数学マジック

1、隠した数字を当てる!

T:これから数学を使ったマジックをします。皆さんが隠した数字を、全て当てます。
  まず準備をするよ。簡単な計算だから協力してね。マジックには必ずタネが必要なんだ。
  では、最初に3以上の好きな整数を思い浮かべてください。
  その数字の右に0をつけてください。
  そして、その数からさっきの数を引いてください。

  準備はこれだけです。
  さて、この数字であなたの隠した数を当ててみましょう。
  どの数を隠してもいいですよ。さて、K君。君は何桁?
S:3桁です。
T:ではどれか1つだけ数字を隠して、後の2数を教えてください。
S:2と6です。
T:あなたの選んだ数は1ですね。
S:当たった。どうして?
T:次はHさん。
S:1と4です。
T:あなたが隠した数は、4です。
S:エ〜!どうしてわかったの。
T:次はPさん。
S:0と2と7です。
T:4桁ですね。0ですか。
S:違います。
T:あっ、ごめん0の下に線があった。9だ。
 (以下、次から次へと当てていく。)
S:2と4です。
T:えーっと、隠した数は、ずばり3でしょう。

ジオジェブラのシュミレーションで確めてみよう

T:さて、少しヒントをあげよう。
 今度は、数を黒板に書いていくよ。
 1と4→4   2と4→3   0と2と7→9   ・・・ 

S:わかった。合計が9になるんだ。
S:でも合計が18の時もあるよ。
S:18は9の2倍だよ。
T:まとめると、数字を合計すると9か18になっている。
 ところで、最初の数は自分で選んだでしょ。その数をAとするよ。
 そのAの右に0をつけるということは・・・
S:わかった。10倍するということだ。だから10A。そこからAを引くんだから、10A−A=9Aだ。
S:つまり、9の倍数だ。だから、9の倍数になっているのか。
T:いや、違うんだな。9の倍数になることはわかったけど、そこからどうして隠した数字がわかるの? 例えば、2と4から3を予想したよ。でも数字は243かもしれないし、423かもしれないし、234かもしれないし、324かもしれない。
S:もしかしたら、これらの数は全部9の倍数でしょ。
T:おっ、すごい予想だ。実際に試してみよう。(電卓で9で割る)みんな9の倍数だ。
S:もしかしたら、それぞれの数字を合計すると9か18になる数は9の倍数になるんじゃない?
T:それを証明してみようか。234=200+30+4=2×100+3×10+4=2(99+1)+3(9+1)+4=2×99+2+3×9+3+4=(2×99+3×9)+(2+3+4)
この前の( )は必ず9の倍数になるよね。ということは2+3+4が9の倍数なら234は9の倍数ということだよね。
S:各位の数を足して9の倍数になれば、その数は9の倍数ということだね。だから、隠した数字も予想できるんだ。わかった。よーし、みんなにやって驚かしてやろう。

参考文献 「知って得する生活数学」ブルーバックス・関根鴻著

T:この前このマジックをしたら、それを見ていた女性から面白いことを教えてもらった。
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若いころ、銀行に勤めていて、その日の決算を確かめるとき、
伝票の合計と現金の合計が合わないときがある。

その時、(伝票の合計−現金の合計)÷9と計算すると
間違った所がわかるというのだ。

その時は、なぜわかるのかわからなかったけど、
9で割ったことを思い出したので、何か関係があるのではないか
と言う。
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それを聞いて嬉しくなってしまった。

銀行で伝票の合計と現金の合計が合わないのは、たいてい桁数の間違いが多い。
0の数を間違って入力するのだ。
 例えば、320000円を32000円と入力してしまったとする。
 現金の合計−伝票の合計=320000−32000(この数はわからない)=288000
 これを9で割ると、32000と出て、間違って入力した数を教えてくれる。

他の数はあっているので、
見事に間違って入力した数だけがあぶりだされるのだ。

マジックで0をつけるというのは、桁数を間違えたことと同じ。
10aーa=9aだから出てきた数を9で割ると、aがわかるという仕組みだ。

今日の一番の成果だった。


2、伊東家の食卓 「おみくじが必ず大吉になるうらわざ」

T:3日前に「伊東家の食卓」でやっていたんだけど。全て大安になるという「うらわざ」見た?(6/25)
S:見てない。
S:見た見た。
T:このウラ技を使うと、みんなを思うままに動かすことができるんだ。これから図を描くよ。この図omikuzi.GIF (1895 バイト)は5つに仕切られていて、おみくじになっている。このおみくじの上を自分で自由に動いても、最後に必ず大吉になるというマジックなんだ。最初は中吉からスタートするよ。(床に実際に描いて生徒を動かすか、ノートや黒板に描いて消しゴムなどで動かしてみる。)

T:動く方向は、右へ動こうが左へ動こうが君の自由。ただし、端へ来たらまた戻ること。
  1、最初に4つ動いてください。
  2、好きなだけ動いてください。ただし、どれだけ動いたかは覚えておいてね。
  3、1回動いてください。
  4、さっき動いた回数だけ動いてください。
  5、最後に右へ2回動いてください。

S:ぼくは大吉や。あれ、全員大吉や。
T:おめでとう。きっと好い事があるよ。
S:もう一回やってみて。

S:やっぱり大吉になる。
S:自由に動いたはずなのに、どうして同じになるの?
T:不思議だね。では、そのわけを考えてみよう。omikuzi2.GIF (1924 バイト)

