n3=1/4n4+1/2n3+1/4n2
4(k=0→n)=S4(n)=
5(k=0→n)=S5(n)=
  …
k(n)=
  …
これを簡単に求める方法があるというのです。(今まで苦心して求めていました。【パスカルの三角形】)


2,階差0項数列に注目!

 まず、これらの和数列を階差数列で表します。そして、階差数列の0項目に注目します。この「階差0項数列」はその元の数列を一意に表現しています。ですから、この表現の法則さえわかればもとの数列の一般項を求めることができるのです。

 数列の和を和数列と考えると、次のように表されます。

0  0+1  0+1+2  0+1+2+3  0+1+2+3+4  0+1+2+3+4+5…階差数列をとります。

 0  1  3  6 10 15 21 28 36 45 55 …婆(k=0→n)
0  1  2  3  4  5  6  7  8  9 10  …どんどん階差をとっていきます。
 1  1  1  1  1  1  1  1  1  1   …さらにとると、
  0  0  0  0  0  0  0  0  0    …ここでストップ。

 この時注目するのが左に斜めに並んだ数列。[0 1 0]です。これは、自然数列の「階差0項数列」になります。そして、その右の数列、[0 1 1 0]が自然数の和数列の階差0項数列となります。
 この階差0項数列は何を表しているのでしょうか。


3,階差0項数列は、数列を一意に表す

 階差0項数列を適当に決めてみましょう。
 例えば、[0 1 2 0]とします。どんな数列ができるのでしょうか。今度は階差とは逆に、下から上に作っていきます。

0  1  4  9 16 25 36 49 64 81 100 … (3)できました。
 1  3  5  7  9 11 13 15 17 19 …  (2)どんどん和分をとっていきます。
  2  2  2  2  2  2  2  2  2 …   (1)2を足していきます。
   0  0  0  0  0  0  0  0 …

自然数の2乗の数列ができました。
どうやら、この0項数列はある数列を一意に表しているようです。
ここで、この0項数列と一般項を比べてみます。

[0 1 0] ⇒ n
[0 1 2 0] ⇒ n2
[0 1 6 6 0] ⇒ n3です。
では、
[0 1 1 0]⇒?  この一般項は、n2/2+n/2 です。これは、n2とnからできています。つまり、この0項数列は線形性を保っているのではないかと予想できます。調べてみましょう。

[0 1 0]+[0 1 0]=[0 2 0] ⇒ n+n=2n
[証明]
0+0  1+1  2+2  3+3  4+4  5+5    …2n
  1+1  1+1  1+1  1+1  1+1  1+1   …2
   0+0  0+0  0+0  0+0  0+0  0+0 …0

[0 1 0]の階差数列をそのまま足せばいいわけですから、この加法は成立します。
加法性が成り立つということは、直感的にスカラー倍も成り立つことが予測できます。

nが一次の場合は一般に、an+b⇒[b a 0] となります。

b a+b 2a+b 3a+b  4a+b  5a+b … an+b
 a  a   a   a   a  …
  0   0   0   0  …

次数の違うものはどうでしょうか。[原項 1次 2次 3次…]

[0 1 2 0]+[0 1 0]=[0 2 2 0] と計算できます。実際に確かめてみると、

0+0  1+1  4+2  9+3  16+4  25+5 …n2+n
  1+1  3+1  5+1  7+1   9+1   …2n+1+1
    2   2   2    2      …2
      0   0    0        …0

