卒業式と方程式

式とは何か?

T:卒業式と方程式はどちらも式ですね。では、どこが同じですか。

S:卒業式と方程式は違うものだよ。同じところなんかないよ。
T:でも、同じ「式」だろ。同じところがあるはずだよ。探してみてよ。
S:「式」を辞書を引くと・・・、(1)一定の体裁または形状、きまったやり方、作法、方式。(2)儀式。(3)一定の標準、規定、規則。(4)数学などで関係を表すもの。・・・(10)式神(精霊)の略。
S:わかった。決まったやり方なんだ。卒業式は、やり方や式の順番が決まっている。方程式も、やり方や計算の順番が決まっている。
T:そうだね。やり方というと、アナログ式とかデジタル方式という使い方があるもんね。卒業式は儀式だけれど、卒業のやり方と言ってもいいし、方程式は数量の関係を表すものだけど、未知数を求めるやり方と考えれば、どちらも同じ式なんだね。
S:「式神」とあるけど、陰陽師(おんみょうじ)と
関係があるの。5gyouon.gif (25810 バイト)
T:いいところに気がついたね。安部晴明(あべのせいめい)って知っている。
S:陰陽師は映画で見たよ。晴明はテレビでもやっていた。その晴明と方程式や卒業式は何か関係があるの。
T:これが大ありなんだな。陰陽道とは陰陽五行説に基づいて、天文、暦、占いなどをあつかう術で、中国から暦が伝わってきたときに、朝廷に陰陽寮ができた。そして、暦博士、天文博士、などを置いた。安部清明はその陰陽寮の博士の一員さ。
S:安部晴明って、博士だったの。陰陽師ではなかったの。
T:当時は博士=陰陽師ですよ。
S:暦ってカレンダーでしょ。陰陽師がカレンダーを作っていたんですか。
T:そうです。東洋のカレンダーは、太陰(月)と太陽の動きを合体させて作ったものだから、まさに陰陽道の考えそのものだったのですよ。
S:それで、陰陽師と方程式はどう関係があるの。
T:ここまでくればわかるだろ。陰陽寮の人たちは、方程式を使って暦や天文、時刻のことを調べたんだな。そして、末来のことを予言したんだ。
S:まわりの人は、計算すれば予言できるということを知らないから、びっくりしたんだね。
T:そして、そういった予言=占いで様々な行事(まつりごと)を執り行っていた。それが卒業式のような儀式なんだな。
S:平安時代って、占いで政治を行っていたのか。

式を立てる

T:ところで、式を作ることを「式を作る」といわないで、「式を立てる」というけど、どうしてだかわかるかい。
S:立てるというのは、「まっすぐにすること」を言うと辞書に書いていあるよ。
S:「柱を立てる」と言うね。
T:とても核心を突いているね。だから、柱を立てて、建物を建てるとなる。
S:つまり、方程式を立てることで問題が解決する。
T:式さえ立てれば、後は計算すれば自動的に答えが出てくるからね。
S:「波を立てる、噂を立てる、風呂を立てる、声を立てる、義理を立てる、役に立てる、腹を立てる、誓いを立てる、使いを立てる・・・」辞書で調べると、「立てる」っていろいろな使い方があるんだな。
T:「式を立てる」というのは、「義理を立てる」に一番近いかな。
S:どうしてですか。
T:義や理は正義とか道理ですから、正義を立てるや道理を立てるは、正しい関係を式にして立ち上げると似ているでしょう。
S:ところで、「式を立てる」簡単な方法ってあるの。
T:あるよ。数学は簡単な方法を探す学問だからね。でもまず問題がなければ、式にする必要がない。
S:ぼくなんか、もともと式にする必要なんか感じてないね。
T:必要があるときというのは、暦とか時間とか天文とか時間や量を調べたり測ったりするときですね。
S:テスト問題で文章題が出た時には、式を立てる必要があるよ。
T:切実な問題ですね。でも、それなら簡単だ。テストの文章題そのものがヒントですよ。
S:まず、わからない数量を文字にして、それから等式関係を見つけるんでしょう。
T:そうです。大切なことは関係を見つけることです。テストの問題は、必ず式が立てられるようにできている特別な問題ですからね。

式を操る

T:式を自由自在に操ることができなければ、安部晴明のような陰陽師にはなれない。
S:どうしたら式を操れるの。
T:数や文字を操って自動的に答えを見つけ出すようにすればいいんだ。
S:口で言うのは簡単だけど、実際はそんなに簡単じゃないよ。
T:方程式というのはいわば天びんみたいなもんだ。だから、天びんが釣り合うように式を変形してやればいいのさ。
S:ところで、「方程」ってどういう意味ですか。
S:辞書にはこう書いてあるよ。「方程」は、中国漢代の数学書『九章算術』で連立一次方程式を指した。原義は「数量を並べて比べる」の意という。
T:数量を並べて比べることをいうのか。なるほど。やっぱり天びんだ。
S:塾で移項というのを習ったよ。
T:移項の意味を考えてみよう。方程式は天びんだから、いつも右と左がつりあっているかどうかが大切だ。それで、この=を下にそろえて書く。

センターラインの話

T:これが道路で言うとちょうどセンターラインのようなもんだね。
S:そうか、センターラインを越えると、進む向きが逆になるから、+−が変わるんだ。
S:なるほど。でも、割る時やかける時は変わらないよ。
T:そうだね。でも、×が÷になり、÷が×になるよ。
S:それなら、符号が変わるというよりも、「足す」が「引く」に変わり、「引く」が「足す」に変わると言った方がいいね。
T:とにかく方程式は、式さえ立ててしまえば、後は形式どおりにやると必ず解ける。
S:形式だから式というのか。
T:ところで、平安時代には占いで行動していたといったけど、現代はどうかな。
S:私、毎朝運勢を見てくるよ。
S:お父さんが今日は仏滅だからだめだといっていたよ。(何がだめなんだろうかね。)
S:友引だから葬式はやらないとか、大安だから結婚式をやるといっていたな。
T:実はね、もともと昔の暦には六曜(先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口)はのせてなかった。これがのるようになったのは、江戸の中期から。しかし、現在最も広く行われている。
S:現代が一番迷信深いということか。
S:六曜って、月火水目金土日のことじゃないの。
S:それは七曜だろ。

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