T:最初に4つ動くよね。その時どこへ行くの。
S:大凶と中吉と小吉。
T:凶や大吉には行かないよね。では、凶や大吉に行くときはどういう時?
S:わかった。奇数のときに凶と大吉だ。
S:そうすると偶数のときは、必ず左の図の色のついたところへ行く。
S:つまり、偶数か奇数で行くところが決まっているんだ。
S:でも、2回目に好きなだけ動いてがあったよ。奇数を選んだ人もいるよ。
S:それを2回繰り返したでしょ。だから必ず偶数になるよ。
S:そして、3回目に1動くから必ず「凶」か「大吉」になる。
S:最後に右へ2回動けば、凶は大吉に、大吉は小吉で突き当たって大吉に戻る。そして、全員大吉になる。
S:なーんだ。そういうことか。

T:ところで、こういうように自分が自由に選んでいると思っているのに、知らぬ間に思うがままに動かされているということはない?自分の自由意思だと思っていたのに、実はそうではなかったということはけっこう多いのですよ。
S:物を買わされるときなんかそんな気がする。
S:もっと、大事なことでそういうことってない。


3、面積消滅マジック  面積は変わらないはずなのに!

T:さて次は、この長方形の面積が変わるというマジック。タネも仕掛けもない。
(そう言いながら、黒板に大きな直角三角形を張る。)

mennseki2.jpg (3997 バイト)この直角三角形がベース。ここにやはり直角三角形AとBを二つ付け加える。そして、この足りないところは長方形で埋める。そうすると一つの長方形になる。ちなみに面積は?
S:横が13で、縦が5だから、13×5で65。

T:さて、ここからがマジック! この小さい直角三角形AとBを入れ替える。
(入れ替えてから、長方形をおもむろに入れる。)
すると!さて不思議!こんなところにすき間ができる。
S:えーっ!mennseki3.jpg (3589 バイト)

T:ここにすき間1ができるだろ。さっきは65だったから、1を足して66になった。
S:ということは、面積が大きくなったんだ。
S:どうして?
S:最初の長方形の面積は65。下のも、縦横は変わらないから、やっぱり13×5=65だよ。面積は変わっていないはずだよ。
S:もう一回やってみて。
  (もう一度やる。)
S:確かにすきまができている。
T:最初の長方形の面積は、65で、後の方も同じはずなのに、どうしてすきまができるの?
S:不思議やなぁ。
・・・・
S:わかった!

S:どうして?
S:傾きが違うんだ!大きな直角三角形の傾きは5/13,Aは3/8=,Bは2/5だからみんな傾きが違うよ。

T:よくわかったね。これを少数にすると,5/13=0.3846。 3/8=0.375。 2/5=0.4となり,ほんの少しだけど違うんだ。だから,大きな三角形の斜辺とAの斜辺とBの斜辺の間に少し隙間ができるんだ。
S:つまり,この3つの斜辺が作る三角形の面積がこの隙間の分というわけですね。


4、フィボナッチ数列がこんな所にある!

T:ところで,さっきの傾きの数を見て何か気がつきませんか?
S:あっ!これフィボナッチ数だ!
T:そうです。このマジックはフィボナッチ数列の性質を利用してあるんです。
フィボナッチ数列の隣り合う項の比は、1.618…の黄金分割にどんどん近づいていきます。
この黄金分割をφとすると,
1  1 2 3 5 8  13 21 34
―,―,―,,,, ,,―・・・=0.381…=1−1/φ となります。
2  3 5 8 13 21 34 55 89
証明       (Fn)=(Fn-1)+(Fn-2)  両辺を(Fn)でわります。
   1−(Fn-1)/(Fn)=(Fn-2)/(Fn)   一方(Fn-1)/(Fn)の極限は1/φ
       1−1/φ=(Fn-2)/(Fn)

この0.381…が,さっきの傾きなんですよね。だから(Fn-2)/(Fn)は,よく似た数になるんです。

まずこの図を見てください。これは縦5,横13の長方形です。対角線を引くとよくわかると思います。
S:2/5の所でずれている。
S:しかも,この長方形は左が3×5=15,右が2×8=16で1個違いだ。だから,面積が減ったように見えたのか。
T:三角形の傾きが良く似ているから,つい相似だと勘違いしてしまうことと,この長方形が一つ違いだということを利用して作ったマジックなんですね。
S:そうすると,5と13をもっと大きくした8と21でも同じ様なことが言えるんじゃない。
T:なるほど。ではさっそくやってみようか。
S:今度も一つ違いの長方形になるよ。さっきのは左側が一つ足りなかったけど,今度は右側が一つ足りない。
S:ということは,フィボナッチ数列の隣り合う項の積とその外側の項の積の差は1であるということかな。
1×2=2   :1×3=3
2×3=6   :1×5=5
3×5=15  :2×8=16
5×8=40  :3×13=39
8×13=104:5×21=105
S:本当だ。
T:さっきのように,右の長方形を2つに分けて左の長方形にできないかな。
S:3つならできたけど。
T:とすると,面積が一つ違いの長方形を二つに分けてもう一方の長方形に変えることができる形というのも,もう一つのマジックですね。
S:これらは一つ置きのフィボナッチ数を使っているけど,隣同士のフィボナッチ数の長方形ではだめなの。
S:やってみよう。5と8で・・・やっぱり一つ違いの長方形になる。今度は一つは正方形になるけど一緒だ。
S:ということは,
1×2=2  :1×1=1
1×3=3  :2×2=4
2×5=10 :3×3=9
3×8=24 :5×5=25
5×13=65:8×8=64
ちゃんと一つ違いになっている。

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