寒念仏和讃

今様の歌い方を復元する

親父が集めた歌の中に、寒念仏和讃というのがあった。
鷲見の人から聞いて記録したらしい。



「どう歌っていたんや?」「わからん」という。
和讃は、元来今様で歌っていた。
だから私は三帖和讃を「北の宿から」のメロディで歌っている。
何度も歌っているうちに覚えてくる。
サビの部分は後半の部分を繰り返す。
こうすると、身と心にしみる。
最初このメロディでやろうかと思ったけどイメージが違う。

いろいろ悩んで復元することにしたメロディは地蔵和讃の古いレコードから。 これはなかなかあっている。
[その音声と和讃の画像](ユーチューブ)

さて、寒念仏和讃の内容。
誰が作ったのかもわからないが、ちゃんと本質をついている。

親父の原文



 先づ 巻頭に挙げねばならないのが、この寒念仏和讃である。  辞典によると『和讃というのは、 仏徳を讃美した日本語による文章で七五調四句で一段を成し数段から 数十段の長きにも及ぶ歌謡調の形になっている。 そして、今様の歌の起源といわれている。』と。
和讃はこの外にも、私達浄土真宗門徒が日常口ずさんでいる、 『弥陀成仏のこのかたは、……』に代表される親鸞聖人ご製作の浄土、高僧、正像末、現世利益和讃も、本村が浄土真宗 一色に塗りつぶされていた昭和初期頃までは、大いに唱 和されていたし、現今でも、真宗の宗教行事の折にも、 東西夫々の宗派の調声で唱和されている。
 そこでこの寒念仏和讃であるが、現在は全く余韻を聞 くことができないが、何時頃まで唱和されていたであろ うか。最初に発見された原本の書写記述日が明治二十七 年とあり、明治中期まで確実に歌われていた節が伺い知 れるし、更に後に発見されたものゝ中には文化五年の書 写記述のものもあり、約百数十年前江戸時代に既に歌わ れていたことを伺い知ることができる。節であるが、現 存するご詠歌調の節でうたわれていたものらしく、和讃 の文句と哀調あるメロディが、仏徳讃美の歌として、ま た、己が自々の心の安らぎを求める糧として、集会の場 で唱和されたり、また独り居の仏間で歌われた模様であ る。
※親鸞聖人ご製作の和讃については、各戸にある声明本を参照されたい。

寒念仏和讃

帰命頂礼阿弥陀尊
謂を悉しくたずぬれば
南無阿弥陀仏の名号は
たった六字のみ名れど
名躰不二の御尊躰
名なり躰なり如来なり
姿は六十万億の
那由陀恒河沙由旬にて
金剛不易の御尊躰
我等が為に発されし
誓願不思議のみ名ゆえに
謂を聞きて頼むなり
機法一体能所不二
疑いなければ信(まこと)なり
称ふる声は行となり
摂取の利益あるゆえに
不捨の誓約籠てあり
往相廻向有るゆえに
還相廻向の利益あり
定聚の位有るゆえに
必ず滅度の利益あり
等正覚の有るゆえに
大般涅槃の悟有り
善有り徳有り利益あり
願有り行有り修行あり
慈悲あり知恵あり真(まこと)あり
方便有りて不思議あり
十信・十行・十廻向
観念・観察・戒行も
六波羅蜜に至る迄
皆悉く備わりて
八万四千の法門も
七千余巻の経文も
三朝高祖の論釈も
皆認(したた)めて中にあり
十方如来もおわします
三世諸仏もおわします
代々の知識もおわします
八百万の諸菩薩も
八百万の神々も
山峰々の権現も
村宮々の神明も
皆悉くおわします
一念信ずる立ち所
無辺の聖徳識身(心)に
攬入するとあるからは ・・・※
極楽参りの道具立て
万善万行諸波羅蜜
無量の功徳を調えて
掛け目不足のなきように
六字のみ名のその中に
成就なされて下被(くだされ)た
閻浮壇金(えんぶだんこん)金(こがね)にて
御長(おんたけ)十丈おわします
紫磨金色の御仏を
一万三千造ること
十度の供養をするよりも
一遍称ふる念仏の
功徳は遥かに勝るぞと
弘法大師も褒め給ふ
□じゃ声じゃと思えども
唯一声の念仏も
阿弥陀仏にておわします
かく聞きぬれば有難き
弥陀を離れた我もなく
我を離れた弥陀もなし
南無阿弥陀佛を称れば
天神地祇も敬伏し
魔界外道も障碍せず
称ふる作法を尋ぬれば
男女老少夫々の
己れ己れの所作ながら
行住座臥の撰びなく
時所も所縁も障りなし
御慈悲の上の御慈悲にて
造悪不善の此奴を
功徳の主に転じかえ
極楽参りは仏の所作
しずが小手巻繰返し
称ふるばかりが我が所作じゃ
南無阿弥陀仏 ありがたや
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
生まれ変わった寒念仏(歓喜念仏)和讃
江州音頭と播州音頭で

げんげんばらばらで寒念仏和讃

※教行信証 行巻 P--180【51】
またいはく(同)、「いはんやわが弥陀は名をもつて物を接したまふ。こ こをもつて、耳に聞き口に誦するに、無辺の聖徳、識心に攬入す。永く仏種と なりて頓に億劫の重罪を除き、無上菩提を獲証す。まことに知んぬ、少善根 にあらず、これ多功徳なり」と。

    仏暦二五六二年(西暦二〇一九年)十月

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