比例の表から対数目盛りの表へ

ここでは、計算尺の原理を「比例の拡張」という視点から再構成してみます。

表アイテム】でやったように、「表」を使うと、比例(かけ算)が目に見えるように表わされます。
例えば、×2は次の表で表わされます。

 0   1   2   3   4  ・・・  9  ・・・   100・・・
 0 1 2 3 4 5 6 7 8  ・・・ 18  ・・・   200・・・

でも、これだと3倍、4倍の表を作るには、3の段の目盛り、4の段の目盛りを作らなければなりません。
だから、一つの目盛りで全てのかけ算ができればとても便利です。
でも、そんなことができるのでしょうか。

実はできるのです。そして、そのためのポイントはただ一つ。「ずらす」ことができるということです。
ところが、比例の表は、「ずらす」と一次関数になってしまいます。
この問題点を克服するにはどうしたらいいのでしょう。


(1)まず、「比例の表をずらすと比例でなくなるのは、なぜか」を考えてみましょう。

     ┌ ×2┐               ┌ ×2┐
  0   1   2   3          0   1   2   3
  0 1 2 3 4 5 6 7     0 1 2 3 4 5 6 7 8
     └ ×2┘               └×1.5┘

        ×2   ×1.5  ×1.33 …
       1    2    3    4

このように比例の表は隣の数との比が一定ではないので、ずれると比例ではなくなるのです。
つまり、表が等差数列になっていて、等比ではないことが原因なのです。
とすると、同じ倍率を同じ長さ(等比数列)にすれば、ずらしても比例になるのではないかと予想できます。
前の数の2倍なら次の数も2倍にするのです。

 1 →×2→  2 →×2→  22 →×2→  23

 1   →×3→   3    →×3→   32    →×3→   33


このように、2倍の数の間隔が常に一定になっていたら、ずらしても比例になっているはずです。
これは、等比数列(指数)の表を使うということです。


(2)では、等比数列(指数)で表を作ってみましょう。

 20  21  22  23  24  25  26
 20  21  22  23  24  25  26

この表は、もちろん比例しています。指数も比例していますね。
では、この表を「ずらして」みます。

         20  21  22  23  24  25  26
 20  21  22  23  24  25  26

指数を見ると一次関数ですが、値は確かに比例しています。
なんと「ずらして」も比例関係が保たれているのです!
ですから、この表を使うと、【表アイテム】と同じ様に計算(かけ算)ができることになります。 (ex. 22×23=22+3=25
さらに、20=30=40=1ですから 30 31 32 34 35・・・も同じ数直線上にのせることができます。
こうやって作った数直線が対数目盛なのです。

0         21   21.58  22 22.32    23
 0         1    1.58   2  2.32     3   (目盛の長さ)

この目盛は、長さを指数で決めます。
例えば、3=2xとしてxを求めると、それが2を1とした時の3の長さということになります。
このxを求めると、1.584962501…となります。
指数で表すときは、何を基数(底)とするのかが問題となります。この場合、基数2が単位みたいなものです。


(3)2つの対数目盛を「ずらして」みましょう。


見事に比例関係が保たれていますね。しかも、下の表は上の表の2倍になっています。
もっと「ずらして」みましょう。


上が2倍になれば、下も2倍。3倍になれば3倍です。そして、上の表の3倍が下の表の値になっています。
これを利用すると、かけ算が簡単にできることに気がつきます。
そして、もっと細かい目盛りを使えば、1.5×3.6も簡単に計算できます。
ずらすことは加法減法です。ずらしても比例になるということは、乗法除法ができるということです。
乗法が加法に変わります。これが計算尺の原理です。

なぜ比例するのかは、【64、対数グラフ と 指数法則】のページへ
等比数列と等差数列の違いについては、【67、私たちは、お金を対数目盛で考えている!?】のページへ
 
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