歌を読む

 「読み」と、「コミュニケーション」。それは「現実を読むちから」と「愛を語れるちから」。例えば、好きな人の表情を読む。風を読む。こよみ。周りの雰囲気を読む・・・そして、愛を語る。告白する。ラブレターを書く。・・・
 君たちは、好きな人の前で愛を語れますか。相手に自分のことをわかってもらえるようなラブレターを書くことができますか。では、そのちからをつけるために、まず「歌」を読むちからをつけてみましょう。

 「春よこい」・・・歌詞の意味を読む。「なつかしき君」とは誰かと問うと、母という意見と恋人という意見が出て、論争となった。最初の論争だったが、こちらから意見を押し付けることはしなかった。なつかしいというと母親のイメージがするという意見も大きく評価した。
歌詞を読んだ後、ユーミンのCDをかけ、歌詞とメロディーから受けるイメージを話あった。ここで、「もしもし亀よ」の歌詞とメロディーの食い違いを例としてあげた。「ウサギと亀」の歌詞「もしもしかめよ」をどう歌うのかというところからはじめた。これは竹内敏晴さんの本で読んだのだが、最初に「もしもし亀よ・・・」を歌ってもらう。次に歌詞の意味を読み、この歌詞は亀を馬鹿にしているということがわかり、メロディーと歌詞が全く違うということに気がつく。そこで、そういう意味を込めて歌ってみようというと、ほとんどの生徒が歌えない。皆さんは曲を聴いているけど、その時歌詞を意識していますかと聞くと、ほとんどの生徒は意識していないという。
 次に、アユの「a song for XX」の歌詞を印刷して配り、CDをかけた。さらに歌詞をみんなで読みながら共感できるか意見を聞いていった。

    A Song for XX              浜崎あゆみ
  どうして泣いているの  どうして迷っているの
  どうして立ち止まるの  ねぇ教えて
  いつから大人になる   いつまで子供でいいの
  どこから走ってきて   ねぇどこまで走るの
  居場所がなかった 見つからなかった 末来には期待出来るのか分からずに

  いつも強い子だねって言われ続けてた 泣かないで偉いねって褒められたりしていたよ
  そんな言葉ひとつも望んでなかった  だから解からないフリをしていた
  どうして笑っているの  どうしてそばにいるの
  どうして離れてくの  ねぇ教えて
  いつから強くなった   いつから弱さ感じた
  いつまで待っていれば 解り合える日が来る
  もう陽が昇るね、そろそろ行かなきゃ  いつまでも同じ所にはいられない

  人を信じる事っていつか裏切られ  はねつけられる事と同じと思っていたよ
  あの頃そんな力どこにもなかった  きっと色んなこと知り過ぎてた
  いつも強い子だねって言われ続けてた 泣かないで偉いねって褒められたりしていたよ   そんな風に周りが言えば言う程に
  笑うことさえ苦痛になってた 一人きりで生まれて
  一人きりで生きて行く きっとそんな毎日が
  当たり前と思ってた

(解からない、分からない、判らない)「わからない」という言葉には上の3つの漢字があるけど、ここではどうして解らないという字を使ったんだろうか?いつも良い子だねって言われた経験はない?こんな問いかけをしながら歌詞を読みとっていった。それまでメロディーだけで感じていた子たちが、歌詞にも注目するようになったと感想を述べていた。
 そこで、自分たちの好きなCDを持ってきて、歌詞を紹介しあおうと提案した。生徒たちは、お互いにCDを持ってきて、聞き合いそれをクラスに紹介した。生徒たちの選んだのは意外とおとなしい曲だった。歌詞は癒し系が多かった。国語の時間に音楽を聴きながら、歌詞の意味の読み取り、しっとりと感想を語り合うのは楽しかった。
 言葉とメロディーについては、心と体が対比できるのではと感じる。メロディーは身体に働きかけ、言葉は心に働きかける。