エッシャーのように絵を描こう

しきつめ図形からエッシャーの絵へ

 エッシャーの絵を見ていると、色々なアイディアが浮かんできます。蜂の巣や三浦折り、タイル等、面白いことが出てきました。これらは「しきつめの幾何学」という数学教育における一分野になっています。

 10、エッシャーの絵  (1991.3)『蜂の巣はなぜ六角形か』
     『平面をうめる…しきつめの数学』『三浦折り』『空間を覆う正多面体』

 11、左官さんの数学  (1991.3) 『タイルはりと内接四角形』

 37、絵と数学(ルネサンスの数学)――透視図法は世界をどう変えたか――(2001.7)『透視図法の原理』

1,しきつめの幾何学

 平面を同じ形でしきつめていくというアイディアは、芸術だけでなく数学的にも面白いテーマです。これは古くから研究されていますが、様々な発展があり、現代でも新たな発見がなされています。平面を隙間なくしきつめることのできる形を平面充填形といいます。

平面充填形→ウィキペディア(Wikipedia)

 今までは、エッシャーの絵から図形(しきつめの幾何学)の学習をしてきました。ここでは、しきつめの幾何学からエッシャーの絵を描くという逆の道をたどってみたいと思います。

 幾何学は形の性質を扱います。形も面白いのですが、美術としての絵を取り上げてみようということなのです。さて、どうやったらエッシャーの絵を描くことができるのでしょうか。
 形と絵は密接な関係があり切り離すことはできません。やはり形が決まらないと絵が描けないのです。適当な形を作ってから絵を描くという方法もあります。とても想像力を必要としますが、その場合も、まず形をどう造るのかという問題が出てきます。
 できたら、形を自分のイメージするモノに近づけたいのです。自分のイメージする形を簡単に造る方法はないものでしょうか。

 そこで取り上げるのが正四面体なのです。

2,正四面体を展開する

 昨年、郡上で秋山仁教授の教育講演会がありました。その時、秋山教授から教えてもらったことがあります。それは、正四面体を展開すれば、しきつめ図形になるということです。
 この正四面体を使って、エッシャーのように描くことが簡単にできそうだと気がつきました。その方法を一緒に考えてみましょう。

@) 展開図で下絵を描く

 ここに展開図があります。(右の絵のない展開図を印刷して配ります。A4の大きさ。)この見本のように展開図に顔を描きます。
 まず、上か下の展開図を選びます。次に描きたいモノをイメージします。はみ出しても気にせずに、2面に顔を描きます。@からCまでの頂点を通るように描けば、半分完成です。できるだけシンプルの方が良いです。この下絵は持っていてください。次は後の半分がどうなっているのかです。それは正四面体にするとわかります。

A) 正四面体を作って番号をふる

 正四面体から実際にしきつめ図形を造ってみます。正四面体を造ってください。少し大きめの方(三角形の一辺10〜12cm)が描きやすいと思います。ケント紙で造ると描きやすいでしょう。2・3個作っておくと良いです。
 正四面体ができたら頂点に番号を鉛筆で書きます。番号のつけ方は二種類あります。右回りに@ABとふるのと、左回りにふるのです。上の展開図を選んだ人は右回りに、下の展開図を選んだ人は左回りに番号をふって下さい。(さっきの正四面体の切り方は下側の展開図のものです。)

B)正四面体に絵を描く

 下絵展開図を見ながら、番号どおりに@からCへと順番に輪郭線を描いていきます。頂点を必ず通ってください。隣の面にはみ出してもかまいません。でも、Cでストップしてください。

C)展開する

 カッターとはさみを用意します。最初にカッターで切り込みを入れてから、はさみで切るとやりやすいでしょう。のり付けのところが切りにくいので注意しましょう。また、のりが取れたらすぐに貼り付けます。

D)顔以外の所を想像して何かに当てはめ、全体の絵を描く

 頂点は必ず通るので、平面になることが分かります。展開図を広げてよく見てみましょう。上の2面は一応形が整っているのですが、下の2面は何が何か分からない形をしています。
 ここは想像力をたくましくして描きます。どんな発想ができるのかが楽しいところなのです。私はとがっている所をマントにしてスーパーマンに、コアラは止まり木にしました。K君はキツネの足と尻尾にしていました。

E)コピーして切り取って並べる

 次は、画用紙にこの原版を写して切り取ります。6枚ぐらいでOKです。そして、それを並べます。
 この並べるときが一番楽しい。絵と地の色合いとか形の意外な組み合わせとか、一枚の絵だけでなく平面に並んだときの面白さが発見できます。
 さらに、これをみんなで見せ合うのが楽しみです。並べたら、裏をテープでくっつけて展示します。出来上がった作品は廊下に展示します。作品になって展示できるものは心に残ります。

3,しきつめ図形になる理由

 最後に、なぜ、四面体からしきつめ図形ができるのでしょうか。
そして、これは四面体だけなのでしょうか。六面体では駄目なのでしょうか。
考えてみましょう。
 展開図を作ってみると理解しやすいと思います。 四面体の展開図は2通りしかありません。これは、三角形と四角形です。どちらも平面をしきつめる事ができます。
 そして、四面体の平行四辺形の展開図は(1)(2)と(2)(1)、(2)(3)と(3)(2)、(4)(3)と(3)(4)が対応していて図と地になっていることが分かります。六面体だとこのようになりません。ただ、六面体の展開図がしきつめ図形であるかどうかは面白そうな問題です。→【エッシャーのように そのX】
 このように調べていくと、平行移動でしきつめられる場合と回転移動でしきつめられる場合があることが分かります。図形の色々な要素が総合されているのです。
 さらに、エッシャーは三角や四角だけでなく六角形でもしきつめています。六角形はどのようにして作ったのでしょうか。→【エッシャーのように そのV】
 四角形だと、このように簡単にエッシャー図形を作ることができます。お試しください。



























 エッシャー図形の魅力は、一部を変えると他の所が変わったり、図が地になったり地が図になったりと交互に入れ代わり、絵がお互いに関係し合っている(相互依存性)所にあります。


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