暉峻淑子氏講演会「真の豊かさを求めて」を聞いて

 今日、岐阜経済大学で暉峻さんの講演があったので、聞いてきました。その中で、心に残った話をひとつ。暉峻さんが西ドイツの大学で教えていた時、学生が次から次へと質問をするので困って、
「私の話しを最後まで聞いてから質問してもらえませんか。」
と言ったところ、学生たちは一斉に反論を始めたのです。
「私たちは先生の伝える知識を知りたいのではありません。知識は図書館へ行けばあります。私たちが知りたいのは、先生がどうやってこのような学説を持つに至ったのかという考え方です。だから質問をするのです。そして、授業は教授だけでつくるものではなく、学生と一緒になって作り上げるのもではありませんか。」
 日本の学生では考えられないようなことを言うのに感心した暉峻さんは、どうしてこの様な学生が育ったのだろうと、暇を見つけて中学校や小学校の見学を始めました。

『1と2はどちらが大きいかの話』

 西ドイツの小学校で1年生がいっぱい遊んだ後(数ヶ月後)、ようやく授業らしきものが始まったので、興味を持って聞いていました。

 先生が「今日は1について考えてみましょう。これが1です。では、みなさんの生活の中で1を出してみてください。」と問いかけると、子どもたちは口々に、「昨日、お母さんに一回叱られました。」「学校へ来るまで電車を一回乗り換えました。」「お兄さんと1回喧嘩した。」「僕の来た階段は、1が連なっているんだね。」

 こんな話しを毎日、子どもたちは一週間続けたんですよ。それから、先生は「次は2です。2匹の猫、2本の鉛筆、2枚の紙、二人…。では、このまえ学習した1と2はどちらが大きいですか?」と聞きました。あれだけ1について学習したから、2と答えるだろうと思っていると、「ぼくは1の方が大きいと思います。」という子がいるではありませんか。その時、先生は決して否定するような顔つきをせず、回りの子たちも冷やかしたりしませんでした。

 先生「あなたは、どうして1の方が大きいと考えたの?」その子は「この前、ぼくと兄さんは、お母さんから大きなクッキーを1個ずつもらったの。兄さんはすぐに食べてしまい、ぼくに半分こしようと言ったの。仕方なしに、ぼくはクッキーを半分にして兄さんに渡したの。2個になったクッキーは1個よりも小さかったから、1の方が大きいと思いました。」

 その説明を聞いた先生は、教室の後ろに置いてある地球儀を取り出して、「地球は大きいですね。そして地球は1つです。でも、この地球にはたくさんの国がありますね。髪の毛の色が違う多くの人達がいます。いろいろな言葉もありますね。神様に対するお祈りの方法も違い、たくさんあります。1つの地球だけれど、大きいねぇ。」

 先生はこれだけしか言いませんでした。

 教育の本当の目標(真の豊かさ)とは子どもが自分自身の価値に目覚めること。自分が自分の人生の主人公であることを体験的に知っている子は、大人になった時に自立します。

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