となり、確かに成立しています。
そうすると、今度は階差0項数列から一般項を求めることができるはずです。例えば、

[0 1 1 0]=[0 1 2 0]÷2+[0 1 0]÷2 ですから、
一般項は  =n2/2+n/2 となります。

ここで問題は、n4やn5の階差0項数列を求めなければならない点です。何か法則が見つかるはずです。

4,狽s数列を並べてみよう
(A)
 0  1  3  6  10 15 21 28 36 45  …狽氏1/2n2+1/2n
0  1  2  3  4  5  6  7  8  9 10  …n
 1  1  1  1  1  1  1  1  1  1   …1
  0  0  0  0  0  0  0  0  0    …0
(B)
 0  1  5 14 30 55 91 140 204 285 385…狽2=1/3n3+1/2n2+1/6n
0  1  4  9 16 25 36 49 64 81 100  …n2
 1  3  5  7  9 11 13 15 17 19   …2n+1
  2  2  2  2  2  2  2  2  2    …2
   0  0  0  0  0  0  0  0     …0
(C)
 0  1  9  36 100  225 441 784   …狽3=1/4n4+1/2n3+1/4n2
0  1  8  27 64  125 216 343 512  …n3
 1  7  19  37  61  91 127 169 217 …3n2+3n+1
  6  12  18  24  30  36  42  48   …6n+6
   6  6  6  6  6  6  6    …6
     0  0  0  0  0  0  0   …0
(D)
 0   1  17  98  354  979 2275    …狽4=1/5n5+1/2n4+1/3n3-1/30n
0  1  16  81  256  625 1296 2401  …n4
 1  15  65  175  369  671 1105  1695…4n3+6n2+4n+1
  14  50  110  194  302  434  590  …12n2+24n+14
    36  60  84  108  132  156    …24n+36
     24  24  24  24  24     …24
       0  0   0   0       …0

これでは、計算が大変です。何か法則はないでしょうか。

(1)nk-1の階差とnkの階差との間には、nkを1/k倍して微分するとnk-1になる関係がある。
  どの次数の階差の一般項もこの様になっている。ただし、定数項は0とする。
  例えば(B)を1/2倍して、微分すると(A)になる。

(2)nk-1の階差0項数列を和分してから、[0 a*1 b*2 c*3 d*4…]とすると、nkの階差0項数列を作ることができる。
 例えば、n=[0 1 0]→[0 1 1 0]→[0 1 1*2 0]=[0 1 2 0]=n2
    n2=[0 1 2 0]→[0 1 3 2 0]→[0 1 3*2 2*3 0]=[0 1 6 6 0]=n3  表にすると、

 一般項      階差0項数列      操作
  n       0   1  0
        0  1   1  0    ← 和分をとる。
  n2     0  1   2  0    ← [0 ×1 ×2 0]
       0  1  3   2  0  ← 和分をとる。
  n3    0  1  6   6  0  ← [0 ×1 ×2 ×3 0]
      0  1  7  12  6 0 ← 和分をとる。
  n4   0  1 14  36 24 0 ← [0 ×1 ×2 ×3 ×4 0]
            ・・・・・
これで、簡単にnkの階差0項数列を作ることができます。


5,階差0項数列から一般項を求める計算

(1)から求める方法…積分をすればより高次の一般項が求まる。
  微分ができるので、逆に積分すれば求まる。ただし、定数項は0で、係数をk倍する必要がある。
  また、各項の係数の和は1になる。

(2)階差0項数列から一般項を求める方法…n2 n3 n4 n5の階差0項数列を使えば求まる。

 この方法が実にシンプルで簡単なんです。
例えば、狽2を求めてみましょう。
これの階差0項数列は、(B)より[0 1 3 2 0]となります。
これは、次数が3次ですから、n3とn2とnの多項式となります。
2の0項数列  [0 1 3 2 0]         [0 1 3 2 0]
 n3の0項数列  [0 1 6 6 0]×a→a=1/3 −[0 1/3 2 2 0]
                        [0 2/3 1 0 0]
 n2の0項数列  [0 1 2 0 0]×b→b=1/2 −[0 1/2 1 0 0]
                        [0 1/6 0 0 0]
 n の0項数列  [0 1 0 0 0]×c→c=1/6 −[0 1/6 0 0 0]
                        [0 0 0 0 0]
したがって、狽2=1/3n3+1/2n2+1/6n

同様に、
3=[0 1 7 12 6 0]=1/4n4+1/2n3+1/4n2
4=[0 1 15 50 60 24 0]=1/5n5+1/2n4+1/3n3-1/30n

この階差0項数列はとても面白いので、等比数列や微分積分にも拡張できるのではないかと思っています。ざっとこの様な理解で良いのでしょうか。ご指導のほどよろしくお願いします。2008.3.22

【問題】このやり方で、次の数列の一般項を求めてみよう。

0  1  4  10  20  35  56
 1   3  6  10  15  21
   2  3  4   5  6
    1   1  1   1
      0  0   0

つまり、三角数の和を求めることです。

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