円周角の定理の拡張の仕方

― 円周角の定理と中心角の定理の統合 ―


   弧に対する円周角の代わりに、
   弧に対する弧を考えて、
   その弧の長さを変えないように動かすと
   何が変わらないのだろうか?

円周角の定理(同じ円弧に対する円周角は等しい)は、中学校で習う美しい定理の一つである。

1、中心角と円周角の統一

中心角と円周角の関係は、同じ弧に対する「中心角=円周角の2倍」であるが、以前から気になっていることがあった。
中心角は円周角の2倍なのだが、中心角の対角を延長して対角線を描くと弧も二つある。つまり、弧も2倍になっているということだ。
したがって、中心角と円周角の関係に弧を媒介させ、中心角は対角線をはさんで弧が二つあると考えると、「円周角に対する弧」=「中心角に対する二つの弧」となり、弧に対しての角度は同じということなる。

弧に対しての円周角や中心角でなく、弧に対しての対頂角というこのアイディアは、一般化できるのだろうか。

対頂角の頂点(交点)を中心から平行移動でずらしてみよう。中心角ではなくなるが、弧の長さが変わらないことに気がつく。そして、頂点が円周上にきた時に円周角になる。

これは円周角の定理の拡張になっている。

2、弧の長さの和と対頂角…円周角の定理を拡張する

「頂点が円の内部にあるとき、対頂角の大きさが等しければ、切り取られる弧の長さの和は同じである。」

証明 「平行弦の定理」を使えば中心を通る対頂角と同じになる。平行弦の定理とは、二つの弦が平行ならばその間の弧の長さは等しいという定理である。

今度は、その逆はどうなるのだろうか。円周上にABCDの順に4点をとる。これらの点は一致しても良いが順番を変えてはいけない。

「弧AB+弧CDが一定ならば、直線ACとBDの作る対頂角は等しい。」

これは、証明しなければならない。もちろん円周角の定理を使えば簡単なのだが、使わずに証明しないと拡張する意味がなくなる。

そこで、二つの直線ACとBDに対して、弧の和が変わらないようにそれぞれ中心を通る直線にする。その時、弧の長さが等しい時の弦が平行になることを言えば、対角線が中心角と等しいことが言えるはず。

3、平行弦の定理の逆

平行弦の定理の逆を考えると、「弧の長さが等しければ、互いを結んだ弦は平行である。」

弧を重ね合わせるように円を折り曲げると、弦は中心線に直角になり、したがって平行である。これを証明してみよう。

「弧AB=弧CDならば弦AD//弦BC」

証明
図のように、弦が中心をはさむ場合とそうでない場合の二通りが考えられる。
(はさまない場合)
△OACは二等辺三角形なので、ACに対して中心Oから垂直二等分線を引くことができる。
ACの中点をFとし、OFとBDの交点をNとすると、
∠BON=∠AOB+∠AOF=∠DOC+∠COF=∠DONなので、
∠ONB=∠OND=直角

(はさむ場合)も同様に、
∠BON=180−(∠AOB+∠AOF)=180−(∠DOB+∠COF)=∠DONなので、∠ONA=∠OND=直角
よって、弦AD//弦BCである。

「弧AB+弧CDが一定ならば、直線ACとBDの作る対頂角は等しい。」

証明
弧AB+弧CD=弧A′B′+弧C′D′となるようにA′B′C′D′をとると、
弧AA′=弧CC′
弧BB′=弧DD′
ここで平行弦の定理の逆を使うと、
AC//A′C′,BD//B′D′
よって∠APB=∠A′OB′であり、対頂角は等しくなる。

4、拡張されていることの証明

円周角を対頂角にするだけで「円周角の定理」と「接弦定理」と「内接四角形の定理」を統合できる。
25、円の不思議】を参照。
そして、この定理で中心角も統合できた。

ここで、次のように考えると拡張されていることがはっきりする。

二つに分かれた弧の一方を固定して、他方の弧を動かしてみよう。
ジオジェブラでシュミレーションしてみよう!
平行弦の定理により、対頂角は一定であり、頂点は円を描く。

そして、弧CDの長さσを0にしてDを動かすと、円周角の定理と接弦定理と内接四角形の定理になり、
弧CD=弧ABのときに中心角の定理になる。

つまり、
  ある弧に対して、円周上に一定の長さの弧を取った時、
  二つの弧の両端の点を対角に結んだ時にできる角は一定で、
  中心角の合計の半分である。

この時、弧CDが0になった時が円周角の定理である。
また、∠Qは弧CDがマイナスになった場合の角度である。

5、応用

問題 2つの弧の合計が半周ならば、対頂角は180°×1/2=90°になることを示せ。

問題 正五角形の対角線の対頂角は180°×2/5=72°になることを示せ。

問題 対頂角の大きさが60度の直線がある。この頂点を中に含む円を描いた時、60度の対頂角が切り取る弧の長さは円周の1/3になることを示せ。


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