円の不思議を探る

ミケルの六円定理と二つの円をつなぐ楕円

1、初めに・・・高田の定理とミケルの定理

高田英行さんという方が1989年15才の時に発見した定理がある。
それがこれ。「CDEFGが同一円周上にあれば、5点VNTRPは同一円周上にある」



不思議で面白そうなのでさらに調べると、それとよく似た定理にミケルの定理というのがあった。

何か関連がありそうと思って、【ジオオジェブラブック(円の不思議)】 に入れておいた。
そして、関連しているものがあったら加えていった。
一年ぐらいたって、これらの間には何か法則があるのではないかと感じるようになってきた。

ある時、ミケルを調べていたら、ミケルの定理には4つあることがわかった。
(1)三角形のミケルの定理  (2)ミケル・スタイナーの完全四辺形の定理  (3)ミケルの五角形定理  (4)ミケルの6円定理

いずれも高田の定理と関連がありそうだったが、その中で注目したのが最後のミケルの6円定理。
この定理は、内接四角形の定理を使えば中学生でも理解できるので、これを中心に考えることにした。

2、内接四角形の定理からミケルの定理(六円定理)へ

まず二つの直線に交わる円を作ってみよう。



黒の三円を作るとAIBDは同一円周上(赤円)にある。証明は簡単。
この場合、2円ではだめで、3円目の円の交点が最初の2点と同一円周上(点線の赤円)にあるので、円の個数が奇数(最後の円も入れると偶数個)でないとダメなことがわかる。
さらに、直線が円になっても同じ(直線は半径無限大の円だから)。

しかもこの定理の円をどんどん増やすことができる(8円の場合)。
そこで、初めに2円を作図してから交差する円が六個の場合を考えてみた。



ここには元となる2円(赤と黒の円)と、それをつなぐ6個の小円が作る世界が現れる。
最初、これと高田の定理との関連を考えようとした。例えば二点とばしの六角形で星型五角形と同じことが言えないかなど・・・。
でも、同じようなことは見つからなかった。
そこで小円の中心を見つけ、その6個の中心で六角形を作ってみた。

そこでわかったことは、対応する中心と結んでみると3線が一点で交わること。
それがなぜなのかはわからないが、いろいろ動かしてみても間違いない。
この性質を使えば、基礎となる1円と6個の小円からもう一つの円を求めることができるのではないかと考えた。
だって、最後の4点が同一円周上にあることよりも、6点が同一円周(赤円)になることの方がかっこいいからだ。

一点で交わるのは円の外接六角形の性質だからと思って、外接六角形を作ってから一つの円と小円を作ってみた
すると、ぴったり一致して、もう一つの円もできる。
しかし、これは同心円でどうも面白くない。
待てよ、対角線が一点で交わるのは楕円の外接六角形でも言えたはず【ブリアンションの定理
と考え、今度は楕円で作成してみた。ちなみにブリアンションの定理は双曲線でも成立する。

3、ついに見つけた六角形

この六角形は楕円ABの外接六角形。最初にこの六角形を作図する。
もう一つの円の中心をどこにしようか悩んだが、楕円の焦点があるので一つの焦点を中心にしてみた。(青の円の中心は楕円の焦点A)
これで6つの円を作るとぴったり一致し、小円のもう一つの6個の交点は見事同一円周上にある。
しかも、その円の中心は楕円のもう一つの焦点になっているではないか。
点Zを(直線AHに沿って)動かすと、青がAに、ピンクがBに収束する位置があることがわかる。
(この位置については、ミケルの四角形定理と関連があると思われる。)



これで6円の場合のミケルの定理の同値条件がわかったことになる。
この絵は前の絵と同じように見えるが、作り方が全く逆になっている。
ここで難しかったのは、基本の2円と六角形との間の関係。

 【作り方のまとめ】
 (1) 二つの円の中心が楕円の焦点。
 (2) その楕円の作る外接六角形の頂点を求める。
 (3) 焦点の一つを中心にして適当な大きさの円(A円)を作成して、その円周上に一点を作る。
 (4) 6頂点を中心にして、A円の一点と結び、隣の頂点を中心にしてA円とのもう一つの交点で円を描く。
 (5) そうやって次々と作図していくと、最後の円はぴったり一致する。
 (6) 6円の隣同士の円のもう一つの6個の交点は同一円周上にあり、その円の中心はもう一つの焦点となる。

さて6角形で成り立つのだから、4角形でも成り立つはずと確かめてみる。
楕円から四角形を作成する
(逆に四角形から内接楕円を求める方法

しかし、これでは偶数個の場合はOKだが、五角形や奇数角形の場合は成り立たない。
そこで、どうしたら成り立つのか考えてみる。
いろいろと試行錯誤してわかったことは、焦点と接点を結んだ線と円との交点に円を作図すれば、最後の円もぴったりと一致する。

五角形の場合

高田の定理との関連

七角形の場合

4、2円と多角形の間の関係を見つける

よく見つけられたものだと思う。
取り組んでいて、先が見えないときは苦しかった。
でも、分かったことを地図に描き、「もしかしたらこうなるのでは」と予想を立てて確かめることは楽しかった。

ここまででわかったことを定理の形で定式化してみよう。
「ミケルの6円定理」は偶数角形しかできないが、その逆を考えると奇数角形の場合も作図可能。
もちろん偶数の場合もOK。
作図できるのは、焦点Aと接点を結んだ線(点線)と赤の円の交点が各頂点から同じ距離にあるから。
ちなみに点Mを動かしてみよう。



これらの定理は、まだ証明していないが、ジオオジェブラで見る限り正しいと思う。
どなたか証明に挑戦していただけないだろうか。

円の不思議さはまだまだ隠されていると思う。
そして、この試みはジオジェブラの使い方の一つの例になるのではないかと思っている。

231、≪ジオジェブラ・ブック≫【 円の不思議 (円についてのいろいろな定理)
・・・多角形と円の関係・ミケルの定理・スタイナー点・高田の定理 (2016.6〜2017.7)


     目次へもどる